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広島・城福監督が上を目指す高校生にメッセージ。「やり続けた子が最後出てくる」

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サンフレッチェ広島の城福浩監督が高校生たちにアドバイス

 “史上最速選手”を育成するためのプレミアムクリニック「NIKE ACADEMY MERCURIAL MASTERCLASS」(全4回)を今年2月から受講したFW和田育(阪南大高)とSB高木大輝(京都橘高)の2人が5月28日と29日の2日間、クリニック最終回としてJ1で首位を走るサンフレッチェ広島トップチームのトレーニングに参加。練習後、広島の城福浩監督に、彼らの印象と高校生が成長するためのヒントを聞いた。

―2日間の彼らの印象を教えて下さい。
城福監督:「今の若い子は上手いなと思いました。技術がしっかりしているし、最初はスピードに少し戸惑ったと思うんですけれども、2日間の中で慣れていく良さもあったので、基礎的なところがしっかりしている印象です」

―良かった部分と悪かった部分を。
城福監督:「大事なことは普段は今の環境と違うと思うので、自分のチームに戻った時に2日間の環境を忘れずにやれるかだと思うんですよ。だから、それをどういう風に忘れずにやるかは自分が試されていることです。多分、彼らは(チームに戻ると)やれちゃうと思います。でも、そこに妥協せずに同じイメージを持ってやることができるか。同じポゼッションの練習でも、ゲーム形式でも、どこが良い悪いというよりも、ここで経験したことを持ち続けてやれれば、若いからレベルが高くなっていくと思います。僕もU-17代表の監督をやっていた時に、マリノスのユースとかレッズのユースの子というのは周りのレベルが高いけれど、そうじゃないところから来た子が何で伸びてくるのかというと、代表のトレーニングを普段からイメージしてやれているかどうかなんですよ。そういう子は残っていったし、彼ら(和田と高木)もそういう経験を今回したと思うからね。そのイメージをどういう風に持って日頃のトレーニングをやるか、これからが大事」

―高校時代の柿谷選手たちをご覧になっているかと思いますが、伸びてくる選手の要素は日常にあった。
城福監督:「そうですね。日頃、周りに上手い選手が揃っていて、そうせざるを得ない状況に身をおけるのであればいいと思うんですけれども、自分がちょっと突出している状況の時に、どれだけ自分を厳しい目で見られるかが大事だと思います」

―2人にはこだわってやってもらいたい。
「そうですね。ちょっと慣れたらやれている部分があるし、自信を持つところとやれなかったところはしっかりと思い出しながらやり続けられることができるかだと思います」

―今回、テーマがスピードで「史上最速選手を育成して行こう」と。走るだけでなく、判断などスピードの部分で出せていた部分はありましたか?
「2人とも、ターンとか、凄く速いんですよ。くっと向いて、パンと前向いて次にプレーするとか速いし、割と狭いなというところでも、そういうプレーができているところもあった。地上の技術についてはしっかりとしているなと思うところがあったし、もちろん元々のスピードも2人はある方だと思うので、それが上手く技術と合わさっていけばいい。あとサッカーは、今日もやったけれども、半分はボールが浮いているから。その時にどれだけ周りを見ながら技術を発揮できるかというところも、自分で鍛えていくこと。色々なシチュエーションがあるけれど、空中に浮いているボールを自分の一番得意な形に持っていって次のプレーを出せれば、よりスピードが活きてくる。基本的な技術が高まれば、スピードはもっと活きてくると思う。自分の思うようにボールが止まらなければ、いくらスピードがあってもその分、遅れてしまう。ゴロは多分できていると思うけれども、浮いているボールもできるようになってほしい」

―高校生へ向けたメッセージを。
「日本のいいところは色々なところから選手が出てくる。環境にかかわらず出てくるのは、Jの下部組織だけでなく、いわゆる高体連にも色々な選手がいるのは日本の強みだし、その競争の中で誰が最後一伸びしてくるかというと、いかに普段から高い意識を持っているか。やり続けた子が最後出てくると思う。そういう意識を高く持ってもらえれば、今、スカウトやトレセンの方が色々なところで見ている。高い基準を持ってやり続けることをみんなが意識してくれれば、レベルはもっと上がっていくと思うし、今の若い子は上手い。技術は間違いなく上がっていますから、その活かし方とか、自分は(レベルが)高いと思っていてもまだ高くしようと思えるかだと思う」

―。FWは得点とか大事だと思うんですけれども、得点以外でこれだけは大事にしておかないといけないことは?(和田育)
「得点は取れないよりは絶対に取れた方がいい訳だ。その自分のストロングを磨くために、シュートを練習するのか、その前のコントロールを練習するのか、その前のオフ・ザ・ボールの動きをイメージするのか、あるいはボールの動き直しを何回もできるようなコンディションを作るのか、やることはいっぱいある。自己評価をして、何をやるべきかちゃんと自分で作り上げていくことが大事。そういうことをしっかりできる選手が岡崎慎司だったりする。彼は特別に何か凄い選手という訳ではなく、自分の足りないことをちゃんと整理して積み上げている。すると、どうなるかというと、この試合は凄いけれども、この試合はどうなるか分からないとか、この試合消えているなという波がなくなっていく。そういうことが凄く大事だと思う。常にやるべきことを色々な側面から見ること。そこが分からなかったら、『今日、自分はいいボールが来なかったから点が取れなかった』、で終わってしまう。でも、色々な視点を持っていれば、自分の呼び込みがどうだったのか、回数がどうだったのか、悪いボールでもそれをコントロールする技術はどうだったのか、と課題が見えてくる」

―自分のチームの成績があまり良くなくて、そういう時、どういう風に雰囲気作りを心掛けているか教えてください。(高木大輝)
「どういうチームか、どのようなパーソナリティか分からないけれども、まず背中で引っ張っていくような姿勢を見せること。単純な練習でも何でも、中心選手が一生懸命やっていればみんな付いてくるし、そのようにまずは背中で見せるということ。そして、今の若い子の集団は良く分からないけれども、言いにくいことをしっかりと言える間柄になること。『オマエやっていないじゃん』、と言うのは自分がやっていないと言えないでしょう。だから、それを言うことは自分にとっても責任が出てくる。言うとか、言われるとかが普通の集団になっていった方がいい。自分も言われるのが嫌になって、お互いに遠慮し合う集団だとあまり良い集団にはならない。あとは他に上手い集団と、そうじゃない集団があるとする。上手い集団の中の1人は11分の1人の仕事をすれば良い。でも、そうじゃない集団の中にいるということは11分の5くらい仕事しなければ勝てないでしょう? どっちが伸びるかというと後者だからね。自分が4、5人分背負ってこの試合勝たせに行くとなったら攻守に両方やらないといけない。この方が伸びるから、そのつもりでやると良いと思う」

(取材・文 吉田太郎)

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