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「決めたことをやり切る」最注目ストライカー、京都橘FW岩崎悠人が挑む選手権走破

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京都橘高}FW岩崎悠人

 それは飛躍を遂げた場所であり、屈辱を味わった場所でもある。京都橘高}FW岩崎悠人(3年)は1年時の選手権での活躍をきっかけに日本高校選抜、年代別日本代表、そして争奪戦の末に京都入りと注目される中で成長を遂げてきたストライカー。今年10月のAFC U-19選手権では3得点を決めてU-19日本代表のアジア初制覇にも貢献した。

 試合終了まで何度も、何度も繰り返しスプリントを続け、その馬力とスピードでDFを置き去りにし、多彩なシュートをゴールへ沈める。そして誰よりもひたむきに続ける守備。見る者を感動させることのできるFWは「決めたことをやり切る」こだわりを持ち、サッカーを「楽しむ」ことで一つ壁を乗り越えようとしている。

 1年前の選手権は屈辱の初戦敗退だった。3度目、そして最後の挑戦となる選手権は全国高校総体優勝校でU-19日本代表の2人のCBを擁する市立船橋高(千葉)と初戦。注目対決で選手権初ゴールを決めて、目標とする頂きまで駆け抜ける。

―いきなりベストの力を出さないと勝てない相手(市立船橋)との初戦になった
「夏の全国で日本一取ったチームと冬の全国大会1回戦でやれると思うと、本当にワクワクしていますね」

―京都予選決勝後のコメント。自分を鼓舞する意味と、少し茶化す気持ちもあっての「(U-19代表CB)杉岡ブチ抜いて取ります!」だったのかと
「それくらいやらないと市船には勝てないし、これから先のことを考えると、日本代表のCBが2人いても、それでもやらないといけないと思っているので、そこは自分を鼓舞するという意味もありました」

―実際に反響あったと思うんだけど
「結構ありました。でも『よう、言うたな』とか言われましたね(微笑)」

―橘が準優勝、ベスト4、ベスト8と成績を残してきて、昨年の初戦敗退。もう一度、上のステージに上がって勝負するためには初戦敗退する訳にはいかない
「今、ちょっとずつ成績が下がっているので、ここでもう一回初戦で市船に勝って勢いに乗れれば、ベスト4だったりも勢いで行ける可能性が出てくると思うので、そこは本当に1回戦に向けて、市船戦に向けて全力を尽くしてやればいいと思います」

―橘での生活も残りわずか。思うところもあるのでは?
「そうですね。ホンマに短かったですね」

―短かった?
「1年の頃から選手権終わって高校選抜行ったり、年代別の日本代表に呼んでもらったり、怒涛の3年間だったというか、凄く忙しくて本当に短かったです」

―時間のスピードに合わせるのが難しくて、「やり切った」と言う感覚とは違うかもしれないが?
「もうちょっと橘のみんなとサッカーのイメージだったり、思いを共有した中でもっとやれれば良かったなと。実質、『3年間一緒にやった』とは言えないじゃないですか。1か月とか抜けて、それを足すと相当減ってくるんで。そこは寂しい思いもあります」

―毎月のように不在の期間があった。みんなからどう思われているのかとか、気にならなかった?
「最初の方はチーム抜けて行くのは気にしていましたけれど、先輩もいましたし。でも、みんな優しかったです。帰ってきたら、『どうやった?』と聞いてくれたり、嬉しかったですね」

―それは橘のいいところなのかな。きょう、練習を見せてもらっても本当に和気あいあいとやっていた
「本当に家族みたいな感じなので。特別扱いもされないですし、受け入れてくれるので」

―その中で岩崎君が練習後に後輩相手にマンツーマンで指導していたり。自分の伝えられることは全部置いて行こうくらいな気持ちでやっているのかなと
「僕がみんなとやれるのも、後輩たちとやれるのも、残り少ないんで代表で学んできたことや3年間学んできたことはできるだけ伝えて去っていきたいなと。(凄く一生懸命に指導していたのは)去年の選手権も出ていた輪木豪太なんですけど、一緒にやってきた仲間ですし、助けてもらったりもしていたんので、そこは成長して欲しいです」

―残り数日間で成長できる手応えがありそうだね、このチームは
「市船が初戦ということもあって、『もっとやらないといけない』という思いは出てきましたし、成長しないと勝てないという思いもあるので、そこは『しよう』と思えるきっかけになっています」

―橘に入学した頃の思いとは?
「準優勝した時の仙頭(啓矢)君、小屋松(知哉)君のプレーを見て入ってきたんですけど、『僕もああやって全国で活躍したいな』という思いを持って入ってきました」

