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選手権のPK失敗が転機…MF吉田知樹は「サッカーを辞める」からいわきFC入団を決断

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[4.10 福島県社会人2部 いわきFC8-0グロリーズ福島 いわきGF]

 10日に行われた福島県社会人リーグ2部開幕戦。いわきFCのMF吉田知樹(18=明秀日立高)は高卒選手で唯一のベンチ入りを果たすと、後半10分から途中出場した。

 すると出場からわずか2分後の後半12分、右サイドから上がったクロスに左サイドでフリーになっていた吉田が右足で合わせて早速ゴール。同33分には中央をドリブルで上がると、ミドルレンジから右足を一閃。豪快なシュートをゴール右隅に突き刺した。「もう1点。クロスのやつ惜しかったですね」。鮮烈デビューを飾った吉田だが、後半アディショナルタイムに迎えたビッグチャンスを外したことで、恥ずかしそうに頭をかいた。

 高校卒業と同時にサッカーを辞めようと思っていた。明秀日立高の10番を背負っていた吉田だが、卒業後は接骨院で働きたいという将来の目標のため、福島県内にある理学療法士になるための専門学校に進学することを決めていた。

 しかし今年1月、状況が一変する。茨城県大会を制して、初出場した全国高校選手権の1回戦で優勝候補の一角だった四日市中央工高に逆転勝ちして勢いに乗ると、1月2日の2回戦で準優勝した國學院久我山高に後半ラストプレーで追いつく驚異の粘りを見せて、PK戦にまでもつれ込む熱戦を演じた。

 本来であれば、吉田にとってはキャリアに終止符を打つ大会だった。しかし、運命は吉田に試練を与えた。4人目で蹴ったPK戦。前の2人が失敗していたことで、吉田が失敗すれば、その時点で試合終了となるキックだった。だがボールは無情にもゴール左に外れる。その瞬間、「またサッカーがやりたいな」という思いに頭が切り替わった。

 そんな折、声をかけたのがいわきFCだった。それまで関東の大学から声をかけられても断っていたという吉田だが、迷った末に入団を決意。「地元に何も恩返しが出来ていなかった」と、中学校までを過ごしたいわき市への思いに逆らうことは出来なかった。

 この日は両親の目の前で活躍することが出来た。「自分の特長はドリブル。ドリブルからシュートというのが最近はなかったので、きょう点が取れたのは大きかったです」。地元の大声援を力に変える18歳が、サッカーを通してのいわき活性化に一役買う。

(取材・文 児玉幸洋)

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