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後半シュート0も関係なし、柏が大宮戦の反省活かし首位奪回、「何が何でも優勝したい」

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[10.16 J1第29節 柏1-0山形 柏]

 柏レイソルがついに首位を奪回した。前半33分のMFジョルジ・ワグネルのPK弾を守り切り、1-0で山形を撃破。勝ち点を59に伸ばし、2位のG大阪に同2差を付けて8月6日の第20節以来約2ヵ月ぶり、9試合ぶりに首位に立った。

「今日は優勝する資格があるのかないのか、試された試合だった。同じミスをしていたら、優勝する資格がないということ。だから、内容よりも結果を出したかった」

 エースFW北嶋秀朗が振り返った通り、まさに優勝に向けての“資格テスト”だった。今季序盤、首位をキープしていた柏だったが、7月16日の川崎F戦に2-3で敗れて陥落。その後、8月6日の横浜FM戦に2-0勝利し、首位を奪い返した。しかし、次節同14日の磐田戦に1-6で完敗し、再び明け渡した。その後、横浜FMやG大阪に譲る形となったが、もう一度チャンスが来た。

 9月25日の第27節・大宮戦で、再び勝てば首位奪回のチャンスを迎えた。下位チームが相手だけに多くのファンが首位浮上を期待したが、1-3で敗れて失敗……。北嶋は当時、「優勝するというのは難しいことなんだと改めて感じた」とこぼしていた。それでも、下を向かずに前向きに戦ってきた柏に、神様は再びチャンスを与えた。前日の試合でG大阪が名古屋に敗れたため、勝てば首位奪回という好機が巡ってきた。

 大宮と同様に、山形は堅い守備からカウンターを狙ってきた。立ち上がりからチャンスが少なく、嫌な雰囲気もあったが、選手は大宮戦と違っていた。この日は同じ過ちを犯さなかった。FW工藤壮人は言う。「大宮戦は(シーズン終盤では)初めて勝てば首位という状況で、見えないプレッシャーがあった。今日はその教訓があった中で、前半から攻め急がずに、まずは失点しないように入った。しっかりとつないで、無理をしないことが良かったと思う」。

 大宮戦で得た教訓-。大宮戦で犯してしまったミスとは-。MF栗澤僚一によると、「大宮戦のときは焦って、早く決めよう、早く決めようとバランスを崩した」という。実際、大宮戦は前がかりになったこともあり、2点を先行される展開となり、終わってみれば自滅した形で敗れた。この日も大宮戦と同様、中盤でボールはつなげたが、堅い守備に苦しんだ。しかし、違う点があった。選手のメンタルだ。慌てたり、ペースを乱すことはしない。じっくりと攻め、PKで先制点を奪い、その後は落ち着いて守り抜いた。

 成長の証は、特に後半にある。この日、山形がシュート7本だったのに対し、柏は同4本だったが、何と公式記録上、柏は後半は0本だった。相手の豊富な運動量を活かした守備、ハイボール攻撃に苦しんだのもあるが、2点目を取りにこうと、無理に攻めることはしなかった。チームが同じ方向を向いて戦った。これが1-0で逃げ切れた要因といえる。

 北嶋は「試合の流れや展開をみんなが同じように感じ、共有できるようになった。浮き足立つこともないし、臆することもなかった。いつも通りのことをやれた」と明かす。FWをはじめ、攻撃陣はゴールが欲しいところだが、失点しないことを優先した。工藤も「キタジさんとも試合中に話しましたけど、点は取れなかったけど、ボールが(前線に)入ってきているのは感じていた。キープもできたし、ボールをさばけた。崩しのところは、次の試合の課題と言えるけど、攻めるときは攻める、守るときは守るというのができた」とシュートまで行けなかったことを気にしていなかったという。チームで戦い方を統一できていることに加えてメンタル面が成長し、後半のような“我慢”につながった。

「自分たちで首位に立つことができた。首位に立てたので、これから落ちたくない。何が何でも優勝したい」とチームリーダーのMF大谷秀和は、ヒーローインタビューで強い決意を示した。工藤も「残り5試合、全部勝てば優勝。みんなで目標に向かって頑張りたい」と力強く言い切った。史上初となるJ1復帰1年目でのリーグ制覇。偉業の達成に向け、柏のムードは最高潮にある。

[写真]9試合ぶりの首位浮上を喜ぶ柏イレブン

(取材・文 近藤安弘)

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