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「ガンバにはまだ平井がいる」、G大阪がアドリアーノ退団後2連勝

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[6.22 J1第17節 柏2-4G大阪 柏]

 ガンバ大阪が“らしさ”を取り戻し、2連勝を飾った。中東への電撃移籍で合意したFWアドリアーノが抜けてからの2試合で横浜FM、柏という上位勢を連破。今季最多となる1試合4得点を挙げ、消化試合が2試合少ないながら首位・柏と勝ち点6差の暫定7位に順位を上げた。

「うちにいない選手なので、そういう言葉も聞きたくない」。試合後の記者会見。「アドリアーノが抜けてからの2試合はガンバらしいパス回しが戻ってきたのでは?」と聞かれた西野朗監督は吐き捨てるように言った。

 07年にマグノ・アウベス、08年にバレー、09年にレアンドロと、毎年のようにシーズン途中でブラジル人FWが中東に流出。それでもMF遠藤保仁が「いい選手が抜かれていくわけで、戦力ダウンと言われるのはしょうがない。でも全員の力をみんなが信じているし、他にもいい選手がいっぱいいる。いなくなった選手のことを言ってもしょうがないし、今いる選手でいいコンビネーション、いいコンディションをつくっていければと思っている」と力説するように、チーム全体で穴を埋めている。

 アドリアーノが抜けたことで4-2-3-1から4-4-2にシステムも変更。西野監督は「アドリアーノがいたときからパスサッカーを構築してきた。抜けたからパスが戻ってきたわけではない」と言うが、「2トップにしてからお互いの距離感がよくなり、落ち着いてボールを動かせている」と、結果的に試合内容が上がってきたことも認める。

 退団が決まるまで6試合連続でゴールを決めるなど今季9得点で得点ランキングトップに立っていたアドリアーノの決定力、得点力は大きな武器だったが、どうしても個の部分に頼りがちな面もあった。それがエースが抜けたことで、チーム全体の流動性やシンプルかつ大胆なボール回しが戻ってきたという見方もできる。

「アドリアーノがいなくなったし、ガンバにはまだ平井がいるんだというのを見せたかった」。1-1の後半6分に勝ち越しゴールを決めたFW平井将生は胸を張る。待望の今季初ゴール。「FWなんで、こういうチーム状況で自分がやってやるぞという気持ちは強かった。チームには自分がいるんだというのを示したかった」と、“代役”の形で前節に続いてめぐってきたチャンスに発奮した。

 シーズン当初はコンディション調整に苦しみ、なかなか出番に恵まれなかった。オフ中に体重が増え、一時は体脂肪も14%あったという。「今は10~11%ぐらい。体重も70kgを切ったぐらいまで落ちた。体重は毎日計ってる。奥さんが一番厳しかった。おかわりもできなかったから」と苦笑いしながらも、ここに来てようやく本来の動きを取り戻しつつある。

 平井について西野監督も「自分がやらなければという姿勢の中で、初めて90分間やって、さらにそういう自覚も出ると思う」と指摘。「動きを見る限りではかなりよみがえってきたかなと。得点を決めたことが何よりだと思う」と復調を感じ取っている。本人は「モヤモヤが晴れた? ちょっとですけど。自分の形のゴールでもないし。裏に抜けてというのが個人的な理想の形。それが出てくれば調子も戻ってくると思う」と、まだまだ納得はしていないが、ゴールという結果を残せたことは大きいはずだ。

 この日は平井と2トップを組んだFWイ・グノも1得点。遠藤は「グノはケガ明けだけど積極的にやっていたし、平井も裏への意識があった。CBと駆け引きをしながらやっていたし、結果が出ればFWは自信が付く。2人ともいい仕事をしたと思う」と手放しで称賛した。

 ACL敗退、アドリアーノの電撃退団。立て続けにアクシデントに見舞われたG大阪だが、それも力に変え、着々と上位を狙っている。消化試合が2試合少ないことを考えれば、勝ち点6差の首位は射程圏内。「2試合少ない中でも少しでも上にいたいと思うし、自分たちがその2試合を勝つ保障もない。まだ半分も終わってないですから」。淡々と語った遠藤だが、その表情にはチームへの確かな手応えも浮かんでいた。

[写真]祝福を受ける平井(14番)

(取材・文 西山紘平)

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