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大宮U18MF柴山昌也が描く未来予想図。世界が“Masaya Shibayama”を知るその日まで

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大宮アルディージャU18の“メッシ”MF柴山昌也(写真協力=大宮アルディージャ)

[2020シーズンへ向けて](※大宮アルディージャの協力により、オンライン取材をさせて頂いています)

 最近ではその男の名前を、憧れとして挙げるプレイヤーも一時期よりは少なくなってきたが、それでも一貫して口にし続けている。「サッカーを始めた時から好きな選手はメッシで、ずっと憧れている所はあります。群馬の時はずっと『メッシ、メッシ』と言われていたので、ここからどんどんそれも広げていきたいと思います」。ならば、あえてその表現を使いたい。今年から10番を託された“アルディージャのメッシ”。柴山昌也(大宮アルディージャU18、3年)は世界へとはばたく未来予想図へ、鮮やかな色を力強く塗り始めている。

 元々は群馬県出身。高崎FC中川でプレーしていた左利きの小学生は、小柏剛(現・明治大)や奥抜侃志(現・大宮)を輩出したファナティコスの監督と、自チームのコーチが繋がっていた縁もあり、Jリーグの下部組織入団を視野に入れ始める。「通える範囲でということは家族の中で話していた中で、自分たちの年代はアルディージャが強いと聞いていたので、セレクションに行かせてもらって、入団許可が出てからは、もうすぐ決めました」。

 中学時代は群馬から毎日電車でグラウンドまで通う日々。「学校が4時に終わって、そこからお母さんに迎えに来てもらって、4時40分くらいの新幹線に乗って通っていました。帰りも自分はゴハンを食べるのが凄く遅くて(笑)、向こうの食事会場を出るのが10時ぐらいだったので、家に着くのは12時前で結構大変でした」。ただ、その圧倒的な才能をクラブが手放すわけもない。当然のようにユースへと昇格し、今はチームメイト全員と寮生活を送っている。

 昨シーズンはケガが長引き、高円宮杯プレミアリーグEASTデビューは9月までずれ込んだが、春先からクラブ関係者からは「ウチにとんでもないレフティがいるので、楽しみにしていてください」と何度も聞かされていた。初見の印象は、まさにメッシ。切れ味鋭いドリブルで相手を翻弄したかと思えば、センス溢れるパスで決定機を演出する。“とんでもないレフティ”の触れ込みは伊達ではなかった。

 圧巻は後期の浦和レッズユース戦。ストライカー顔負けのプルアウェイから抜け出し、鈴木彩艶(現3年)の守るゴールを左足で撃ち抜くと、さらに絶妙のノールックパスでアシストも記録。復帰3試合目にして、ダービー勝利の立役者となる。「今は『去年の1年があって良かったな』と思えていて、ケガをしてサッカーできなかった時に、あれほど苦しい想いはなかったので、より心からサッカーが楽しめるようになっています」。苦しさを力に変えられる者は強い。

 多くの出会いに恵まれてきた柴山は、中でもある指導者から多くの影響を受けてきたと語る。「中1から指導してもらっている中谷(優介)コーチは、自分のサッカーに対する捉え方を変えてくれたなと思っていて、ジュニアユース、ユースと6年間ずっと一緒にいさせてもらって、本当にお世話になっています」。

「自分は凄く負けず嫌いなので、何か悔しいことがあるたびに泣いてしまうタイプなんですけど、その時に『今じゃない、今じゃない』っていつも声を掛けてくれて。その時の自分にはよくわからなかったんですけど、それは印象に残っています」。“今”を実感したからこそ、ようやく“今じゃない”の意味も理解することができた。アルディージャでの6年間は、自らの人生をも豊かにしてくれている。

 意識している同年代は、ジュニアユース時代のチームメイトでもあり、昨年から昌平高のキャプテンを務めている須藤直輝(3年)だ。「お互いにライバル意識はずっと昔からありましたし、今も見えない所で直輝も頑張っていると思うので、いつも頑張るための力をもらっている存在です。プレーは少し似た部分もあるんですけど、彼はメンタル面が凄いというか、サッカーだけじゃない強さというのは感じます」。2年前の国体で共に日本一を経験した2人が、それぞれの立場で再び頂上を狙っていることは言うまでもない。

 未来予想図には具体的なイメージが、もうはっきりと描かれている。「まず今年はプロに昇格して、23歳までにJ1で活躍したいですし、その後はスペインで活躍したいと考えていて、今もスペイン語の語学勉強をやっています。最後はバルセロナに行くのが小さい頃からの夢なので、最初はバルセロナじゃなくても、見てもらえる環境に行けたらいいなと思っていますね」。そのために、メッシと同じ10番を背負った2020年の自身に課すハードルは、決して低くない。

「中学生から今までずっとアルディージャにお世話になっていて、このチームだからこそ、ここまで来られたと感じていますし、本当に結果で恩返ししたいとずっと思っていたので、今年はプレミア優勝という形で、チームに貢献したいですし、個人としては二桁得点を獲りたいです。それに、トップチームも日程が詰まってきて大変になるはずなので、トップの力にもなれるようにしていきたいなと、自分では考えています」。

 ドリブルの自主練では今まで5、6個を並べていたコーンを20個に増やし、そこを3往復するトレーニングを繰り返すことで、“後半のプレー精度向上”という課題克服に向け、黙々と汗を流している。才能と努力を掛け合わせた可能性は無限大。それを最大値で繰り返した先に訪れるであろう、世界が“Masaya Shibayama”を知る日も、そう遠い未来のことではないかもしれない。

 今年から10番を託された“アルディージャのメッシ”。柴山昌也は既に世界へとはばたく未来予想図へ、鮮やかな色を力強く塗り始めている。


■執筆者紹介:
土屋雅史
「(株)ジェイ・スポーツに勤務。群馬県立高崎高3年時にはインターハイで全国ベスト8に入り、大会優秀選手に選出。著書に「メッシはマラドーナを超えられるか」(亘崇詞氏との共著・中公新書ラクレ)。」

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