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[蹴活生ガイド2021(関西)]サッカーと向き合い、総合力手にした京都産業大GK田中颯。今年も成長速度を緩めない

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京都産業大GK田中颯

「自分が取り組んでいることはチームを勝たせることから一切、ズレることはない。日々、自分と向き合って取り組んでいることが今日報われなくても、いつかの勝ちに繋がっていくと信じてやっている」。言葉からも分かる通り、京都産業大の守護神を務めるGK田中颯(4年=東京Vユース)はサッカーと真剣に向き合う実直な男だ。安定感のあるシュートセーブに加え、ビルドアップの質も高い。コーチングでもチームに貢献できる完成度の高い選手だ。

 そうした彼の真面目な性格は、歩んできたサッカー人生からもよく分かる。高校時代に所属した東京Vユースには、試合に出る可能性が低い1年生GKが、支部チームである「ヴェルディSS相模原ユース」に登録する仕組みがあった。平日の練習は東京V、週末の試合は相模原で出場するシステムだ。1年目からしっかり試合経験を積めたこと、恵まれた環境で過ごしてきたこれまでとは違い、土のグラウンドでプレーできたことは彼にとっての財産になっているという。

 2年目は、練習生としてトップチームの練習に参加する機会が増え、「上から下まで経験できたことで、色んな物が見えるようになった。圧倒的に欠けている部分や共通して大事にしないといけない部分が知れたのは大きかった」。また、トップチームにコンスタントに帯同するため、これまで通っていた高校を辞めて、通信制の高校へと移った。

 毎日、午前中はトップチーム、夕方からはユースの練習に参加するなど、サッカー漬けの毎日を送った。この年には「僕の師匠」と評するGKコーチの土肥洋一氏(現山口GKコーチ)とも出会っている。「技術だけでなく、人間性も学べた。そこが自分の軸になっているし、ああいう人になりたい」と振り返る通り、田中に与えた影響は大きく、それ以前もサッカーノートをつけていたが、土肥氏と出会ってからは言葉の一つも逃さないよう、より真剣に記すようになったという。

 目標としていた高卒でのプロ入りは果たせず、悔しさも味わったが、「大学での4年間で超えていくと目標が明確になった」。選んだ進路は、「GKコーチがいて、自分のことを必要としてくれていたので、ここなら成長できると思った」という京産大だ。

 1年生からコンスタントに出場機会を掴み、プロへの練習参加も経験したが、「大きな差を感じて、自信を失った」。そこからは日々の練習で欠点を一つひとつ消しながら、総合力の高いGKへと成長している。3月に行ったプロへの練習参加でも、シュートストップの範囲が広がり、ビルドアップの質も高まっていることを実感できたため、「プロでやれる自信はある。すぐにでも上のステージでチャレンジしたい」と意気込む。

 最終学年を迎えた今年は、リーダーとしての意識も高まっている。「ピッチに立つ以上は1年生の時から取り組んでいることは何も変わらない。ただ、デンソーカップとか色んな経験をさせてもらっているので、今まで以上に引っ張って行かなければいけない」。3月に挑んだデンソーカップでは、関東選抜Aに3失点を許したが、それすらも彼にとってはプラスの経験だ。

「僕自身学んだことがいっぱいある。個人の質やアイデアの数がプロに近いと感じた。彼らに近づくためには、自分たち主導でドンドン高めていかなければいけない。また、後輩たちは志が高い選手ばかりなので、大学のトップレベルで感じたことを伝えていきたい」。大学最後の一年も成長速度を緩めることなく、プロ入りへの準備を進めていく。

京産大は4月24、25日の関西1部第2節は試合なし。4月29日の第3節で大経大と対戦。

執筆者紹介:森田将義(もりた・まさよし)
1985年、京都府生まれ。路頭に迷っていたころに放送作家事務所の社長に拾われ、10代の頃から在阪テレビ局で構成作家、リサーチとして活動を始める。その後、2年間のサラリーマン生活を経て、2012年から本格的にサッカーライターへと転向。主にジュニアから大学までの育成年代を取材する。ゲキサカの他、エル・ゴラッソ、サッカーダイジェストなどに寄稿している。

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