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[MOM2029]佐野日大GK中村一貴(3年)_兄は190cmの長身GK、176cmの守護神が“自己流”でPK2本ストップ

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PK2本ストップの佐野日大GK中村一貴がガッツポーズ

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[1.3 全国高校選手権3回戦 一条高2-2(PK3-4)佐野日大高 駒沢]

 後半終了間際に追いつかれても動じなかった。佐野日大高(栃木)は2-1で勝利目前だった後半39分にCKから失点。2-2でPK戦に突入したが、GK中村一貴(3年)は「PKなら止める自信があった。PK戦になれば、チームに勝利をもたらす自信があった」と、土壇場の失点にも気落ちすることなく、むしろ気持ちを高ぶらせていた。

 ミスを取り返したい思いもあった。2失点目のシーンはCKの混戦からMF樋口拓海(3年)のシュートを一度は足でブロック。しかし、こぼれ球を拾われ、最後はMF加茂裕輝(3年)に押し込まれた。「自分の弱いところが出た」。脳裏をよぎったのは前日2日の米子北戦(1-0)。後半34分、こぼれ球に低い姿勢で突っ込んだ際、ボールを蹴ろうとした相手選手のキックが顔面に入り、左目の上を切った。

「昨日のこともあって、怖くて足から行ってしまった」。最初の樋口のシュートの場面で勇気を持って体で止めにいっていれば……。そんな後悔がPK戦に向かう守護神をより一層奮い立たせた。「小学校のときからPKは得意。高校の公式戦では今まで一度もなかったけど、小中のときはPK戦で負けた回数より勝った回数のほうが多い」。その自信は1人目のキッカーに逆を突かれても揺るがなかった。

「1本目は、慌てた部分もあって逆に動いてしまった。2本目からは構えとかも全部変えて、落ち着いていこうと思った」。後攻の佐野日大は1人目のDF梅澤崚(3年)が止められたが、直後に一条2人目の加茂を中村がストップ。さらに一条4人目のFW秋月健(3年)が中央を狙ったキックも「残っていた足にたまたま当たった」と叩き落とし、勝利を呼び込んだ。

 もともとはFWだったという中村がGKに転向したのは小学校4年生のとき。兄の圭吾(現・神奈川大3年)がGKになったときに「お前もやってみろ」と誘われたのがきっかけだった。両親ともに元バレーボール選手だったという体育一家で、兄・圭吾は190cmの長身GK。弟は176cmだが、「身長が低い分、ジャンプ力と反射神経が自分の強み」と、兄とは異なるスタイルを確立し、大舞台でPKを2本止めてみせた。

「GKは仲間のミスをカバーしたり、ピンチで止められる重要な役割。今はすごく楽しんでやっています」。ビッグセーブを連発した米子北戦に続いて勝利の立役者となり、佐野日大を過去最高タイのベスト8へ導いた中村。「(ベスト8は)一つの目標だったけど、歴史を塗り替えることがもっと大きな目標」。同校史上初の4強へ、5日の準々決勝・駒澤大高戦(フクアリ)もゴールにカギをかける。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)

(取材・文 西山紘平)

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