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[選手権予選]東京で大波乱!無名の都立校・東大和が全国V6回の帝京撃破!

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[10.16 全国高校選手権東京A大会準々決勝 東大和3-1帝京 清瀬内山G]

 東京で大波乱が起きた。16日、第90回全国高校サッカー選手権東京都Aブロック大会準々決勝が行われ、清瀬市の清瀬内山グラウンドでは全国優勝6回の名門・帝京と都立の東大和が激突。試合終盤の2得点で突き放した東大和が3-1で勝ち、11月5日に関東一と戦う準決勝へ進出した。

 後半ロスタイム、1-3と追い詰められたカナリア軍団・帝京の控え選手たちが「こんなところで終わるなよ」「力出し切ってねーだろ!」「やれよ!」とチームメートたちを激しく鼓舞する。過去20年間で12度全国へ進出している帝京が、同期間で都4強に残れなかったのはわずか一度だけ。名門のプライドを守るためにも負けられない選手たちは、怒涛の攻撃からゴール前へなだれ込み、混戦からPKを獲得する。だが、FW町田直樹(3年)の右足シュートが東大和GK矢内将洋(3年)にストップされると、もう反撃する力は残っていなかった。試合終了の笛が鳴り響き、喜びを爆発させた東大和の赤いユニフォームがフィールド中を歓喜のダッシュ。主将のMF市川真吾(3年)は「『東京を驚かそう!』とみんなで言ってきた。帝京は思っていたよりも強かった。でも自分たちは有名な学校じゃないけれど、負けている訳ではない。応援してくれている方々の期待に応えられてうれしい」と声を弾ませていた。

「ベスト4進出はこれが初めてじゃないですか」という無名の都立校・東大和だが、名門相手に怯まなかった。立ち上がりから主導権を握ったのは帝京で、開始直後には10番MF小山北斗(3年)の強烈な一撃がゴール左ポストを直撃。また右サイドの突破口、2年生MF伊藤遼がボールに絡むとことごとくチャンスになりかけていた。25分には右サイドから切れ込んだ伊藤が右足シュートを放ち、35分には伊藤の右クロスにファーサイドから走り込んだ小山がダイビングヘッドで合わせた。

 局面での攻防戦で上回り、縦に速い攻撃を繰り出す帝京だが、この日はパスが全くかみ合わない。選手間の意図が合わず動き出していなかったり、また個人のミスも重なってショートパスがタッチラインやゴールラインを割るような場面が続発。加えて東大和のCB小柴樹(3年)とアンカーの市川が空中戦で健闘し、CB谷合祥悟(3年)が帝京の「要注意人物」伊藤の突破をケアしたことで、決定機をつくることができなかった。引くことなく、勇気を持って戦う東大和は狙い通りの0-0で前半を折り返す。

 そして後半開始直後の2分、就任1年目の勝城慶郎監督が「攻撃は(就任当初から)抜群によくて『取られても取り返せばいい』というチームでした」と説明した東大和の攻撃力がうなりを上げる。敵陣左中間でボールを持ったMF大石明翔夢(3年)が巧みなステップで帝京守備網に穴を開けると、縦へ切れ込んでそのまま左足シュートをねじ込むファインゴール。PAへ近づく回数こそ少なかったものの、大石やFW清水昌樹(3年)ら決定的な仕事のできる選手を複数擁していた東大和が、その得点力の高さを活かして先制点を奪った。まさかの展開に会場中がどよめく中、東大和の選手たちは殊勲の背番号14中心に雄たけびを挙げて喜んだ。

 ただ帝京は14分、右サイドからのパスワークにFW大野耀平(2年)が絡み、ディフェンスラインの背後を取るとPAへ飛び込んだ小山が左足シュートを決めて同点に追いつく。東大和の攻守にやや隙のあった時間帯を逃さずに奪った同点ゴール。これで立ち直った帝京は、さらに18分にも伊藤の右クロスを町田が頭で合わせ、19分には小山の右足シュートがゴール右ポストをかすめる。その後も攻める帝京は伊藤を起点とした攻撃で再三シュートにまで持ち込んでいた。

 それでも34分に左サイドを打開したMF諏訪賢人(3年)の折り返しからMF松岡啓太(2年)が放った決定的な右足シュートが、東大和GK矢内のビッグセーブにはじき出されるなど勝ち越すことができない。対して東大和は35分に184cmの大型FW井上英明(3年)を投入。同じく交代出場の182cmFW小橋堅太(3年)と長身FWを前線に並べて勝負に出ると、この2人が熱戦のスコアを動かした。37分、東大和はハーフウェーライン付近で獲得したFKを市川がPAへ放り込むと絶妙な跳躍で合わせた小橋がヘディングシュート。頭上を襲ったボールを帝京GK澤野亮太(2年)は何とか触るが、「外から見てても(きょうの試合は)『行ける』という気持ちでいた。自分が入って『自分が試合を決めてやる』という気持ちだった」と抜群のスピードを活かしてゴール前へと飛び込んでいた井上が右足で押し込み、試合終了3分前に劇的ゴールが生まれた。

 さらに東大和は40分、必死の反撃を試みる帝京を沈める3点目。カウンターから抜け出した清水が左足でダメ押しゴールを沈めて勝負の行方を決定付けた。帝京の猛攻を凌いで“ジャイアントキリング”を達成した谷合は「点を取られたら取り返す。これが大和。団結力のある大和らしいサッカーができた」と胸を張っていた。

 采配が当たった勝城監督は名門との対戦に「当たって砕けろしかない。引いて守るよりも前へ行こうと。それでも『1点なら取り返せる』と守備をよく頑張ってくれたと思います」と選手たちを賞賛。総体予選で選手権出場の駒場を破っているとはいえ、大学へ推薦入学するほどの実績もなく、進学を希望する選手たちは今後の入学試験に備えてほぼ全員が練習後に学習塾に通う毎日だという。トレーニングを他の選手よりも早めに始めて練習時間を確保する選手も。それでも一戦一戦楽しみながら戦い、難関を劇的勝利で突破した東大和が「聖地」西が丘での準決勝へ乗り込む。

[写真]後半40分、東大和は清水が勝敗を決定付ける3点目。その瞬間、帝京の選手たちはピッチへ崩れ落ちた

(取材・文 吉田太郎)
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