―上を目指そうという選手たちの集まりの中での3年間
「去年一回戦で負けて、『僕らの代ではこういう思いは絶対にしたくない』と去年誓って、1年間、全国制覇という思いを持ってやってきました」

―自身にとって去年、一昨年の選手権とは? 1年目は評価を高める大会になった
「あの大会もただ3年生について行っただけというか、何も考えずにがむしゃらにやっていたというのがあって。それでちょっと活躍できた。(優秀選手に選ばれて高校選抜に入ったことも)本当にタイミング、運が良かった」

―そして去年
「年代別日本代表に呼ばれるようになって、自信を持って入った大会なんですけど、ああやってマークされて潰されてしまって、自分の力不足を感じて本当に悔しい思いをした」

―もっとできるぞと
「試合中にずっと思っていて。『もっとやれる』『もっとやれる』って思いすぎて『自分が』『自分が』となって。自信が過信になったというか、周りを信じられなかった。自分が代表選ばれていて上に行かなアカンって思いもあったし、活躍せなイカンという思いもあった中で自分の持っている力を出せなかったというのは悔しかったですね」

―その後、どう見つめ直した?
「もっとみんなと一緒にサッカーを楽しみたいと思いました」

―楽しむ?
「2年の時は結果にこだわり続けてやっていたので。負けて新チームが始まった時は楽しんで悔いのないようにやろうと決めました。個人的に結果にこだわり過ぎると調子が悪くなるというのがあるので、楽しめば自然と調子が上がるタイプなので『楽しもう』と思いました」

―今思うと、アジアユースはその楽しさが出ていたのかなと思うけれど
「あの1か月は結果を残さなければいけないというよりも、サッカーがしたいと思ったので。サッカーやっていない時にサッカーしたいという思いが凄くありました。橘のチームメートや家族がみんな応援してくれていたので頑張らなイカンと。橘のメンバーから来たメッセージが楽しんで来いよというものだったので」

―結果を残さないといけないけれど楽しさと両立できていた。
「できていましたね」

―それは今後へのヒントになりそう?
「多分、なると思いますね。2年の時のあの感じじゃなくて、今の感じでやれば楽しんでやれると思う。自然と色々なものが吸収できると思う」

―そして今年
「必然的に集まった3年生38人なんですけど、少しでも長くサッカーしたいと思っています」」

―目の前の選手を倒すというか、岩崎君にとってサッカーを楽しむとはどういうことを言うんだろう?
「その出ている11人のメンバーでイメージが合った時とか、(京都予選)決勝もそうですけど(水井)直人が決めたらみんなで喜んだりとか、あの喜びも3年間やってきた直人の努力を知っているから喜べるものであって、そういうのが楽しいですね。(嬉しい顔していたもんね)ハイ」

―みんなで、1試合でも多く
「そうですね。1試合でも多く。応援のメンバーのためにも絶対に引退したくないと思うんですよ。松本が選手権予選の時に手術したんですけど、年明けに治るみたいな感じで言っていたので、治るまで引退したくない。(練習でも何でも)全員でサッカーできる状態で引退したいです」

―周りからの高評価に対して、自分の思っている感覚との違い。何でこんなに評価、注目されているんだろうと思うことはなかった?
「注目されている実感はないですね。代表の時も結構名前出してもらっていたんですけど、自分よりも小川(航基、磐田)君や(G大阪の堂安)律君、他の三好(康児、川崎F)君や(C大阪U-18の舩木)翔もそうですけど、もっと技術も高いし、活躍していた場面も多かったと思います」

―自分の中では自信も持っていると思うけれど、同時に何でと
「注目されていることに関して考えることがあんまりなくて、橘いてたら特別扱いされないんで。学校の中でもみんな凄いので、他の部活でも。ですから、本とか見ないと活躍している、注目されていると分からないので、できるだけ見ないようにしていますね」

―プロが何クラブも声をかけてくれていたのは?
「それも分かんなかったです。『何でやろな』とは思っていました」

―チームで結果が出ていなかったことで、そう思えなかった?
「J1のクラブのスカウトの人に『J1で出ても通用する』と言われたんですけど、それが全然、自分の中では『絶対にできひん』と思ったので、そこは周りの評価とズレがありましたね」

