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[新人戦]昨年はプリンス未勝利、県内無冠。苦難の時期にも腐らず、「光が見えるまでやり続けた」鹿児島城西が九州制覇!!

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鹿児島城西高が8年ぶりに九州新人大会制覇!

[2.19 九州高校新人大会決勝 鹿児島城西高 1-1(PK5-4)大津高 大津町運動公園球技場]

 鹿児島城西が8年ぶりV! 平成30年度第40回九州高校(U-17)サッカー大会(九州高校サッカー新人大会)は19日、決勝戦を行い、大会連覇を狙う大津高(熊本1)と鹿児島城西高(鹿児島1)が対戦。1-1で突入したPK戦の末、5-4で勝った鹿児島城西が8年ぶり2回目の優勝を果たした。

 過去2年間は県内無冠。特に現2年生が先発の大半を占めていた昨年のプリンスリーグでは鳥栖U-18に1試合で16ゴールを奪われるなど、鹿児島城西は2分16敗、総得点9、総失点98という成績で最下位降格に終わっている。

 それでも、最上級生となった彼らは、1月の県新人戦で3度先制される苦しい戦いを試合ごとに成長しながら勝ち抜いて鹿児島タイトルを奪還。そして、九州大会でも戦いながら成長を遂げ、決勝トーナメントでは今年プリンスリーグ九州で戦うことのできない日章学園高(宮崎1)と筑陽学園高(福岡2)に勝利し、決勝ではプレミアリーグ勢の大津も下して「城西は強い」と示すことに成功した。

 決勝戦は強い雨の影響でピッチ中央に水たまりもできる悪コンディション。パスが思うように繋がらない中で、ともにロングボールを活用しながらの割り切った攻撃でゴールを目指しあった。

 先制したのは大津だった。前半10分、MF佐藤悠平(2年)の右足FKのこぼれ球に右サイドで反応したMF藤井瑛斗(2年)がクロス。これをCB立野航海(2年)が頭でゴール右隅にねじ込んだ。大津は近隣の同校から同級生たちが応援に駆けつける中での決勝戦。雨中での応援を楽しみながら、大声援を上げる同級生をゴールで大いに沸かせた。

 この後、試合は拮抗。大津はボールへのアプローチが速く、簡単には前線にボールを入れさせない。鹿児島城西は右クロスを左WB飯野修司(2年)が競り勝ち、ゴール前のMF山縣聖大(2年)にボールが入るシーンもあったが、なかなかチャンスの数を増やすことができなかった。

 後半、鹿児島城西はトップ下の山縣を前線へ移して前への圧力を強める。前線で宮城が健闘し、飯野が非常に力強い動きで競り合いを制していた。また、1ボランチのMF桑原滉(1年)がセカンドボールを拾う部分、相手を外してからボールを動かす部分などで存在感。そして、セットプレーを増やすなど、相手にプレッシャーをかけ続けた鹿児島城西が同点ゴールを奪う。

 後半20分、鹿児島城西は連続でCKのチャンス。左CKをMF北條真汰主将(2年)が右足でゴール前に入れると、こぼれ球を交代出場のMF今福晃星(2年)が右足でゴール右隅に決めた。

 追いつかれた大津は、MF樋口堅大主将(2年)やFW半代将都(1年)がスペースを突こうとするが、鹿児島城西は新田祐輔監督が「この大会で池田、田島、山下は本当に良くなったと思います」と評したDF池田真太朗(2年)、DF田島伊霧稀(2年)、DF山下玲(2年)の3バックが、安定。得点を許さない。その後スコアは動かず、後半終了。優勝を懸けたPK戦へ突入した。

 PK戦は互いに4人目まで成功。そして5人目、先攻・鹿児島城西の田島が左足で決めたのに対し、大津は準決勝2得点の樋口の右足シュートが枠上に外れてしまう。この瞬間、8年ぶりの優勝を決めた鹿児島城西イレブンが喜びを爆発。昨年、悔しい思いを続けてきた選手たちに対し、新田監督は「この子たちが一番悔しかったと思う。だからこそ、今大会嬉しかったと思います」と笑顔の選手たちに目を細めていた。

 主将の北條は昨年のプリンスリーグは大量失点、敗戦が続いて精神的にキツかったことを明かす。「でも、誰よりもキツかったと思う監督さんが負けた次の日でも、ある時は目が充血している時もあったんですけれども、そんな中でも『ここで腐るな』『いつか光が見えるまでやり続けることが大事』とずっと言われていた。去年負けたものを積み上げてきて勝ちに繋げることができた」と胸を張る。新田監督は昨年の新人戦から名将・小久保悟監督(現総監督)の後を継いで指揮。選手、コーチ陣ともに腐らず、成長するために努力し続けたことが一つ結果に結びついた。

 FW大迫勇也を擁した08年度選手権で全国準V。09年度から11年度まで九州新人大会で3年連続決勝進出し、14年度から16年度まで選手権予選3連覇を果たすなど「強い城西」を取り戻すための第一歩。やらなければならないことは攻撃も、守備もまだまだある。それでも、「今の世間の人たちは、『城西は弱い』という印象があるかもしれない。でも、『そうじゃない』と。自分も城西が強いと思って入ってきたし、名門だしこのままじゃダメだという気持ちをみんな持っている」(北條)という鹿児島城西が、この優勝に満足することなく、リーグ戦も含めた鹿児島4冠、日本一へ勝ち続ける。

(取材・文 吉田太郎)

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