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[戦評]振り払われた悪夢の再現(東京Vvs湘南)

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[5.20 J2第16節 東京V1-0湘南 国立競技場]

 東京Vが自滅寸前で踏みとどまった。京都とのアウェイ戦(5月6日)で連敗をストップしてから初となるホーム戦を迎えた東京Vは、現在2連勝中で6位に位置している湘南と対戦。4月15日に平塚で対戦した際は、押し気味に試合を進めながらも後半に立て続けに退場者を出し、その後3点を奪われて敗れている。
 
 この日、3-5-2の新システムを実戦投入した東京Vは序盤からエースFWフッキ(20)に右のMF福田健介(22)と左MF服部年宏(33)の両サイドが攻撃に絡み、中央と外を使い分けたリズムのいい攻撃を展開する。中盤の運動量も多くセカンドボールを支配した東京Vは、30分にフッキが個人技で抜け出し決定機をつくるなど、相手を完全に圧倒していた。だが、38分に浮き球での競り合いで、相手DFに体ごとぶつかっていった福田が2枚目の警告を受け退場。さらに後半10分までに計4人が警告を受けるなど、序々にリズムを失っていく。運動量も後半25分頃からガクンと落ち、湘南に何度も決定機をつくられる様になった。
 好ゲームを展開しながら退場者を出して敗れた前回の悪夢がダブりかけた東京V。だが、苦しい試合の流れを一撃で自らに傾けた。後半37分、左サイドでボールを受けたフッキがシュート性のクロスをゴール前に入れる。すると1分前にピッチに立ったばかりのMF吉武剛(25)が右足で押し込み、先制。これがファーストタッチだった吉武は「(数的不利の中で)選手1人1人がみんな粘り強く戦っていた。みんなより運動量多くいこうと思っていた。ゴールはフッキ様々です」と千金弾となった今季初ゴールを喜んだ。
 東京Vはベンチから全員が飛び出して喜んだ1点を守り抜いて勝ち点3を奪取。服部は「前回の湘南戦は9人で負けたけど、10人ならなんとかなるという話をしていた。この勝利は自信になる」と口にした。またラモス瑠偉監督(50)は「選手は最後まで集中してやってくれた。パーフェクトだった」とイレブンを絶賛。自滅して勝ち点を逃す危機の寸前で勝利をもぎ取った。トンネルの入り口で踏みとどまった。まだ課題が多いことは確かだが、3-5-2の新システムが見せた好内容と苦しい試合を制した粘り強さ。東京Vがこれからさらに上昇する、そして“変わる”きっかけをホームでつかんだ。

 (取材・文 吉田太郎)
<写真は苦戦を乗り越えてつかんだ白星を喜ぶ東京Vイレブン>

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