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リオ五輪で史上初のファイナル目指す中島翔哉「銅メダルを超えたい」

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 手倉森ジャパンの背番号10を付け、チームの立ち上げ当初から中心選手としてプレーしてきたU-23日本代表MF中島翔哉(FC東京)。1月にカタールで開催されたAFC U-23選手権では準々決勝イラン戦の延長戦に2ゴールを決めるなど優勝に貢献し、大会MVPにも選ばれた。6大会連続となる五輪出場権を獲得した最終予選を振り返り、約5か月後に行われるリオデジャネイロ五輪への抱負を聞いた。

―五輪アジア最終予選を兼ねたAFC U-23選手権優勝の要因は何だったと思いますか?
「チームの一体感、まとまりですね。勝ち上がりながら成長できたという点が大きかったと思います。運や監督の采配も含めて、すべてがうまく噛み合ったというか、短期決戦という厳しい条件の中で、課題を次のゲームに反映しやすいメリットもありました」

―後半に得点する試合が多かったと思いますが、その理由をどう分析していますか?
「苦しい試合が続く中で、『前半はなんとか失点ゼロに抑えて、後半に勝負をかけよう』という意識が形になっていった結果だと思います。前半を無失点で抑えれば、後半は自分たちのほうが体力面で勝てる自信があったので、そこを生かしていこうというのがチームの共通認識になっていました。前半から相手が飛ばしてくることは最初から分かっていました」

―“ここからいい流れをつかめる”と感じた試合はありましたか?
「やはり初戦の北朝鮮戦ですね。苦しい試合になりましたが、初戦で強敵に勝てたことは大きかったです。印象的だったのは、浮き球をヘディングしたときに北朝鮮の選手がお腹や腰のあたりを思い切り蹴ってきた瞬間です。日本に対する当たりの強さを感じました。会場も沸いていたのでよく覚えています」

―中島選手自身の武器はどこだと思いますか?
「結構好き勝手にやらせてもらっているので、ゴールを奪うこととか、ゴールをアシストすることでチームに貢献したいです。キャラクター的には特に貢献してないです(笑)。ボーッとしているので、基本周りに任せちゃっています。“俺が、俺が”っていう引っ張り方をする選手がいなくて、本当に“みんなで”という意識の強いチームでした。チームのみんなが大事で、だれか一人でも欠ければ(五輪の)出場権を獲得できなかったと思います」

―準々決勝イラン戦の延長戦で決めた2ゴールのインパクトは鮮烈でした。
「やっといつもの感覚が戻ってきたという感じでした。イメージどおりタイミングやインパクトが噛み合っていたと思います。ただ、プレー全体のパフォーマンスは準決勝、決勝のほうが良くなっていたので、そのあたりは今後合致させられるようになりたいですね」

―オリンピック代表チームの武器はチーム力ということですが、個の力についてはどう見ていますか?
「チームで戦える一体感は確かに日本の武器だと思います。あとはやっぱり個人ですよね。バルセロナみたいなチームを見ていると、圧倒的な『個』を持っている選手がいるチームはやっぱり一番強い。一人で点を決められる選手がいれば、他の選手は守っていればいいわけですから。自分はそういう選手を目指しています。メッシは才能かもしれないけど、自分は努力によってそうなれるというところを見せていきたいです」

―これまでなかなか結果が出せない苦しい経験も数多く乗り越えてきたのではないですか?
「そもそも結果がすべてとは思っていないです。結果はもちろん大事ですけど、自分にとってはまずはサッカーを楽しむことが一番。そこからパフォーマンスも上がってくると思っています。もちろんゴールやアシスト以外にも、あらゆるプレーでチームに貢献したいと思っていますし、チーム全体でいいパフォーマンスが出せれば、結果につながると信じてこれまでやってきました」

―スピードを求められる現代サッカーについてはどう感じていますか?
「正直、世界トップレベルの選手と日本選手にはまだ差があると感じます。スピードはやっぱりすごく大事です。相手より速く動くことで考える時間もできるので、プレーに余裕が生まれます。ゴール前では特にそうですが、頭より先に体が動けるような感覚が必要。自分も1年を通してそこをずっと求めてきたので、少しはうまくなったかなと……。スピードに乗ったときに相手を引きはがすというか、相手をどんどん抜いて行けるようなドリブルを目指したいですね。浅野拓磨選手のゴールに向かう姿勢は見習いたいです」

―スピードと聞いて想像する世界で活躍する選手は?
「やっぱりメッシ、ネイマール。僕自身、バルセロナが大好きなので、試合は全部見ていますが、メッシのプレーは本当に目標にしています」

―率直にうかがいますが、今の日本は世界と戦えると感じていますか?
「戦えるように自分が頑張りたいですけど、まだまだ差がありますね。ただ、考え方やサッカーのやり方を少し変えれば、いけるんじゃないかとも思います。例えばゴール前に関して、日本人選手は互いに譲り合ったりするけど、海外だと自分は自分、相手は相手。自分がゴールを決めることしか考えていないですよね。その気持ちは大事にしたい。ゴール前では、僕は基本的にパスはいらないと思っています。相手が食いついてきたらやり方を変えればいい。そういった感覚を磨いていけば、自然と技術も結果も付いてくるはずです」

―スパイクについて伺います。大会を通して履いていたスパイク「X」の感触はいかがでしたか?
「準決勝までずっと同じ一足を履いていましたが、足によく馴染んでくれました。カタールのピッチコンディションは比較的良かったんですけど、ピッチが濡れていたり、土がゆるかったりしたとき、しっかりプレーをサポートしてくれました。でも、ターンや踏み込みで滑ったときにスパイクのせいにはしたくないですね。自分の体の使い方で、転倒などの危険を回避できることもあると思うので」

―スパイク選びの際に重視することはなんですか?
「普段の靴を選ぶのと同じ感覚でスパイクも選んでいます。かかとが浅いスパイクはプレー中に脱げそうな感覚になるので、履き口の心地よさは重視します。あとは指や足の裏が痛くならないかどうか。アディダスのスパイクは自分の足に合っているので、これまでストレスを感じたことはありません」

―リオデジャネイロ五輪に向けて目標を聞かせてください。
「あと5か月ですか。この期間がすごく大事だと思います。どれだけ成長できるか。まずは所属チームのFC東京で試合にしっかり出て、チームを勝利に導くゴールを決めて、プレー以外の部分でもいいパフォーマンスを出して成長していきたいです。代表チームでは、メダルを目指したいです。これまでのベスト、(1968年メキシコ五輪の)銅メダルを超えることが目標ですね」

(取材・文 波多野友子)

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