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「勝つなら1-0かPK」前橋育英が“読みどおり”のPK戦で市船の夏冬連覇の夢打ち砕く

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前橋育英のゴールを守ったGK月田啓

[1.2 全国高校選手権2回戦 市立船橋高0-0(PK3-5)前橋育英高 フクアリ]

 第95回全国高校サッカー選手権は2日、2回戦を行い、フクダ電子アリーナの第1試合では市立船橋高(千葉)と前橋育英高(群馬)が対戦し、0-0からのPK戦を5-3で制した前橋育英が3回戦に駒を進めた。全国高校総体を制し、同校初の夏冬連覇を目指した市立船橋だが、その夢は2回戦でついえた。前橋育英は明日3日の3回戦で遠野(岩手)と対戦する。

 関東の名門対決は立ち上がりから両チームの選手が球際で激しくぶつかり合う肉弾戦となった。「京都橘が引き過ぎていたので、これではダメだと思った。僕らはもっと前からプレスをかけようと」。市立船橋の1回戦・京都橘戦を見た前橋育英の山田耕介監督が選んだ戦術はハイプレス。夏の王者に対して一歩も引かず、高い位置からプレッシャーをかけて序盤のペースを握った。

 前半6分、出場停止明けで今大会初先発となったMF長澤昂輝(3年)が右足ミドルを放つと、同11分にはMF高沢颯(3年)がミドルシュート。しかし、市船もDF杉岡大暉主将(3年=湘南内定)、DF原輝綺(3年=新潟内定)の両センターバックにアンカーのMF金子大毅(3年)を加えた3人が中央を固め、PA内への進入を許さなかった。

 攻撃時には金子が最終ラインにまで落ちることでDF真瀬拓海(3年)、DF杉山弾斗(2年)の両サイドバックを高い位置に押し出し、中央からMF高宇洋(3年=G大阪内定)がゲームを組み立てる市立船橋。左ワイドのMF太田貴也(3年)が果敢なドリブル突破を見せるなどカウンター主体で前育ゴールに襲い掛かるが、最後の精度を欠き、決定機をつくるまでには至らなかった。

 前橋育英は前半31分、FW飯島陸(2年)が中央から右足でミドルシュート。ゴールマウスを捉えていたが、GK長谷川凌(2年)の好セーブに遭い、先制点とはならない。0-0で前半を折り返すと、後半開始からMF岩下航(3年)に代えてFW馬場拓哉(3年)を投入し、1回戦の明徳義塾戦(3-0)で途中出場から2ゴールを挙げたスーパーサブを早くもピッチに送り込んだ。

 ところが、後半に入ると、徐々に前橋育英のハイプレスも勢いが弱まり、足が止まり始める。押し返す市立船橋は後半9分、高がFW福元友哉(2年)とのワンツーでPA内に進入。右足を振り抜いたが、GK月田啓(3年)の体を張ったセーブに阻まれた。同22分には最初の交代カードを切り、太田に代えてMF野本幸太(3年)を投入。同26分、右サイドのスペースに飛び出したMF西羽拓(3年)がグラウンダーのクロスを入れると、DF松田陸(2年)のクリアがあわやオウンゴールになりかけたが、GK月田がかき出した。

 圧力を強めて押し込む市立船橋だが、1点が奪えない。後半28分、福元の右CKに原が打点の高いヘディングシュートで合わせるが、クロスバーの上へ。前橋育英は後半29分、長澤と高沢を下げ、MF田部井悠(2年)とMF田部井涼(2年)の田部井ツインズを投入。後半34分、西羽に代えてFW有田朱里(2年)を送り込んだ市立船橋は同36分に杉山の右FKからこぼれ球に原が詰めるが、またしてもGK月田が至近距離でビッグセーブを見せ、ゴールを死守した。

「勝つとしたら1-0かPKだろうと思っていた」。山田監督の予想どおり、試合は0-0のまま80分間で決着が付かず、PK戦に突入する。先攻の前橋育英は1人目のMF大塚諒主将(3年)が落ち着いて中央に決めたが、対する市立船橋は野本が左ポストに当てて失敗。その後は両チームともに全員が成功し、最後は前橋育英の5人目、馬場がゴール右に決め、勝負あった。

 PK5-3。市船の夏冬連覇の夢を打ち砕き、3大会連続となる3回戦進出を決めた前橋育英の山田監督は「ハーフタイムにDFラインを褒めた」と、守備陣の奮闘を手放しで称えた。後半は押し込まれる展開ながらゴール前でしっかり跳ね返し、「クロスを上げられることは予想していた。中のマークや視野の確保、体を張る部分がしっかりできていた」と、松田、DF角田涼太朗(2年)の両センターバックを評価。大塚も「厳しい戦いだったけど、DFラインが頑張ってくれて、勝利に導いてくれた」と感謝した。

 明徳義塾、市立船橋と連破し、明日3日の3回戦では遠野と対戦する。3年連続の8強、そして2年前の準優勝を超える悲願の初優勝へ、弾みを付ける勝利となったのは間違いない。「明徳と市船がヤマ場だと監督も言っていたし、自分もそう思っていた」。ホッと安堵の吐息を漏らす大塚だが、すぐに「ここで気を抜いたら次でやられる」と気持ちを切り替え、表情を引き締めた。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)

(取材・文 西山紘平)

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