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香川真司が最後に“雄叫び”を上げた意味とは?苦悩と歓喜の1年に迫る【海外日本人総括】

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表彰式で雄叫びを上げた香川真司

 海外で戦うサムライたちは2016-17シーズンをどのように過ごしたのか? 歓喜の瞬間を迎えた者、充実の日々を送った者、葛藤してもがき苦しんだ者……。彼らが過ごした1年を、改めて振り返る。

今季の目標:5シーズンぶりのリーグ2桁ゴール

結果:1ゴール6アシスト

採点:65点

■課題と収穫の入り交じるシーズン

 今季の香川真司のパフォーマンスは、希望を感じさせるものだった。前半戦は怪我での離脱があったとはいえ、もちろんリーグ戦21試合1ゴール6アシストという結果は満足のいくものではないし、昨季の9ゴール9アシストという成績を大きく下回ってしまった。

 しかし、出場機会を得られない苦しい時期でも下を向くことなく踏ん張り、チームが苦しいところで自身のクオリティを発揮。かつてドルトムントでリーグ2連覇を成し遂げたときとは役割が変わったが、当時のような躍動感溢れるプレーを見せた。レギュラー争いの激しいチームにおいて絶対的な存在になることはできなかったが、それでもシーズン最終戦のドイツ杯決勝で先発フル出場を果たしたことは大きな収穫だったと言えるだろう。

 今季はとにかく浮き沈みの連続だった。DFBポカール(ドイツ国内杯)初戦でスタメンに名を連ね、2ゴールを奪うとリーグ開幕戦でも先発。昨季のようにそのまま調子に乗っていくかと思いきや、代表戦で足首を痛めて次節を欠場するとチームの波に完全に乗り遅れてしまった。シャルケとのダービーで先発するなど徐々に出場時間が伸びていったが、その後はケガの影響もあって1か月ほど出番がなかった。

 実質的な消化試合となったUEFAチャンピオンズリーグ(欧州CL)のレギア・ワルシャワ戦では、先発&2ゴール1アシストで復活を期待させたが、9月の代表戦で痛めた足首が完治していなかったことが発表され、年末まで戦列を離れることに。年明けのブレーメン戦では先発フル出場を果たしたが、そこから1か月以上先発に入ることはなかった。

■訪れた転機、攻撃の中心に

 転機になったのは3月に行われたヘルタ・ベルリン戦だ。負傷したマルコ・ロイスに代わって先発に入った香川は、ピエール・エメリク・オーバメヤンのゴールをアシストするなど現地メディアを唸らせる活躍を見せた。試合には敗れたものの、久々に訪れた先発のチャンスを見事に活かしてみせた。出場機会が得られない間も、香川は常に練習で良いプレーができるように全力で取り組んでいた。実際、その手応えが香川にはあったし、「いい練習ができていたらそれが必ず自信になってピッチで表れると思う。練習でうまくできているから、チームに入れば必ずできるという強い自信もあります。2、3試合出られないだけですごいフラストレーションを感じたり、気持ち的な難しさであったり、いろんな感情はあるんですけど、良い練習ができるように試行してやるようにしています」と語っていた。

 シャルケとのダービーでもオーバメヤンの先制点をアシストしたが、この時期のドルトムントの攻撃はすべて香川から生み出されると言っても過言ではないほどだった。直後に行われたタイ戦でも重要な先制点を奪った。

 筋肉の張りを訴えバイエルンとの試合は欠場することになったものの、バス襲撃事件後に行われた欧州CL準々決勝第1戦モナコ戦では、1ゴール1アシストとチームの全得点に絡み、ショックを受けていたチームにおいて気を吐いた。

■ポカール決勝でも先発出場

 ロイスが戦列復帰するとトーマス・トゥヘル監督は前線のタレントを活かした戦いを選択した。そのため、DFBポカール準決勝バイエルン戦とホッフェンハイムとの上位対決では出場機会がなかったものの、シーズンラストの3試合ではいずれもフル出場した。とりわけ、ビッグゲームでは外されることが多かったことを考えると、ドイツ杯決勝で先発入りしたことの意味は大きい。後半の決定機を逸するなど攻撃面では印象を残せなかったが、前半はスライディングで相手のカウンターをストップするなど重要な試合で「戦える」選手であることを示した。

 ドルトムントの激しい競争の中で香川はもがき苦しみ、ひとつタフな選手になった。DFBポカール決勝後の表彰式でカップを掲げると、香川はテレビでも聴こえるくらい大きな雄たけびを挙げた。それは、タイ戦のゴール後、モナコ戦のゴール後でも目にした、気持ちを爆発させるような叫びだった。それこそが、今季の香川の戦いを象徴していた。

■移籍の可能性は?

50%

 トゥヘル監督の下で2年間プレーし、レギュラー争いが激しいことを考慮しても絶対的な存在になれないことが明らかになった。しかし、トゥヘル監督の解任が発表されたいまレギュラー争いは白紙となり、リスクを負ってでもドルトムントを離れる理由はなくなった。

文=山口裕平

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