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[MOM2155]三菱養和SCユースFW中村敬斗(2年)_U-17W杯も期待のエース。首位撃破のゴラッソ2発と守備の成長

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前半28分、三菱養和SCユースFW中村敬斗が右足FKを決めて先制!

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[7.8 高円宮杯プリンスリーグ関東第8節 三菱養和SCユース 2-0 前橋育英高 三菱養和会調布G]

 U-17W杯(10月6日開幕)の組み合わせが決まった翌日の試合で、U-17日本代表期待のストライカーがいずれもスーパーゴールと言える2発! 高校2年生ながらすでにFC東京、G大阪、千葉に練習参加するなどJクラブから熱視線を浴びる逸材、FW中村敬斗が磨いてきた武器、そして意識して取り組んできた課題の部分でも成長を示して、首位・前橋育英高撃破の主役となった。

 サイドで相手の守りを破るなどチームの突破口になっていた中村は前半28分、右中間で獲得したFKのボールをセット。クロスを上げるような立ち位置を取っていた中村に対し、前橋育英の意識、警戒心もそちらへ傾いていた。だが、本人はすでにGKのポジショニングを見てシュートをイメージしていたのだという。そして助走に入ると、右外側からゴール右隅へ落ちるシュート。前橋育英の選手だけでなく、会場中の意表を突くような一撃が見事に決まって先制点となった。

「最初、中へ上げようかなと思っていたらGKが(その方向へ)寄っていて。明らかにニア狙う感じだとGKも感づいちゃうじゃないですか。なので、わざと中に入れる立ち位置にいて、足だけで外を巻こうと思って蹴りました。完全に狙い通りですね」。同じようなシチュエーションからプロ選手が決めた映像を見ていたという中村は、それを実践。トレーニングで蹴り込んできたFKが「自信になりますね」というゴールになり、ホームの会場を大いに沸かせた。

 中村はさらに34分、もう一本“ゴラッソ”を決める。このゴールは課題として取り組んできた守備、セカンドボールの予測、そしてシュート技術の3つがハイレベルで組み合わさった本人も納得のゴールだった。

 中村は前線から右サイドタッチライン際、ハーフウェーラインまで戻ってディフェンス。そして相手ボールを絡め取ると、一気に前進して前方の右MF長谷川佳輝(3年)へパスを送る。長谷川がクロスまで持ち込む中で中村はゴール前には入らず、「セカンドを拾われるのも嫌だったし、あわよくば、こぼれてくればいいかなと思って」中央でセカンドボールを狙う選択。その予測通りにこぼれて来たボールをPA外側から右足ダイレクトで撃ち抜くと、ボールは弾丸ライナーでゴール左上隅に突き刺さった。

「凄いシュート」と振り返った一撃ももちろんだが、中村は何よりゴールまでの過程を喜んだ。「相手の前に行ってしっかり止まってボール奪い切るところ、そこでしっかり身体入れてボールを奪い取るところが課題と代表でされていた」という中村は、トレーニングから一回一回の守備を集中して行ってきたという。その成果が出て1対1の状況でボール奪取。増子亘彦監督もゴール以上に讃えていた守備からセカンドボールの予測を的中させ、連日打ち込んできたというシュートを狙い通りに決めるところまで、彼の才能、成長が示されたシーンだった。

 これから、まだまだトータル的に進化を遂げなければならない。後半は押し込まれる中で少ないチャンスを決定機に繋げていたが、クリアボールを上手く攻撃に変えるような連係が味方と取れず、守る時間が増えたことを課題として挙げていた。

 それでも、全くボールに触れられない時間帯もあったというほど、チーム全体の内容が悪く、本人もイライラしてしまっていた前節・千葉U-18戦から改善。また、クラブユース選手権関東予選での初戦敗退(対FC町田ゼルビアユース、0-2)を「正直、自分のせいだと思っているんですよ。自分がポスト2本当てて負けた。10番背負っている以上、自分が決めないといけない」と語るFWはエースの責任感も持って取り組んできた。そして表現したスーパーゴール2発と守備での貢献。チーム、個人としても結果の出た一日を中村は「良い日でしたね」と笑顔で振り返っていた。

 前日7日にはU-17W杯の組み合わせ抽選会のライブ中継を確認。昨年のAFC U-16選手権準決勝で敗れた相手でアジア王者でもあるイラクが「半端ないんですよ」と評したメキシコやイングランドと同グループに入ったのに対し、日本はフランス、ニューカレドニア、ホンジュラスと同グループに入った。U-17W杯での目標は決勝まで7試合を戦うこと。それだけに、「油断は絶対にしないですけど、一番いいグループじゃないですか」と前向きに捉えていた。

 U-17日本代表の柱と言える存在の一人だが、「サッカー人生の分岐点になる」戦いへ出場するために、中村はチームで結果を残し続けることを誓う。「良い準備して、チームも疎かにはしたくないので、チームで結果を残すこと。そうすれば自ずと代表にも選ばれると思う」。進路にも注目集まる“街クラブの逸材ストライカー”が世界相手にもできることを増やして、大舞台でこの日のような鮮烈ゴールを決める。

(取材・文 吉田太郎)
●2017 プリンスリーグ関東

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