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[MOM1552]佐賀北DF上瀧悠輔(3年)_夏で引退考えていたチームリーダーが公式戦初ゴール

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[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[10.31 全国高校選手権佐賀県予選準決勝 佐賀北高 2-1 佐賀東高 佐賀県陸上競技場]

 佐賀北高には2人の主将がいる。1人は練習や私生活の面を束ねる守護神・GK菊池遼介。そして、もう1人がゲームキャプテンを務める右SBの上瀧悠輔である。「GKだとどうしても別々の練習が多いので、見切れないところがある」(佐賀北・小比賀徹二監督)ということから、試合中のキャプテンマークは上瀧に託されることなった。「上瀧は成績も良いですし、間違いないです。本当に彼は大人。縁の下の力持ちタイプなので」と指揮官が絶賛する男は、春先に行われた佐賀県新人戦の優勝に貢献。右SBとしてなくてはならない存在となっていった。

 しかし、県王者として挑んだ夏の総体予選では準決勝で佐賀東高に0-1で敗れてしまう。通常であれば冬に向け、悔しさを胸に気持ちを新たにするモノだ。しかし、県内有数の進学校である佐賀北の3年生にとって夏の敗戦は高校サッカー引退の合図でもある。夏で引退をしない選手もいる中で、上瀧は当初、身を引く覚悟を固めていた。何故ならば、入学前から両親との約束で夏を最後に引退するということを決めていたからである。だが、自身の中には不完全燃焼の想いがあった。そこで、意を決して両親と相談。「親も総体が終わって自分のことを心配してくれていた。やり切って終われてないというのを感じてくれていたみたいで、『自分がやると決めたのであればやりなさい』と言ってくれた」ということから、選手権に向けて再スタートを切ることになった。

 最終ラインの顔ぶれはほとんど変わることはなかったが、夏以降のチームは3年生の引退によって前線のメンバーは2年生主体となった。それだけに、3年生が多くいるディフェンスラインがしっかりとしなければいけないという想いが増幅。この試合でも昨年度の選手権出場校である佐賀東を相手に奮闘し、豊富な運動量で攻守に渡って貢献をして見せた。そして、後半2分には左CKから頭で合わせて貴重な追加点。「元々、セットプレーの際はリスク管理を後ろでやっていて上がることはなかった。でも、監督とかスタッフが『前に中に入ってみてもいいんじゃないか』と言ってくれた」ということから、生まれたゴールは上瀧にとって公式戦初ゴール。「ラッキーでした」と本人は話すが、もしもあの時サッカーを引退していれば生まれなかったモノであったことは間違いない。「色んな人に支えられて今の自分がある」と話す上瀧が目指すのは全国大会だけだ。決断したあの時の想いを胸に戦い、決勝戦でも勝利する。

(取材・文 松尾祐希)
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