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楠神が5カ月ぶりゴールでチーム救う。「僕たちがタイトルを狙っているということを表現したかった」

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[10.13 天皇杯3回戦 川崎F2(延長)1横浜FC 等々力]

 まさに“神”が舞い降りた。1-1の延長後半5分、川崎フロンターレのMF楠神順平は左サイドでジュニーニョのパスを受けて突進した。得意のドリブルでPA内に侵入すると頭を上げて右足を一閃。左45度から綺麗な弧を描いてゴール右に沈めた。若きテクニシャンが、120分の死闘から勝ち星をもたらした。

 「ゴール前で落ち着いて蹴れた。リスクを負ってもっと行こうかなと思ったけど、うしろに(横浜FC選手の)カバーが来てたんで、シュートを打とうと。あれしかないと思った。点を取れてよかった」

 あれしかない-。その言葉通りのゴールだった。まだドリブルするスペースはあったが、一瞬、横浜FCのDFの足が止まったのを見逃さなかった。ドリブルを警戒してのことだが、その隙を突いて落ち着いてコースを狙い定めて右足を振り抜いた。ルーキーとは思えない冷静な判断力が光った。

 チームは10日のナビスコ杯準決勝第2戦で磐田に敗戦。昨年のリベンジを狙っていた大会で負けた悔しさ、そして中2日という過酷な条件の中で、この一戦を迎えた。立ち上がりから川崎Fが主導権を握るが、コンディション万全の相手のプレスに消耗し、徐々に差し込まれる時間が増えた。そんな中、後半39分に楠神が途中交代でピッチに送り出された。

 「つっかかっていくドリブルが少なかったんで、どんどん行こうと思った。ナビスコで負けて気合が入っていたけど、うまくいかなくて(先発メンバーに)モヤモヤしているところがあった。自分が出て(ドリブルで)仕掛けていこうと思った」

 その言葉通り、疲れているメンバーの負担を補うべく、積極的にプレスに行って裏を狙った。ボールを持ったら得意のドリブルで突破するか、味方の起点となるべくプレーした。「先発で出たいけど、短い時間でも結果を出さないといけないと思っていた。(周りが疲れてるんで)いっぱい動かないといけないと思っていた。ゴールを決められて良かった」と充実感を漂わせた。

 本人もゴールにこだわっているようだが、ようやく“成果”が出せた。公式戦のゴールは途中出場でハットトリックを決めた5月5日のG大阪戦以来約5カ月、公式戦21試合ぶりだった。G大阪戦はハットを決めても4-4の同点だったが、今回は決勝点。「こっちのほうが大きいですね。勝ったんで。むこうは引き分けだったから」と笑みを浮かべた。

 「ナビスコ杯に負けて、サポーターに悔しい思いをさせていた。僕たちがタイトルを狙っているということを表現したかった」

 楠神は熱い思いを口にした。川崎Fイレブンは何度も何度も口にしているが、やはり目標は悲願の初タイトルのみ。ナビスコ杯は終わり、リーグ戦も厳しいが、天皇杯は十分、可能性がある。楠神は先発で出たい気持ちはあるが、ひいまず与えられた役割を全うする覚悟だ。“スーパーサブ”としてチームを勝利に導く。

<写真>サポーターに挨拶する楠神(16番)
(取材・文 近藤安弘)


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