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先につながらない快勝劇、仮想豪州にはならず

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[2.4 キリンチャレンジ杯 日本5-1フィンランド 国立]

 “仮想オーストラリア”とは程遠かった。11日のW杯アジア最終予選・オーストラリア戦(日産ス)を見据えた前哨戦。FW岡崎慎司(清水)の2得点などで大量5ゴールを奪ったが、とてもオーストラリア戦に勢いが付いたとは言い難い試合だった。

 「タイミングが合えば、どんなDFもうまく守れない。(最終ラインの)裏を狙うのは高さ対策。スピードで行かないといけないから」。前半15分にDF内田篤人、同32分にはMF中村憲剛からの縦パスに抜け出し、DFラインの裏を取ってゴールを決めた岡崎は、そう胸を張った。先発11人の平均身長が184.7cmの巨人軍団。体のサイズだけは“仮想オーストラリア”にぴったりのフィンランドを、機動力で翻弄した。

 トップ下に入った中村憲が中盤を自由に動いてパスを引き出し、チームにリズムを生んだ。「(1月28日の)バーレーン戦でできなかった中盤のタメや前からのプレスができたのは良かった。中盤で顔を出してゲームをつくれたというのが収穫というか、みんなもともとできていたことが戻ってきた。あとはオーストラリア戦までに精度とスピードを上げていけば」と前向きに話したが、フィンランドのプレスが甘かったから自由にボールをつなげたとも言える。MF遠藤保仁が「フリーでもらう機会が多かった」と言うように、中盤ではほとんどプレッシャーを受けない状態だった。

 「オーストラリアはこんなもんじゃない。きょう10-0で勝っても、次0-1で負けたら意味がない。こんな甘いもんじゃない」。そう力説したDF田中マルクス闘莉王の言葉を借りるまでもなく、この日の快勝劇がそのままオーストラリア戦につながるとは考えられない。しかも、大活躍だった中村憲、岡崎らはオーストラリア戦でベンチスタートとなる可能性の方が高い。この日の中盤の構成は遠藤と橋本英郎のダブルボランチ、前に岡崎、中村憲、香川真司という5人だったが、欧州組が加わるオーストラリア戦でも先発が確実なのは遠藤だけ。橋本は長谷部誠、岡崎は中村俊輔、中村憲は田中達也、香川は大久保嘉人に取って代わられることが濃厚だ。

 岡崎と中村俊、中村憲と田中達ではプレースタイルがまったく異なる。フィンランド戦でどんなに良いサッカーをしても、結局オーストラリア戦では日本のサッカーは大きく様変わりしてしまう。相手のレベルという意味でも、日本のメンバー構成という意味でも、この日の試合がオーストラリア戦に向けてどの程度の意味を持っていたのか。欧州組がそろう9日からが本当の勝負というのが、悲しいかな、岡田ジャパンの現実だ。

<写真>視察に訪れたオーストラリア代表ピム監督
(取材・文 西山紘平)

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