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岡山MF矢島、世界を体感したからこそ知れた“現在地”

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[8.21 J2第30節 千葉 2-0 岡山 フクアリ]

 背番号10が6試合ぶりに戻って来た。リオデジャネイロ五輪代表の一員として、世界を相手に死闘を演じたファジアーノ岡山MF矢島慎也は、代表でのサイドハーフからクラブでの持ち場となるボランチに戦いの場を移し、勝利のために90分間ピッチに立ち続けた。

 ブラジルから帰国して迎えた初戦。ここ5試合4勝1分と好調を維持するチームに合流し、「コンディションの部分で言い訳はしたくないし、(代表の)皆も試合に出始めているので関係ない」と中盤の底からパスを散らして攻撃にリズムをもたらした。しかし、0-2の完封負けで6試合ぶりの黒星を喫し「今日に関しては本当に勝ちたかった」と唇を噛みながらも、「プレーオフ圏内にしがみついて一歩一歩やっていきたい」と前を向いた。

 リオ五輪に出場した手倉森ジャパンにはチーム発足当初から2年半、メンバーに名を連ね続けた。14年1月のAFC U-22選手権、同年9月のアジア大会ではベスト8敗退の悔しさを味わったが、16年1月のリオ五輪アジア最終予選(AFC U-23選手権)でアジアの頂点に立ち、五輪本大会への切符を手に入れた。

 だが、五輪本大会ではグループリーグ第3節スウェーデン戦で決勝ゴールを奪ってチームに勝利をもたらしたものの、コロンビアに勝ち点1届かずに決勝トーナメント進出は叶わず、手倉森ジャパンは解散の時を迎えた。

 代表のユニフォームを身にまとって戦った時間を「間違いなく、自分のサッカー人生の中で大きなものを占めると思う」と振り返る。「最終予選で優勝できて、五輪に出られたことは良い経験。でも、その経験を次に活かしていかなければいけない。必要なことしか目の前で起こらないとテグさん(手倉森誠監督)も言っていたので、グループリーグ敗退の悔しさを持つことが、自分の次のサッカー人生につながっていくと思う」。

 年代別代表の活動は終わった。次に代表のユニフォームに袖を通すにはA代表に招集されるしかなく、矢島自身も「次はA代表しかない」と視線の先に置く。しかし、リオ五輪、そして五輪前に行われたブラジル戦で世界を体感し、特にブラジル戦では「大人と子供の差を感じた」とレベルの差を痛感したように、「今からすぐにA代表に行きたいと言うのは現実的ではない」と語る。

「一気にレベルを上げるというよりも、少しずつステップアップしていければ。今はJ2でプレーしていますが、来年はJ1でプレーできればと思っています。まずは岡山でコツコツと積み上げて、A代表のレベルに見合う実力を身に付けて『A代表に行きたい』と言えるようになりたい」

 “勝てない世代”と呼ばれた手倉森ジャパンは、2年半という月日の中で確かな成長を遂げ、世界で1勝を挙げた。そのチームの一員としてともに成長してきた男は、A代表に照準を定めながら再び階段を一歩ずつ上っていこうとしている。

(取材・文 折戸岳彦)
●[J2]第30節 スコア速報

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