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流通経大、ラッキーではない実力の“金星”

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[9.1 練習試合 日本代表0-1流通経済大]
 
 守って守って1点を死守しての勝利ではない。ロングボールを放り込んでの五分五分の運にかけて奪った1点でもなかった。関東大学1部リーグで首位を走る流通経済大は、前日(8月31日)に天皇杯全日本サッカー選手権茨城県大会決勝を戦ったばかりだったが、それでも攻守で岡田ジャパンを完全に上回った。
 “仮想バーレーン代表”として本来の4-4-2ではなく3-5-2のシステムを組んで試合に臨んだ流経大。それでも中盤の底に位置する三門雄大主将(4年=流通経済大柏高)と千明聖典(3年=流通経済大柏高)の両MFを中心とするパスワークは圧巻だった。日本代表の中途半端なプレスを見事にかいくぐり、ダイレクト、2タッチのパスを4本、5本とつないでゴール前までボールを動かしていった。ロングボールはほぼ使わず、最終ラインの選手までもがプレッシャーに来る相手を軽やかなステップで外し、ボールを失わないスタイルを貫いた。普段通りの圧倒的な“高速パスワーク”には日本代表FW佐藤寿人(広島)も「(プレッシャーに行っても守備を)はがされて、はがされての連続だった」と舌を巻いたほど。そして後半21分には右CKからアグレッシブにボールを動かし、最後は三門がコントロールシュートをゴール右隅へ突き刺した。
 この日はU-23日本代表GK林彰洋(3年=流通経済大柏高)、全日本大学選抜の司令塔・MF平木良樹(4年=流通経済大柏高)も不在。それでも再三強気の仕掛けを見せたMF楠瀬章仁(4年=高知小津高)や水戸の特別指定選手であるMF石川大徳(3年=流通経済大柏高)らが見せるスピードある攻撃の連続に、試合途中からはスタンドの観衆からも流経大の鮮やかなパスワークにのみ拍手が送られていた。また、MF金久保順(3年=水戸短大附高)がクロスバー直撃の右足FKを放つなど、ゴールを脅かした場面も大学生チームの方が何倍も多かった。
 決勝ゴールの三門は「日本代表はボールサイドにDFに来るので、逆サイドにボールを動かせばチャンスになると思っていた。(自分たちは)いつもとシステムが違ったが、やることはそれほど変わらないので違和感はなかった。出来すぎだったと思います」。記者席からは「(試合内容は十分だから、日本代表と流通経済大の)勝った方がバーレーンと戦うのはどう?」という口の悪い冗談までもが飛ぶ始末。日本代表が守備重視の試合を進めていたため、相手の攻撃にそれほどの脅威がなかったことは間違いない。それでも大学サッカー界屈指の実力派軍団が、実力を見せつけて奪った“金星”で岡田ジャパンに危機感を植え付けた。

(取材・文 吉田太郎)

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