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[UAチャレンジカップ]スペイン遠征で「変わった」慶應義塾が強さ示して創造学園に勝利

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後半7分、慶應義塾高はFW島田雄大がPKを決めて2-0

[3.28 UAチャレンジカップ 創造学園高 0-2 慶應義塾高 いわきFCフィールド]

「革新的なサッカーイベントを通じ、ユース期において必要とされる様々な情報、知識を提供することで、世界に通用するサッカー選手を育成し、サッカー界繁栄の一助とする」という理念の下で行われている「アンダーアーマーチャレンジカップ 2017 SPRING」(福島県いわき市)は28日、大会2日目を行った。16年度全国高校選手権16強の創造学園高(長野)と初出場した16年度全国高校総体で1勝している慶應義塾高(神奈川)との一戦は、1-0で慶應義塾が勝利した。

 初のスペイン遠征が慶應義塾の変わるきっかけとなった。6泊8日の日程で行った遠征では日本人選手たち以上に技術レベルの高い選手やチームを目の当たりに。また、やるべきことが徹底できずにチーム状況が好転しない中、選手たちが「本気で」意見を言い合ういい機会となった。

 宿舎に戻って食事を摂り、その後深夜0時頃から1時までミーティングを行った日もある。FW板倉正明(新3年)は「みんなが本音を言い合って練習から抜く練習無く、本気で勝負にこだわっていこうとなって、そこから意識が変わってきた」。スペインで本当に危機感を感じた選手が本気でぶつかり合った結果、チームの雰囲気、サッカーは改善された。

 この日の創造学園戦はその強さを示す試合となった。だが、立ち上がりはMF永原史将(新2年)の飛び出しなどから創造学園がチャンスを作る。創造学園は「理想は山口蛍選手とか。守備は相手の肝になるところを潰すという感じでやっている」という1ボランチのMF塩原悠大主将(新3年)が守備範囲広く相手ボールをインターセプト。そして永原やMF丸山翔(新2年)が巧みにボールを引き出し、前を向いて仕掛けていった。

 だが、慶應義塾は大方貴裕監督が「前から行くところとブロック作って守るところの共通意識があったから良かった」と説明したように、守備ブロックをつくる部分と持ち味であるハイプレスとを上手く使い分けて相手の攻撃を封鎖する。特に3バックの中央に位置するDF酒井綜一郎主将(新3年)が別格の動きを見せてインターセプト連発。また、アピールしてBチームから昇格してきたというFW石内貴也(新2年)が献身的な動きでセカンドボールを拾えば、右DF長谷川友己(新3年)、左DF三輪晃大(新3年)もカバーリングや潰しの部分で貢献するなど、好守から正確なパスワークへと移っていた。

 前半29分、慶應義塾は右サイドの長谷川が斜めの好パスをボランチの司令塔MF平田賢汰(新3年)へ通すと、すぐさま平田がスルーパス。そして、ドリブルで仕掛けた板倉がカバーに来たDFをわずかに外して右足を振り抜く。この一撃がゴール右隅へ突き刺さって慶應義塾が先制した。

 慶應義塾はさらに後半7分、左サイドで相手DFのプレッシャーをいなしながらボールを運んだ板倉が、左外側のFW島田雄大(新2年)へパス。ドリブルで一気にPAへ切り込んだ島田がDFに倒されてPKを獲得する。このPKを島田が自ら右足で決めて2-0となった。

 創造学園は落胆の色濃い失点に。塩原も「失った時の切り替えだったり、点取られたあとや上手く行かなかった時の対応の仕方をやっていかないと勝てないと思っています」と指摘していたが、良い時間帯の勢いは薄れていた。創造学園は後半もいい形でボールを奪って攻撃に移ろうとしていたが、精度を欠くなど慶應義塾の守りを上回る攻撃をすることができない。一方の慶應義塾は終盤もMF眞木勇輝(新3年)が積極的な仕掛けで守備網を破るなど、好守から攻め続けて勝利した。

 今年の慶應義塾には「全ては選手権のために」というテーマがある。昨年は関東大会、全国高校総体に出場しているが、今年もそれを経験して、また高いレベルのチームになって冬を迎える意気込みだ。本格シーズン開幕前に本気で意識を変えられたことは大きなプラス材料。板倉は「一戦一戦、一つ一つの練習で負けないことにこだわって、課題出たらその場でみんなで指摘し合うことを意識している」。この日はボールの失い方が悪いシーンも幾度かあったが、酒井、平田、板倉の3本の柱を中心にポテンシャルを示したことも確か。今後も全員が意見しながら、こだわって、選手権で勝つチームを目指す。

(取材・文 吉田太郎)
アンダーアーマーチャレンジカップ2017 SPRING

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