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U-17代表候補、喜ぶことのできない「Jとの0-1善戦」

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[2.23 練習試合 U-17日本代表候補0-1湘南 馬入]

 静岡・千葉合宿中のU-17日本代表候補は23日、神奈川県平塚市の馬入ふれあい公園で湘南ベルマーレと練習試合を行い、0-1で敗れた。今夏メキシコで開催されるU-17W杯に出場するU-17日本代表は、15日から候補合宿中。26日まで強化合宿を行う。

 「0-1」。実力差はあったものの、1994年生まれ以降のメンバーで構成された通称「94JAPAN」はJクラブ相手に最後まで食い下がった。世界挑戦まで半年を切って迎えている今回の強化&セレクション合宿。U-17代表候補の現在の主力組と言えるこの日の先発メンバーは、GKが中村航輔(柏U-18)で4バックは右から川口尚紀(新潟ユース)、岩波拓也(神戸ユース)、前夜に合流した植田直通(大津高)、そして鈴木隆雅(鹿島ユース)。中盤では野沢英之(F東京U-18)と望月嶺臣(野洲高)がダブルボランチとしてコンビを組み、右MFが室屋成(青森山田高)で左MFが石毛秀樹(清水ユース)。2トップには鈴木武蔵(桐生一高)と南野拓実(C大阪U-18)が入る4-4-2システムで試合に臨んだ。

 一方、湘南はMF坂本紘司とDF臼井幸平をはじめ、新加入のGK西部洋平、FW巻佑樹、FW佐々木竜太ら主力候補の多くが先発。その湘南はサイドチェンジなど大きな展開を多用した攻撃でU-17代表候補を揺さぶると、前半9分にはPAで左サイドからのラストパスを受けたFW巻が左足でゴールへとねじ込み先制した。

 あっけなくリードを奪われたU-17代表候補だったが、ここから粘る。湘南の決定力が明らかに欠けていたことも確かだが、前半半ばにMFアジエルを投入して攻勢を強めたJクラブに決定機をつくられながらも、中村の好セーブなどで得点を許さない。サブ組中心のメンバーで臨んだ前日はジェフリザーブズが見せた前からのプレッシャーによって全くアタッキングゾーンまでボールを運ぶことができずに攻め立てられたが、この日は「(湘南の)プレッシャーは感じなかった」と振り返った望月と野沢が相手の寄せにも怖れることなく、また高い技術でボールをつないで敵陣へとボールを動かしていく。

 ミスの数も減っていた。ただ、エースの南野が「(ゴール前で)受けてどうなるか、というところまでいかなかった。自分の存在意義を示せなかった」と悔やんだように、技巧を武器とするダブルボランチや石毛らが中盤でボールを動かしても、どこかでトラップミスや判断の遅れなどが生じ、攻めきる前にボールを失ってしまう。
 それでも29分には望月のくさびのパスを南野が胸で落とし、走り込んだ石毛が右足ダイレクトで強烈なシュート。植田に代えて左MFに秋野央樹(柏U-18)を投入した後の40分にも望月の縦パスをスイッチに、ボールをテンポ良く動かしてから秋野がグラウンダーのラストパスを入れ、直後には野沢のスルーパスがPAの南野の足元へ通る場面もあった。

 前半終了間際に石毛をMF伊池翼(横浜FMユース)へチェンジして迎えた後半の立ち上がりには7分、8分と南野のラストパスから秋野が立て続けに決定機を迎える。湘南が後半開始からFWルーカス、FWファビーニョの両ブラジル人FWを投入し、前線をブラジル人トリオへ移行したことでU-17代表候補は引きずられるようにゴール前までボールを運ばれていた。それでも「2点目を取られると3点取らないと勝てなくなる。追加点を取られなかったことはよかった」と振り返った中村や岩波、鈴木隆らU-17代表候補は再三決定機をつくられながらも、粘り強い対応によって相手のミスを誘発し、0-1のまま食い下がった。

 10分過ぎに野沢と南野を立て続けに交代させてMF新井純平(浦和ユース)、FW神田夢実(札幌U-18)をそれぞれピッチへ送り出したU-17代表候補は20分にも、伊池が相手DFラインに出来たわずかなギャップを見逃さずにPAへ絶妙なスルーパス。これに右サイドの大外から川口が反応すると、最後は神田が決定的な右足シュートを放つ。 
 見せ場もつくったU-17代表候補だったが何度かあった得点機を湘南GK松本拓也に阻まれると、終盤はやや数が多くなったロングフィードを完全に抑えられるなど無得点のまま試合を終えた。

 南野は「世界大会ではこのレベルがふつう。良い形で持たせてくれない。厳しい状態の中でどうするかが課題」。また湘南のある選手は「(U-17代表ということで言えば柿谷)曜一朗のような飛び抜けた怖い存在はいなかったと思う」と、U-17代表時代の07年U-17W杯でフランスからゴールを奪うなど、インパクトあるプレーを見せていたFW柿谷曜一朗(現徳島)を“比較材料”に出して「強烈な個の不在」という印象を口にしていた。

 この日のスコアは1点差。外国人選手を含むJリーガーたちを相手に健闘したU-17代表候補だったが、存在感を発揮していた望月が「自分がもっとやれば」と悔しがったように精度、ボールへの執着心などもっと向上させなければ「世界大会でふつうのレベル」に勝つことはできない。「やるからには優勝」という目標を果たすためには個人としても、チームとしても本番へ向けて日常からやらなければならないことが多そうだ。

[写真]2トップの一角として先発したU-17代表候補FW鈴木武蔵。球際でのプレーなどさらなる激しさを期待
(取材・文 吉田太郎)

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