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[新人戦]全国で勝つために「中国チャンピオンにならないといけない」。立正大淞南が延長戦で聖光振り切る

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立正大淞南高が延長戦を制して決勝進出

[3.19 中国高校新人大会準決勝 聖光高 1-2(延長)立正大淞南高 山陽高G]

 19日、第9回中国高校サッカー新人大会準決勝で聖光高(山口3)と立正大淞南高(島根1)が激突。延長戦へもつれ込んだ一戦は延長前半10分にFW安野真央(新3年)が決勝PKを決めて立正大淞南が2-1で勝った。立正大淞南は20日の決勝で岡山学芸館高(岡山1)と戦う。

 先制パンチをヒットさせたのはインフルエンザの影響などによって10番FW神垣凌人(新3年)ら主力の半数を欠く聖光の方だった。5分、立正大淞南CB竹中響哉(新3年)の決定的なヘディングシュートをこの日体調不良から復帰したという聖光GK有福光太朗(新3年)がビッグセーブ。ここからのカウンターでMF松嶋辰之輔(新2年)が右サイドを駆け上がり、一人でエンドライン近くまで運んでからクロスを入れる。すると、中央でボールを受けたFW野呂颯馬(新3年)がゴール右隅へシュートを決めて聖光が先制した。
 
 相手の見事な一撃によって、立正大淞南は追う展開に。だが、野尻豪監督が「先制点は入るかどうか分からない。ウチが取ってもそう、相手に決められてもそう、それでも普通にやってしまうこと。先制点に関してはそれが気持ちの部分での約束事なので慌てることはなかった」と説明したように、チームがバタバタすることはなかった。そしてセットプレーで同点に追いつく。

 14分、立正大淞南はMF山口海都(新3年)の右CKをファーサイドの竹中が豪快に頭で決めて1-1。その後もMF福島颯斗(新3年)やMF松下昇太(新3年)、FW戸川エドワード亮(新3年)らが次々とドリブル突破やワンツーなどから中央突破を狙っていく。だが、疲労の影響もあって準々決勝からDFラインを入れ替えたという聖光はCB倉津英治(新3年)や、初先発の選手たち中心に対抗。簡単には突破を許さずに逆に攻め返して見せた。

 聖光の中で特に光っていたのがMF松嶋だ。右膝を負傷しているために準々決勝は欠場したという注目ドリブラー。スピードに乗った状態から細かく角度を変えてボールを運び、また挑戦心溢れる仕掛けを繰り返していたMFが右サイドの攻防戦で優位に立ち、自らシュートまで持ち込んでいく。また中盤で攻守両面において健闘していたMF山近真仁主将(新3年)や左サイドのレフティーMF山元司(新3年)がチャンスメークやシュートシーンに絡むなど、主力不在を感じさせない戦いぶりで強豪に対抗していた。

 聖光の山本秀和監督は「県大会も4、5人いなかった。逆にいなかったら20人が意識高くやれていた」。選手層の厚さを示した聖光に何度も止められながらも、立正大淞南は集中した中央攻撃。そして空いたサイドからのクロスが決定機に繋がった。

 聖光のMF松嶋が惜しいドリブルシュートを放った直後の14分、立正大淞南はFW衣川絢誠(新3年)のラストパスに飛び込んだ安野のスライディングシュートが左ポストを直撃。また得意のセットプレーなどから聖光ゴールを脅かす。

 聖光も後半半ば頃から、体調不良から回復してきた主力組を投入。本来のキレではなかったというものの、MF松田優成(新3年)が抜群のスピードで魅せるなど攻撃のバリエーションを増やしていた。それでも立正大淞南は野尻監督が「真ん中2人は本当に期待していますし、こっちも信頼している」という竹中とCB山田祐樹(新2年)が堅い守り。中央の攻略を許さない。

 熱戦は延長戦で決着がついた。1-1で突入した延長前半終了間際、立正大淞南は左サイドを縦に仕掛けたMF檜垣和志(新3年)がPKを獲得。これを安野が右足で右隅へ決めて勝ち越す。安野が「県外遠征とかではなかなか勝てていない。自分達に力ないのはみんなで自覚しているので全員で走って戦ってということをベースに淞南サッカーを貫いていきたい」と語っていたが、延長後半も抜群の活動量を発揮していたMF岩田大和(新3年)ら足が止まらなかった立正大淞南が聖光の反撃を振り切って決勝進出を決めた。

 山陰の雄、立正大淞南も16年度は全国で未勝利に終わっている。それだけに野尻監督は「『全国大会で勝ちたいんやったら中国チャンピオンにならないといけない』と言っている。こういう大会で勝ち切るのは自信になる。ただし、彼らにも言いましたけれど、『こういう試合乗り切ったのは勝ち方としては積み上がったと思うけれど、明日負けたら意味ないぞ』と」。選手たちももちろん、中国チャンピオンになって大会を終えることしか考えていない。決勝も勝利して必ず、タイトルを獲得する。

(取材・文 吉田太郎)

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