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高校選抜でも中心の青森山田MF住永主将、稀代のリーダーは地元・北海道で応援してくれる人たちのためにも大学経てプロに

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MF住永翔(青森山田高)は進学先の明治大を経て、プロ入りを目指す

[2.6 練習試合 日本高校選抜候補 3-5 桐蔭横浜大]
 
 2冠王者・青森山田高のリーダーは選手権のヒーローたちが集う日本高校選抜候補合宿でもリーダー、柱であり続けた。チームの攻守のバランスを取り、パスワークに顔を出して攻撃を組み立て、声で周りを動かしてボールを奪い取る。集合してまだ2日目のチームを可能な限りまとめて、引っ張った住永。青森山田の恩師でもある日本高校選抜・黒田剛監督に「住永翔がいるかどうかで全然違う」と言わしめるパフォーマンスだった。

「黒田監督がやりたいサッカー、一番こだわりたいことを一番知っているのは自分たち(青森山田の選手)だと思うし、それを共有することも自分たちの役割だと思う。いち早く吸収してもらえるように会話して伝えないといけない。監督のやるサッカーに慣れてもらえればいい。(青森山田がやってきた)守備の仕方だったり、今口うるさく言っているゴールを隠すことだったり、ペナ内に相手を入れさせない、走らせないというのは、(それぞれが)後々上がっていくためには個人のスキルとして必要になってくると思うので、吸収させていきたい」と、プレーでアピールするだけじゃなく、選手とスタッフの間に入って仲間たちに伝える役割を果たす意志を口にしていた。

 プレミアリーグと全国高校選手権で2冠を獲得。味方に対して強い口調で遠慮なく怒号を飛ばし、鼓舞し、チームを引き締める一方で、はしゃいでいい場面では率先して、誰よりもはしゃぐことができる。他の強豪校の指導者たちも認めるリーダーシップによって、青森山田を悲願の選手権初Vへ導くリーダーとなった。

だが、大学に進む上でそれは「過去の栄光」として切り離さなければならないと考えている。進学先の明治大は16年度の関東大学リーグ1部と総理大臣杯全日本大学トーナメント優勝チーム。試合に出るためにはどこよりも厳しい環境で突き抜けていくためには、高校時代の栄光をどこかで自信にすることはあったとしても、それに浸っている訳にはいかない。「今はもうフラットになったので、しっかりとまた新たな気持ちで何が何でも、這いつくばってでもトップチームに参加していきたい」と力を込めた。

 高校のチームメートではGK廣末陸とMF高橋壱晟がプロ入り。負けたくないという思いを持っている。自身は「大学4年間もっと脂の乗った状態でプロになりたい」と考えて進学を決めたが、将来のために大学1年目から勝負。「高校からプロへ行けなかった以上は大学4年間で結果残すしかないと思いましたし、自分は大学サッカーの中でも甘い環境ではない明治大学を選んだと思っている。ピッチの中では上下関係なくバッチバチやれる環境ですし、ピッチを離れればまた青森山田もそうだったんですけど先輩後輩という関係の中で上手くコミュニケーション取りながらできる。自分に合った環境だと思っている。学年関係なく試合に出てアピールをしていきたい」

 地元である北海道には自分のことを心から応援してくれる人たちがいる。全国高校選手権優勝直後の1月中旬には出身地である北海道三笠市に帰省。小学生の時に所属した三笠FCの後輩たちや、当時の指導者たちが開いてくれたセレモニーで祝福を受けた。「自分が育ってきた環境なので誇りに思っています。三笠市という小さな街なんですけど、自然豊かで人も温かいですし、自分が成長してきたのはいい環境だった」。その誇りに思っている地元の応援はパワーになってきた。それは今後のサッカー人生においても変わらない。

「自分を応援してくれる人たちが地元にいるからこそ生半可なプレーはできないと思いますし、青森山田に来た時もキツイことはあったんですけど、応援してくれる人たちのことを思い出して、『キツイとかこんなこと言ってられないな』と頭の中で思いながらサッカーをしていました。プロになって地元を活性化したいと思いますし、応援してくれる人のためにもプロになって、三笠市の中では初のJリーガーになりたいと思っている。それに一番近いのは自分だと思っているので、責任を持って、プロになりたいと思います」。

 日々全てを成長に繋げようと取り組むMFはこの高校選抜の活動も大学でのレギュラー奪取、活躍、そしてその先にあるプロ入りへ繋げる意欲だ。「常にアベレージ以上のプレーをして、高校選抜のメンバーに絶対に残って高校選抜で活動したいですし、日本一を取った後は世界で1位を取りたいと思っているので、そこは強く意志を持ってというか、責任持ってやりたいと思います」。目先の目標は日本高校選抜が欧州遠征で出場するデュッセルドルフ国際ユース大会での優勝。稀代のリーダーが新たなチームメートたちから刺激を受けながら、自身から強くなるために発信して全員で、世界で勝つチームを作る。

(取材・文 吉田太郎)
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