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[MOM1598]國學院久我山高DF宮原直央(3年)_辿り着いたリーダー像。対話型の主将が導いた3連覇

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[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[11.14 全国高校選手権東京都Bブロック決勝 帝京高 0-0(PK5-6)國學院久我山高 味フィ西]

 それは勝利を喜ぶ涙だろうか。それとも極度の緊張を強いられたPK戦から解放された涙だろうか。あるいはその両方か。周囲のチームメイトが歓喜の中で涙を見せるのを見て、「まだまだこれからだ。あまり涙は見せたくない」と自分を律した。ただ、声援を送り続けてくれた大応援団の前に走り寄った時には「さすがにちょっと来ました」と笑う。「この大応援団が応援してくれていたので感謝の気持ちしかないですし、2015年の久我山を続けられるのが本当に嬉しいです」と語る宮原直央は、東京3連覇を果たしたキャプテンとして國學院久我山高の歴史に名を刻むこととなった。

 渡辺夏彦(慶應義塾大)、内藤健太(中央大)と強烈な存在感を放っていた2人の後を継ぐ形でキャプテンに就任した。「一昨年の夏彦君は技術的に桁外れでプレーで引っ張っていくタイプで、去年の内藤君は後ろから魂の掛け声を掛けてくれるタイプでした。自分は正直その2つは負けているので、全員に声を掛けてみんなでやっていくというスタイルを採っていくべきかなと思いました」と自らの方向性を決めた。その優れた対話力は報道陣とのやり取りを見ても十分察することができる。決勝後もミックスゾーンでは宮原の周りに小さくない人垣ができていた。1つ1つ言葉を選びながら丁寧に答えていく。その姿を見れば、チームメイトともそういう姿勢で接しているであろうことは容易に想像が付く。

 ピッチの中でも小さくない変化があった。昨年の全国でも任されていた中盤から、全国高校総体前に右SBへとコンバートされた。「どちらかと言うと攻撃をするタイプかなと思っていたので、前が点を取っているのを見て『いいな』と思いますけど」と苦笑しながらも、「よく考えてみるとサイドバックは攻守に貢献できますし、サイドでも(山本)研と基点を創れるので、その部分で自分の特徴を生かせると思っていて自分的に今は楽しいです」と自身に折り合いを付ける。この日の決勝でも帝京高は右サイドからのクロスが多く、ファーサイドでクリアする回数も多かったが、「自分は弾く側だったのでファーにいる選手を意識したリ、そういうのは徹底していたので、気持ちさえ折れなければ点は取られないだろうなと思っていました」と守備面と精神面で仲間を支え続ける。迎えたPK戦でもプレッシャーの掛かる5人目のキッカーとして見事に成功。キャプテンとしての重責を果たし、チームを3年連続となる全国へと導いた。

 200人を超える部員を抱えるチームが、全員でまとまる機会はそう多くない。「去年や一昨年と比べると膨大な人数で、合宿も日程がバラバラになってしまうんです。一気に全部員が何かをできるというのはなかなかないことなので、やっぱりまとまるとしたらこういう大会しかないと思います」と強い決意で臨んだ最後の選手権。だからこそ、西が丘という最高の舞台で「応援してくれる人たちが本気で応援してくれていた」ことが嬉しかった。降りしきる雨の中で部員全員の喜ぶ顔を見ることができたのは、宮原にとって何よりの勲章だろう。

 後悔が残っている。今年の全国総体1回戦。明徳義塾高に逆転負けを喫したゲームは、清水恭孝監督が「僕らから見ていても今年のゲームで最悪のゲームだったと思う」と口にする苦い経験。「全国に出て満足してしまった部分もあった」と当時を振り返る宮原も、「インターハイ後に意識が変わって、少しずつ勝ちにこだわる意識が出てきた」とチームの変化を感じている。「総監督である李(済華)さんからはインターハイで『気持ちが見られない』と凄く言われたので、今度は気持ちを示さないといけないなと思っていますし、この選手権で全国にもう一度出場することができるので、目の前の試合に集中して一戦一戦を戦って行きたいと思います」と言い切ったキャプテン。頼りになるチームメイトと、頼りになる大応援団と共に戦い続ける宮原にとって、3年間の集大成を披露する晴れ舞台はもうすぐそこまで迫っている。

(取材・文 土屋雅史)

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