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[MOM1946]駒澤大高DF高橋勇夢(3年)_「衝撃の4戦連発!チーム得点王は2番の右SB」

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前半7分、駒澤大高は右SB高橋勇夢主将が先制PKを決める

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[11.12 全国高校選手権東京都Bブロック予選決勝 駒澤大高 2-0 帝京高 駒沢]

 開始早々に掴んだPKのチャンス。キャプテンマークを左腕に巻いた高橋勇夢がスポットに向かう。「昨日の練習では入ったけど危ないキックをしていたので、『大丈夫かな』と思ったんですけど、この1年間は外したことがないので信じて見守っていました」と大野祥司監督も言及したように、チームメイトも信頼を置くPKキッカーの高橋は「自分は中学時代のForzaの時に、『PKも運じゃなくて実力だ』とずっと教わってきたので、そこに関しては練習から意識してやってきています」と自信を持って左スミのゴールネットへボールを蹴り込む。これで選手権予選は4試合連続ゴールとなったが、そんなチーム得点王の背番号は2。「応援の仲間からも結構『今日も決めてくれよ』って。僕、SBなんですけどね」と笑う高橋。驚異の4戦連発は右SBによって記録された。

 昨年度の選手権では全国8強まで駆け上がった駒澤大高。「勝って当たり前のチームと見られたりとか、今年は本当にプレッシャーがあった」と大野監督が認めた通り、周囲の見る目も確実に変化していく中で、シーズン序盤からケガ人が続出。関東大会予選では東京を制し、そのまま関東大会も優勝までさらったものの、総体予選では全国の懸かった準決勝で関東一高に苦杯を嘗める。「インターハイに出られなかったというのが自分たちの実力で、そこから夏もなかなか結果が出なくて、本当にメンタル面の所で準備してきた」(高橋)という最後の選手権予選。連覇を期待される彼らは初戦こそ大成高に苦しめられながら、高橋の決勝ゴールで1-0と競り勝つと、以降は専修大附高に5-0、東京朝鮮高に4-0と完勝を収め、2年連続となる決勝へと駒を進める。相手は駒澤大高が初めて全国への扉を開いた6年前と同じ名門・帝京高。好ゲームが期待された一戦は、前述したように高橋のPKで先制した駒澤大高が盤石に近いゲーム運びで時計の針を進め、後半アディショナルタイムに追加点を奪う理想的な展開で2-0と勝利。いつも辛口の大野監督も「何とか全国の切符を獲れたので、今日だけは褒めてきましたけどね」と笑顔を見せる大会連覇を達成し、再び全国の舞台で戦う権利を勝ち獲った。

 『サイドバック』に『4戦連発』というキーワードだけ聞くと、突如として覚醒した印象を受けるかもしれないが、実は昨年の選手権予選でも高橋は4ゴールを挙げて、チーム得点王になっている。当時のポジションも現在と同じSB。本人は「チームメイトが良いボールをくれたから、自分が決められているだけです」と謙遜するが、セットプレー時のゴール嗅覚はストライカー顔負けのモノを持っており、今までもチームのピンチを救う得点を重ねてきた彼の『4戦連発』は、ある意味でチームメイトやスタッフからすれば、それほど大きく取り立てる程のことではないのかもしれない。そんな高橋はゴールパフォーマンスにも磨きが掛かってきている。準決勝のゴール時は、理想のリーダーとして尊敬する先輩の竹上有祥(駒澤大)が、昨年度の選手権開幕戦で披露した“でんぐり返し”を再現した。すると、「この間グラウンドで深見さんに会った時に『オレのもやれ』と言われました(笑)」と明かした高橋。決勝のゴール時にスタンドに向かって取ったポーズは、やはり昨年度の選手権開幕戦で深見侑生(駒澤大)が敢行したレイザーラモンHGの“フォー”。「竹上さんにも深見さんにもお世話になっているので、感謝を示せて良かったです」と話しながら、「でも、ここがゴールではないので気を引き締めないといけないですね」と続けるあたりが何ともマジメな彼らしい。

 普段は東京の大会でも使用されることのない駒沢陸上競技場は、チームにとっても昨年度の選手権で敗退を強いられた、準々決勝の東福岡高戦以来だった。1年前と同じピッチに立った高橋は、当時と違う感情に襲われたという。「個人的には今日の方が重く感じて、去年は2年生として出ていたので、本当に深見さんや竹上さんたち3年生に助けられている部分が凄くあったんですけど、やっぱり自分たちが3年生になって、今日も学校が全校応援にしてくれて、凄く観客も入ってくれて、左腕にキャプテンマークを巻いていて、凄く重圧はありました」。270人近い部員をまとめるキャプテンとして、「チームの一番上に立ってやるからには全部の責任を背負ってやらなきゃいけないと思っている」という想いを心に秘めている高橋に掛かる重圧は、想像を絶するものがある。それでも「そういう重圧の中で勝てるからこそ、去年と違った良さを感じることができたので、それは良かったと思います」と言い切れる所が高橋のリーダーたるゆえんでもある。

「前回はベスト8まで行って『歴史が変わった』と言われたんですけど、個人的にはまだ歴史が変わっている途中だと思っていて、その後で関東を獲って、一つ歴史を変えることができた中で、インターハイは情けない結果に終わってしまって、本当にこの選手権に懸けてやってきました。目標は全国制覇ですし、そのために目の前の相手と一つ一つ戦って、一つ一つ倒して、まずは埼玉スタジアムに行くことというのが一番大事だと思うので、しっかり良い準備をしたいと思います」と最後に決意を口にした高橋。全国8強のその先へ。赤黒軍団を率いるキャプテンには埼玉スタジアム2002の輪郭が、おぼろげながら間違いなく見え始めている。

(取材・文 土屋雅史)
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