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柴崎岳が振り返るカメルーン戦「ビルドアップが淡白だった」「先に監督がアクションしてくれた」

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日本代表MF柴崎岳(レガネス)

 森保ジャパンにとって2020年初陣となったカメルーン戦から一夜明け、日本代表MF柴崎岳(レガネス)が0-0に終わった試合を振り返った。

 オンライン取材の冒頭では約11か月ぶりとなる日本代表戦に感慨も語った柴崎。「約1年ぶりに日本代表のピッチで試合ができて、個人的には楽しかった。この状況下で試合を届けられたのは一つ、この世界情勢の中でポジティブなニュースになった思う」。その後、主題は試合のディテールに移っていった。

 カメルーン戦における大きなトピックはまず、前半4-2-3-1、後半3-4-2-1という二つのシステムを使い分けたことだった。前半は相手が繰り出す最終ライン3枚+アンカー1枚でのビルドアップに対し、プレスがハマらない時間帯が長く、森保一監督がハーフタイムに布陣変更を決断。その結果、交代投入されたMF伊東純也の働きもあり、後半は優位に試合を進められるようになった。

 柴崎もこの決断を前向きに受け止めていたという。「後半はフォーメーションを変えて、ある程度、相手に対して守備面で圧力をかけやすくなった。僕もハーフタイムに入った時にどう話そうかなと思っていたら、先に監督がアクションしてくれたので、それだったらいいかなというふうに思った」と振り返った。

 一方、課題として残ったのは前半の試合運びだった。

「奪った後のビルドアップの部分が非常に淡白だったと感じた。それによって守備に追われる時間が長くなった。ボールを奪った後のアクションや、ビルドアップがいまいちチームとして意識に欠けていた。やっていても感じたし、あとから見返していてもやっぱりそうだったなと感じた。個人的にはそういったところで、横パスとか後ろにサポートすることを意識したけど、なかなかそういった時間をつくりきれなかった」。

 攻撃面でも良さを出し切れなかった日本は、一方的にボールを握られる展開が続いた。

 この日のように、後ろに人数を割いてビルドアップをしてくる相手に対してプレスがハマらず、ズルズルと侵入を許してしまうという展開は森保ジャパンの頻出場面。アジア杯決勝のカタール戦(●1-3)を筆頭に、カタールW杯アジア2次予選のタジキスタン戦(○3-0)、キルギス戦(○2-0)、昨年11月のキリンチャレンジ杯ベネズエラ戦(●1-4)と、大敗や苦戦に結びついた経験がある。

 もっとも、カメルーン戦では一定のリスク管理のもとにこの現象が起きていたという。「仮にディフェンス面で相手にプレッシャーをうまくかけられたなという時でも、球際の部分とか、相手に近くなった部分で相手が上回ってきて、一人かわされて他が空いてくるところを使われたりしていた」。対人戦での力関係をそう捉えていたという柴崎は、東京五輪世代のMF中山雄太と組んだダブルボランチの位置関係を次のように振り返った。

「僕らのポジションがあまりひっくり返らないようにすることを雄太とも話していたし、最悪前線が置いていかれていたとしても、危ない時は4-2(4バックとダブルボランチ)で守りに行くという意識を持っていた。二人とも簡単に外されて、後ろの4枚でカウンターを受けるという場面は避けたかったので、僕らのところはそこまで追いかけすぎず、真ん中のポジションを埋めながらということを意識しながらやった」。

 これまで複数失点を重ねた試合では、中盤と前線のプレスが一気に空転し、スピードに乗った相手の攻撃を4バックだけで受け止めるという形も見られていたが、この日はそうした展開を防止。自陣への侵入を一定程度は許すため、守備陣が踏ん張る必要性は依然として出てくるものの、DF吉田麻也、DF冨安健洋の奮闘もあって「そこまで決定的な仕事をさせることはなかったし、最後の最後で止め切れていた」(柴崎)。結果、劣勢の45分間を無失点で終えられた。

 さらに前半の中ごろ以降は「そういった(中央を埋める)意識が強すぎて、ちょっと前にかからなかった部分もある」と認識した柴崎と中山が的確なタイミングでボールを奪いに行く場面も見られるようになり、前線プレスの空転も徐々に解消。その結果として攻撃でも見せ場が増え、相手と入れ替わってスペースに潜り込んだFW大迫勇也のミドルや、柴崎を起点とした攻撃から南野のシュートが生まれるなど、惜しいシーンも次々につくっていた。

 前半の終わりぎわの時間帯について「決定的とまでは行かなくてもある程度のディテールを押さえればゴールを決める場面に持っていけたのは事実」と振り返った柴崎は「前線からの追い方で(相手のパスコースを)限定的にしてくれて、ボランチの一人が少し前目でダイアゴナルなポジションを取れた時にそういう場面をつくることができていた」と立ち位置の分析も加えた。

 2018年7月の新体制発足時に森保監督が掲げ、その後も一貫してチームの主要テーマとなっている「対応力と臨機応変さ」。まだまだ道半ばであることは言うまでもないが、ハーフタイムに指揮官が決断したシステム変更も含め、カメルーン戦でも着実な取り組みが進んでいたことは間違いなさそうだ。

(取材・文 竹内達也)

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