beacon

最新作『EAFC 24』で世界大会に挑む! FC Pro Open北アジア代表 エビプール&あつやインタビュー

このエントリーをはてなブックマークに追加

エビプール(写真上)、あつや

 今月10日からイギリス・ロンドンで行われる『FC Pro Open』グローバル予選に、北アジア予選を勝ち抜いた日本人のeスポーツ選手2人が参加する。長年にわたって人気を博した『FIFA』シリーズが『EA SPORTS FC』に装いを変え、初めて迎える世界大会。決戦を控えるエビプール(31)、あつや(26)が『ゲキサカ』のインタビューに応じた。

——10月に北アジア予選が行われていましたが、最新作『FC24』発売から約2〜3週間での大会でした。現状の手応えをどう感じていますか。
エビプール「自分はどのサッカーゲームでも序盤が得意なほうで、正直相当気合が入っていました。守備だったり、セットプレーだったり、いろんなところで他の人よりも“仕様”を見つけていて、いろいろな方とフレマもしていたんですけど、ほとんど負けずにいい感じで調整できていたので、ロンドンの大会に出られることにすごく満足しています。発売して約2週間、3週間ぐらいでよくここまで仕上げられたなというところで、結果ともに非常に満足しています」

あつや「自分は昨季から本格的にFIFAシリーズ、FCシリーズの競技プレーヤーとして大会参加を本格的に再開した形ですが、昨年は北アジアで5位という成績で、オフィシャルな世界大会には行けませんでした。今季は昨年の手応えであったり、悔しい思いを持ち越しながら、気持ちの上でも負けないぞという感じで進めていました。ただ、仕上がりとしてはあまりよくは感じていなくて、試合前の練習をいろんな人とするんですが、勝率はかなり低めでした。いわゆる優勝候補、強いと言われている人には2割くらいの勝率だったので、『これ大丈夫なのかな?』みたいな。なので前日までは『これは勝てる』みたいな感じは全然なく、真逆のようなメンタルでスタートした状況でした。ただふたを開けてみると、体の調子とか、使用したフォーメーションがうまくかみ合って、優勝という形で終えられたのは非常にびっくりしています。ちょっと出来過ぎな感じというか、150%ぐらいの力を出して優勝してしまったので、いまはちょっとこの先が不安だなくらいの心境ですね」

——あつやさんの勝因はどのようなところにあったんでしょう。
あつや「まずは一番の優勝候補、王道のところと最初のほうで当たらず、言い方はあれですが、苦手意識があまりない人と当たったというのがありました。ただ最後まで行くと勝っている人、優勝候補と当たるので、そのあたりの勝負どころが大事でした。この大会は1日目がスイスラウンドと言って、同じ勝ち数の人と順次当たっていく方式なのですが、2日目はトーナメントです。トーナメントでは1点差ゲームになっていく中、リードしているけどあえて攻めるとか、細かいところの駆け引きがいろいろあって、その場に応じて自分がどう振舞っていくかというところの判断で正解を選び続けられたというところが勝因かなと思います」

▼FIFAシリーズからEAFCシリーズへの変化
——まずは少し『FC24』について掘り下げていきたいのですが、これまでのFIFAシリーズからFCシリーズにかけて変化した部分、また競技プレーヤーとしてその変化にアプローチした部分はどのあたりにありますか。
エビプール「FIFAシリーズからFC24に変わって、大きな要素としては女性選手が追加されたことです。あとはプレースタイル(※)が加わったことですね。今まではそれがなく、王道な選手をみんな使って、強い人は大体スカッド(選手編成)も一緒になるという感じだったんですが、今回からは選手ごとにプレースタイルが加わり、例えばスルーパスがすごく上手いとか、コントロールシュートがすごく上手いとか、そういった個性が出るようになったので大きく変わりました。大会までには発売して2週間しかなかったので、そこの研究をすごく自分はしていて、このプレースタイルが強いなというのを探っていきました。自分で言えば、この大会でデ・ブライネを使っていた人はほとんどいなかったんですが、デ・ブライネはパスの特性をすごく持っているので自分はそれがすごく気に入っていて、実際に活躍もしてくれました。そこの研究は本当に誰よりもしたかなというところで、大会に活きましたね。あとは仕様という面ではコーナーキック。自分はコーナーキックですごく点を取ったんですが、今作強いなっていう技をいろいろ見つけられたのはすごく良かったかなと思います」
(※プレースタイル…選手の特徴に応じて「鋭いパス」「迅速」「容赦なし」などスキルが付与されており、プレーに大きな影響を与える)

——エビプールさんはウイニングイレブン、eFootballシリーズ出身ですが、複数ゲームで培ったセンス、仕様への適応力のようなものもあるのでしょうか。
エビプール「FIFAシリーズを本格的にやった1年目でも自分はeJリーグで優勝していたんですが、その時に周りの人から言われたのが『周りにないスタイル』ということですね。ちょっと独特な、人とは違うようなプレースタイルで、クロスが多かったり、大きい選手にボールを当ててポストプレーさせたりとか、そういったところがすごく多いんです。今回もそういった研究熱心な部分、言ってしまえば勝つためなら何でもするというか、周りからしたら『ちょっとそれ止められないよ』みたいなサッカーゲームならではのプレーを結構していたので、すぐに仕様を見つけるという研究はかなり活きたと思っています」

