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巧さ追求する大型CB伊東進之輔、他にはない強みと成長中の守備で静岡学園を勝利へ導く

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静岡学園高のU-18日本代表候補CB伊東進之輔

 190cm近い長身CBがスペースを縫うようにスルスルとドリブルで駆け上がっていく姿は痛快だ。静岡学園高のCB伊東進之輔(3年=千里丘FC出身)は「役割というのは守備なんですけれども、自分の特長は良い攻撃に繋がるビルドアップや、運び出しだと思っている。それがなくなったらどこにでもいるようなCB。もっともっと巧くなりたいというのがありますし、みんな同じメニューをやっている中でもドリブルも誰よりもこだわってやっているつもりではあります」。U-18日本代表候補にも選出されている大器は、自分の役割を理解した上で“普通の”DFが行わないようなドリブル、スルーパスでその存在価値を示している。

 元々小学生時代はFWやトップ下のプレーヤー。前線でボールを収めたり、運び出すプレーを得意にしていたという。千里丘FC(大阪)にもFWとして加入したが、その後DFへコンバート。「前の方が楽しい」と当初は抵抗もあったというDFのポジションだが、ドリブルで持ち上がることや攻撃を組み立てることで楽しさを見出していく。

 中学時代は注目されていた選手ではない。チームメートがJクラブユースや大阪の強豪校へ進学する中、「僕よりも良いCBがいましたし、高校行く時にJとか選択肢なかった」伊東は、関西を離れることを決意。ただし、テクニック、インテリジェンスを重視する静岡学園で自分の強みを発揮するなど、1年生チームで存在感を示していたDFは、2年時に名門の先発を獲得する。だが、定着することは叶わなかった。

 川口修監督は「去年、ミスしてカウンターを食らっていた」と振り返る。だが、指揮官から「ちゃんと持つのは全然良いからやれ、と。ただ、やりすぎてカウンターされるのはやめろと」と指摘されてきたことで伊東は徐々に変化。攻撃面の良さは残しつつ、状況に応じたプレーができるようになり、ミスで失点というシーンをなくしている。

 190cm近い長身と、他のDFにはないような足元の柔らかさはやはり大きな武器。主軸として最終学年を迎えた伊東は、今年3月にU-18日本代表候補合宿へ初招集された。「府の選抜とかも無かったので自信という面では大きくなったかなと思います」。そして、前への強さも身につけ、Jリーグクラブからオファーを得るほどの存在に。まだまだその名は広まっていない。それでも、Jリーグにもなかなかいないタイプの大型DFは、インターハイの活躍次第でより注目度を高めそうだ。

 全国大会では、まず守備。伊東も「いくら(自分の特長が)攻撃と言っても、まずCBは守らないといけないポジション」という。チームの方針で攻撃面の特長を伸ばしてきたが、代表を経験し、声で周りを動かすことをより意識するようになった。チャレンジ&カバーなど連動した動きの質も少しずつ上ってきている。

 インターハイ初戦で対戦する仙台育英高(宮城)はMF島野怜(3年)やFW佐藤遼(3年)、MF明石海月(3年)ら攻撃陣中心にタレント擁するチーム。「スピードある選手や高さのある選手がいると聞いている。抑えていれば(古川)陽介とかが点を取ってくれると思うので、まずはしっかり守備を連動してやることができれば良い試合ができるんじゃないかなと思います」と力を込めた。相手の攻撃を封じ込んだ上でビルドアップ、ドリブル、そしてセットプレーからのヘッドで違いを生み出す。

 以前は自分に絶対的な自信がなかったが、“代表入り”した今は違う。「見返すというか、追い越して行けている選手が多くいるかなと思います」。良い意味でついてきた自信。タイプは違うものの、DFチェイス・アンリ(尚志高)ら他の注目CBに「負けたくない」という思いも強くしている伊東が、インターハイで堅守と他のDFにない強みを発揮し、静岡学園に白星をもたらす。

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(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2021

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