beacon

京都FWエスクデロ競飛王、PK失敗の裏にあった“旧知のMF”との駆け引き

このエントリーをはてなブックマークに追加
[9.18 J2第32節 横浜FC2-0京都 ニッパツ]

 PK獲得からシュートを打つまでのわずかな時間。そこで駆け引きは行われていた。0-2の後半40分に京都サンガF.C.は、この日二度目のPKを獲得。1点を返すチャンスだったがFWエスクデロ競飛王のシュートは横浜FCの守護神・南雄太に阻まれた。

 後半27分に獲得したPKはFWキロスがゴール左下へ蹴り、南に止められていた。そして同40分に再びPKを得る。真っ先にペナルティスポットに立ったのはMFアンドレイ。しかし、ベンチ付近からの指示に気づいたエスクデロが後方から歩み寄り、キッカーを務めることになった。

「ベンチを見たら、(自分が)蹴るように指示が出ていたように見えた。今となってはどういう指示だったか、わからないんですけど。あそこに立った以上は、シュートを入れないといけない。アンドレイは自信があって、俺も彼がいく頭でいた。だけど、自分が蹴ることになって、メンタル的には厳しい部分があった」

 ささやかな動揺を胸に、ペナルティスポットに立ったエスクデロ。ここで持ち前の闘争心に火をつけるような出来事が起きる。浦和ジュニアユース、ユースの同級生で旧知の仲である、横浜FCのMF佐藤謙介から「同じとこ!同じとこ!」と声が飛んだのだ。

 京都のストライカーは「それなら同じところに思い切り蹴ってやろうと思った」とキロスが止められた場所と“同じところ”の左下へ強い弾道のシュートを蹴りこんだ。しかし、放ったシュートは横っ飛びで止められた。

 エスクデロは佐藤の“挑発”を振り返り、「蹴る前からメンタルがやられていたところもあったけれど、あいつはそういうところ。ずっと前から頭がいいんですよね。サッカーに対して、サボるところとやるところの見極めも上手い。やっぱり上手いですね。思いっきりシュートを突き刺してやろうと思ったら、ダメでした……」と唇を噛んだ。

 自身はPK失敗で無得点。チームも勝ち点7差の相手を前に零封負けを喫してしまった。それでも闘志溢れるストライカーは「自分やキロスがPKを外して、FW陣がそういうところを決められなかったら厳しい試合になるのは当たり前。取り戻すのは次の試合でやるしかない」と真っ直ぐに前を向く。

「アグエロだって、この前の欧州CLでPKを2回外して、次の試合でまた蹴ってまた入れている。そういうメンタルは自分もすごく強いと思っているので、次があったらまた蹴りにいきます。そういうのは関係ない。本当に今日終わったことは過去に戻れないから、どうにもできない」

「何ができるかといったら、前を向いて全部を出すこと。今日起きたことに対して、ああだこうだ言ってもどうにもならない。ミスは起きるし、負けも起きるし、それがサッカー。きょうに関しては横浜FCのサポーターのみんながすごく喜んだと思う。それがサッカー。次は僕らが喜べたらそれが一番幸せなこと。一所懸命やっていきたいです」

 今節の敗戦により、6位の京都は7位・横浜FCと勝ち点4差に詰められた。今季も残るは10試合となったが、ここから負けられない戦いが続いていく。

「最後まで一所懸命やって。最後の順位がどこにあるのか、自分たちがどうなるのかは、本当に最後にならないとわからない。本当に本当にやっていくしかない。自分は人生で生きていて、諦めたことはないから。最後に無理ってなるまで諦めるつもりはない」

 PK失敗でうつむくことは意味をなさない。過ぎたことにとらわれず、目前の試合へ必死に全力で取り組むことで、いつだって道を拓いてきた。エスクデロの身に心にそれは刻まれている。不屈の精神を胸に、残り試合を駆け抜ける。

(取材・文 片岡涼)

TOP