―報道など見ると、今年の岩崎君は去年の小川君と同じ評価
「あの人にはかなわないですよ。何でもできるじゃないですか。絶対に勝てないです」

―でも、小川君が持っていないものを持っている
「それは思っています」

―今後、日本を救う存在になるためには、あれ以上にならないといけないという自覚は
「そうならないといけないなと思っています。目標がA代表なんで」

―A代表が目標
「ワールドカップに出たいです。一番の目標は。僕はワールドカップとか出てこそ、A代表なのかなと思っているので。出たいですね」

―過去のワールドカップを見てそのような目標を持つようになった
「南アフリカのワールドカップ見て。小学校6年生の時、あれを見て、夢見ましたね」

―印象に残っている瞬間は?ゴールシーンとか
「一番は(パラグアイに)PKで負けた瞬間ですね。悔しかったです」

―日常についても。普段は学校から1時間半かけて自宅へ帰って、どのような生活を
「普段は8時半くらいに家着いて、まずはご飯食べて、ジムに行きます。筋トレとかするためじゃなくて、泳いだり、サウナとか、お風呂とか入ったり、ストレッチボールとかして帰って来て11時くらいに寝ます」

―朝練は?
「朝練は自由なので。行こうかなと思った時だけ行っています」

―行こうと思ったら5時前に起きないと
「最初は全然慣れなかったですね。朝掃除が毎週月曜日にあるんですよ。それが朝練習行くときの電車なので4時45分起きなんですよ。1年の時はホンマにそれはキツかったですね」

―公式戦出た翌朝は大変
「90分やった次の日に4時45分起き(苦笑)」

―勉強は?成績も優秀と聞いている
「勉強は電車の中で。逆にそれが良いんですよ。電車の中とか雑音があった方が集中できるタイプなんですよ。揺れるのも大丈夫」

―そのような日々を送ってきて迎える選手権。改めて、自分たちの目標を
「この一年は全国制覇を目標にみんなひとつにやっていますね」

―あまり、個人のノルマをかける方ではないと思うけれど、個人のノルマは
「得点していないので。まずは1点取りたいですね。(インターハイは2試合連続ゴールだったが)やっぱり選手権は個人的に取れない大会なんで……。3年のために取っておいたことにしておきます(微笑)」

―市船と初戦を戦うのも、成長するためのいい壁
「(得点し、勝つことが)できれば、また成長できますからね」

―自分をつくってきたポリシー、こだわり、独自のものってある?
「決めたことはやらないと気がすまないです。勉強の話をすると、きょうはここまでやると決めたことはやりきらないと寝られないです。やってから寝たいです。負けず嫌いなんで、自分の中で決めたら、頑固なんすかね。決めたら、やりたいです」

― 一度決めたら、絶対にやり切る
「中学校の時は結構ランニングしていたんですよ。(ある日)行きで遠いところまで行ってもうて、帰りにシンドすぎて足痛くなったんですよ。でもきょうはこれだけ走るって決めたから、シンドくても、何分かかったか分からないですけど、最後までやりました。負けず嫌いです」

―それは橘で磨かれた部分でもある?
「勉強もちゃんとやると決めて入ったので。橘入る前に色々な人から聞いていたので、サッカーだけじゃなくて勉強もやらないといけないと思いました。(負けず嫌いは家族や同級生と比べても)自分だけやと思います。ミニゲやっても負けたくない」

―小中学校時代はどんな選手だった?
「ボランチやっていました。小学校の頃はポジションなくて、全部ひとりでやっていました。運動量がヤバかったと思います。中学校の時はボランチで捌いていました」

―壁にぶつかったことは
「ボランチやっていた時なんですけど、ボールの受け方とか全然分かんなくて。受けても潰されるし、受けたくない時期がありました。(地元の中学校でプレーするようになって)1列上がって、トップ下になったんですけどその時に自由にやっていいと言われてめっちゃ楽しくなって。『やっぱ、楽しむことやな』と思いました」

―ではボランチやれと言われれば
「多分、できます。どこでもやりたいです。SBもやりたいですし」

―改めて自分の特長って走ることだと思っている?
「続けられることやと思います」

―走り続けられること。繰り返し、繰り返し何度でも
「それが繋がっていると思います。(自分のポリシーである)『決めたことをやり切る』ことに」

―岩崎君が着用するスパイク、『RED LIMIT』について。デザインはかなり印象的だが
「シンプルで、格好いいですね」

―ACE 17については、すぐに公式戦から履くということだけど
「履きたいと思います。もう、テストしました。めっちゃ、フィットしています。ボールタッチも軽いので求めているスパイクですね」

―求めているのは軽さとフィット感?
「重いと疲れやすく感じるので。(自分は)結構動くじゃないですか。スパイクはちょっとでも軽い方が助かります。だから、素材が薄い方がいいんです。ボールタッチがやりやすいですし、これは薄いんので良いです」

―素材が薄いタイプだと、削られる心配とかしない?
「そんなのは気にならないですね。(今まで履いてきたスパイクと比べても)いいですね」

―このスパイクを履いての選手権
「このスパイクで獲ります!!」

(取材・文 吉田太郎)★RED LIMIT PACKの詳細はこちら
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