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浦和・ペトロヴィッチ監督が今季限りの辞任を表明。突然の発表にフロント&選手は困惑

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[10.15 J1第28節 浦和0-1大宮 埼玉]
 浦和レッズペトロヴィッチ監督が、今季限りで辞任する意向を表明した。大宮戦に0-1で敗れてリーグ戦8試合連続で白星なしとなり、J2降格圏となる16位に後退したが、試合後の会見で「全力で残り5試合を戦うが、私自身は来年、このチームに残らないことを決めた」と明らかにした。
「数週間前に決断していたが、ナビスコ杯で決勝に進出し、チームがいい状態だったので、表に出していなかった」。負けられない埼玉ダービーに敗れて16位に後退。自身の進退を表明することで、リーグ戦残り5試合で、少しでもチームが奮起すると信じて、明かしたと考えられる。指揮官は「今日はクラブを愛するからこそ、言った。クラブも次の人を探すことができるだろう」と心境を吐露した。
 元浦和の選手だったペトロヴィッチ氏は、フィンケ監督の後を受けて今年から古巣に指揮官として帰ってきた。名門復活に向けて手腕が期待されたが、今節を終えて6勝11分12敗で16位に低迷。J2降格の危機を迎えている。
 ただ、ペトロヴィッチ監督の突然の退任表明は、今後に大きな不安を残すものとなった。クラブの橋本光夫社長は「会見でコメントしたことについて、私は監督と話をしていません。だから、何もいうことはありません。本人がどういう意図で話したのか、確認がとれていません」と突然の発表に困惑している様子だった。フロントと指揮官の間が、コミュニケーション不足に陥っていることをうかがわせた。
 まだ選手たちにも直接、発表していない。指揮官は「まだ選手には話していない。来週のマリノス戦に向けて準備をしたい。この話よりも、マリノス戦のほうが重要だ」と意図を説明した。ただ、報道陣から聞かされた一部選手は「本当ですか!?」と困惑しており、今後に動揺を残す可能性がある。
 ペトロヴィッチ監督は会見後、記者団に囲まれて突然の退任表明について思いを明かした。その言葉には、どこかフロントに対し不満が感じられる言葉が並んだ。「数ヵ月前に今後のことについて話をしたら、何も返って来なかった。だから、自分で(退任することを)決定した」。退任する一番の理由について聞かれると、「今はそれを話す時期ではない。時期が来たら話します」と含みを持たせた。
 そして、残留要請があったら残留していたのか? と問われると、「6月にそういう約束をするはずだった。“ある人に”来年のことについて話をしたら、『来年も続ける』ということだった。ただ、自分は契約書を見ないと約束したことにはならないという話をしたら、“ある人”は『日本はヨーロッパと違って口で言ったことは守る』という話だった」と交渉の過程を暴露した。
 また、「自分は何も自分の希望を言ってこなかった。シーズンの途中に、点の取れるエジミウソンを取られたが、クラブにお金が残るということで承認した。ただ結局、FWは2得点しか取れていない。世界中どのクラブを見ても、FWが2得点というチームはどこにもない」と戦力補強の面でクラブから十分なサポートが得られなかったことに不満も漏らした。
 指揮官は「私は今後も何も変わらない。残り5試合、全力で戦うだけだ。選手とも良い関係を築けている。選手たちは高いモチベーションで、全力を出して残り5試合を戦ってくれると思う。来週のマリノスに勝てば、変わる。必ず難しい状況から脱出できる」と言葉に力を込めた。突然の辞任表明は果たして、プラスに作用するのか、それとも……。チームは様々な面で難しい状況に追い込まれているが、サポーターは勝利を信じて応援するしかない。
(取材・文 近藤安弘)

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