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“内弁慶”続く意地の日韓ライバル対決…全日本大学選抜は延長で韓国大学選抜に逆転負け

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前半10分にFW旗手怜央の得点で宣誓した全日本大学選抜だったが…

 今夏にユニバーシアード競技大会(2019/ナポリ)を控えた全日本大学選抜が全韓国大学選抜と戦う、『第16回DENSO CUP SOCCER 大学日韓定期戦』が3月17日、韓国の統営市で行われた。永遠のライバル・韓国相手とあって、これまでの戦績は7勝6敗2分とほぼ互角。ともにホームでは負け無しとなっている。
 
 全日本大学選抜は『デンソーカップチャレンジサッカー 堺大会』を経てチームを再編成し、3月6日から約10日間にわたるアメリカキャンプを敢行。アメリカではUCLAなど全米強豪大学相手のトレーニングマッチに4戦4勝。なかでも今大会から全日本大学選抜入りした関西リーグ得点王のFW林大地(大阪体育大3年)が5ゴール、主将のFW旗手怜央(順天堂大3年/川崎フロンターレ内定)とMF三笘薫(筑波大3年/川崎フロンターレ内定)がそれぞれ4ゴール挙げるなど、前線の活躍が光った。

 日韓戦では、好調な林と旗手の2トップをスタメンに起用。両サイドの右を『デンチャレ堺大会』でも攻撃の起点となったMF紺野和也(法政大3年/FC東京内定)とMF森下龍矢(明治大3年)、中盤の底には初の全日本入りとなったMF明本考浩(国士舘大3年)とMF河原創(福岡大3年)、ディフェンスラインは右からDF山原怜音(筑波大1年)、DF本村武揚(流通経済大3年)、DF田中駿汰(大阪体育大3年)、DF中村帆高(明治大3年)が並び、U-22代表入りが発表されたGKオビ・パウエル・オビンナ(流通経済大)がゴールを守った。
 
 試合は早い時間に動いた。立ち上がりから、186センチの長身FWイ・グンヘにボールを集める韓国に苦戦していた全日本だったが、GKオビを中心とした堅守でしのぐと素早い切り替えでチャンスをつくる。10分、右サイドの紺野が得意のドリブルで突破をはかると、そのまま前線にスルーパス。「前半のはじめのほうだったので、(紺野)和也がボールを持ったら相手の裏を狙おうと思っていた」という旗手がこれに反応。「GKの状況を見て」ニアに突き刺したシュートがゴールネットを揺らし、全日本が先制点を挙げる。

 その後も全日本は紺野を中心としたサイドからの攻撃で韓国に揺さぶりをかけるが、次第に韓国にボールを奪われる回数が増えてしまう。「平均身長は韓国のほうが上。セカンドボールで勝負していても分が悪い。どこかでボールを落ち着かせて、つなぎたかった」(松本直也監督)が、落ち着かせどころを見つけられないまま、42分には相手にFKを与えてしまう。この攻撃はしのいだものの、その流れからの左CKを、キン・インギュンが頭で押し込み韓国が同点に追いつく。前半終盤の失点で、試合は振り出しに戻ってしまった。

 後半に入ると韓国はますます攻勢を強め、キム・ホらが決定的なチャンスをたびたび迎える。センターバックの本村、GKのオビの好判断で失点こそ免れたものの、突破口を見つけたい全日本は後半10分、林に代えてU-22代表にも選ばれたエースFW上田綺世(法政大2年/鹿島アントラーズ内定)を投入。さらに同28分には、森下に代えてMF金子拓郎(日本大3年/北海道コンサドーレ札幌内定)をピッチに送り出す。「ふたりには勝負どころで出すと言っていた」(松本監督)との期待に応え、出場早々にチャンスを作ったのは金子だった。右サイドからドリブルで仕掛けるチャンスを演出。旗手、上田、紺野らがゴール前に迫るが、なかなかゴールまではいたらない。逆に同33分には韓国にカウンターを許し、同35分にはフリーでシュートを打たせるなど、安易なミスからピンチを招くことも。全日本も同37分に紺野のクロスに上田がダイレクトで合わせるが、シュートはバーの上。結局、両チーム決定機を決めきれないまま、試合は15分ハーフの延長戦にもつれこむこととなった。
 
 全日本は後半終了間際にMFイサカ・ゼイン(桐蔭横浜大3年)、延長開始時にMF橘田健人(桐蔭横浜大2年)を投入。延長前半14分にはペナルティエリアに侵入した左サイドバックの山原怜音が相手DFに倒されるが、主審の笛は鳴らず。逆に延長後半開始直後の2分、交代出場したばかりのDF高木友也(法政大2年)が韓国のFWをペナルティエリア前で倒してしまい、FKを献上。これをキム・ミンジュンが直接ゴール左隅に決めて韓国が追加点。2-1と逆転に成功する。全日本はその後、怪我のため出場時間に制限のあったMF児玉駿斗(東海学園大2年/名古屋グランパス内定)をピッチに送り出すが、試合の流れを変えるまでにはいたらない。終了間際には、高木からのクロスに上田が反応するも、これはオフサイド。そのまま2-1で全韓國大學選抜が逆転勝利を収めた。
 
 試合後、松本監督は「悔しさしかない」ときっぱり。セットプレーからの2失点という負け方は、2017年(前回アウェー)のときとまるで同じだ。「セットプレー2発での敗戦。注意するよう伝えてきたが」とは言うものの、韓国の“伝家の宝刀”にまたもや屈することとなった。

「チャージの基準が曖昧で、あれだけファウルをとられるとなかなかリズムは作れない」とアウェーならではのジャッジに不満気な松本監督だが「前半はシュートチャンスも多かった。あそこで決められなかったことが問題」とも。

 この日韓戦では大学の関係で、アメリカキャンプで好調だった三笘をはじめ高嶺朋樹、山川哲史が不在という不利はあったものの、「後半や延長戦のような展開の中で、アタッカーがどういうふうに仕掛けて点を取るのか、もう少し見定めが必要」と語った。

 奇しくも、先制しながら2-1で逆転負けを喫するのはこれで3回目。2015年、2017年と惜敗を喫して“3度目の正直”を狙った今大会だったが、結果は“2度あることは3度ある”に。とはいえ、本村や明本、河原などの活躍で「選手層の厚さが出てきたことは収穫」と松本監督。この悔しさを、夏のユニバーへのバネとしたい。

(取材・文 飯嶋玲子)

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