——あつやさんは今作に向けてどのようなアプローチをしてきましたか。
あつや「エビさんがおっしゃられたプレースタイルや女子選手の登場によって、既存の選手をどう使うか、既存の選手がどれくらい戦えるのかという点はもちろんありますね。あと自分の中で結構変わったなと思っているのは試合の時間です。オフィシャル大会で使用する試合モードは一般的に遊べるものとは別に存在するんですが、そちらでは公式のルール上9分ハーフで試合をしなきゃいけないんです。一般的なものは6分ハーフなので、9分ハーフとなると1.5倍で、純粋な試合時間が18分になります。つまり結構長いんですね。体感ではあんまりそういうのを気にしないほうだと自負していたんですけど、それでも長くて、すると何が起こるかというと、一瞬プツッと集中切れてしまったりとか、普段そういうミスはしないでしょというミスが起こりやすいのかなと思っています。いわゆる凡ミスがとても発生しやすいゲームの仕様になっているので、長い試合時間の中で、それも強い相手とひたすら連戦をしていくっていう中で、集中力を切らさないようにしようと意識していました。例えば守備する時もとにかく雑にならないようにと。大事な試合であればあるほど集中を切らさず、攻める最終局面とかではなく、ボールを取った後が一番気を使うし、最初のビルドアップに入るところを本当に大事にしよう、絶対に自分のミスで自滅して負ける試合は減らそうと思っていました。そのために大事なのは本当に前日の睡眠ですね。これまで10年ぐらいFIFAシリーズをやっているんですが、自分のプレーで大きく上積みできる部分、基礎的な部分はある程度頭打ちになっていると思っていて、もちろん細かい仕様変更に対する上積みはあるんですけれども、なかなか全体的な上積みが難しい部分なので、自分は仕上がりがうまくいっていないのも感じていたこともあって、せめて体調は良くしようと。この大会に向けては、試合時間が長くなったことに対してのアプローチとして、とにかく自分の体調を整えるということは最優先してやっていました」

——まさにアスリートのような試合への臨み方ですね。
あつや「前日に徹夜したところでおそらく効果はないので、それだったら体調を良くして、100%の力を出せるようにということを考えていました。あと試合数も結構多くて、1日7時間、8時間になる場合も結構多いので、そこの体力管理のようなものは今回意識したポイントかなと思います」

——プレーの仕様に加えて、今作で注目している選手はいますか。さきほどデ・ブライネ選手の話もありましたが。
エビプール「まずは先ほど言ったように女子選手が追加されているんですが、昨年までバロンドールを2年連続で取っていたプテジャス選手が非常に強いですね。このシリーズで強いと言われる『逆足5、スキル5』という能力があり、前線ではその選手だけすごくパスが強くて、スキルもすごく多く、トラップもすごく上手いみたいなスキルがついているので、プテジャス選手は今後の世界大会でも見ることが多くなると思います。僕自身もずっと前線で使っていて、すごく活躍してくれたので、今大会のMVPは誰かって言われたらプテジャス選手かなってくらいお気に入りです」

あつや「僕の場合はティエリ・アンリですね。今回の大会ではルール的にアイコン選手が制限されていて、1枚入れられるんですが、自分が使える候補にアンリかロナウジーニョがいて、アンリを最終的には選択しました。ロナウジーニョはスキル5ですし、能力の面でロナウジーニョが好きな人が多いとは思うんですが、アンリは守備ができるんですね。前線の選手にしては守備能力が高めというのと、あとプレースタイルも大きいです。アンリは『迅速+』というプレースタイルを持っていて、スプリント速度が上がり、ノックオンでのミスが減ります。基本的に(現実の)アンリって中央の左目みたいなイメージで、巻くシュートが印象的だったと思うんですが、でも私の場合は結構違っていて、右サイドハーフみたいな感じで使っていました。基本的にはクリスマスツリーと言われる4-3-2-1のシステムを使用していたんですけど、そこの右のシャドーで、なおかつ守備に戻らせるみたいな設定をして、めちゃくちゃ汗をかいてもらいました(笑)。長身と、足の速さと、前線の中では高めの守備能力を活かして、めちゃくちゃ右サイドを上下動させて、汗をかいてもらうっていうところで、ゲーム的にはアンリがぴったり合うという感じでした。僕はアーセナル好きなので、とんでもないことをしているなってこともわかるんですけども、もうそこは割り切って、ひたすらアンリに汗をかいてもらったことが実際にサイドの守備構築で非常に効いていたなと。また今回のFC24では大会を通してもそうですが、サイドから攻撃に来るプレイヤーが多くて、サイドの守備に対して自分は重きを置きたいなと思っていて、基本的に4-4ブロックを作って守るんですけど、アンリ選手に守備に戻ってもらいつつ、そこから超ロングスプリントでカウンターみたいのが結構ハマっていましたね」

——アンリを現代サッカーに降臨させた形ですね。
あつや「アンリにめちゃくちゃ守備をやらせる。そんなことができるのもゲームのいいところかなと思います(笑)」

——今作に向けてゲームとしての面白さはどう変わったと思いますか。
あつや「個人的にはプレースタイルの追加と今作の仕様によって、選択肢が広がったことですね。例えば今までは足が遅かったらどれだけ良い能力を持っていても、なかなかオンラインとか対戦で使用するのは難しかったです。現実にはパスに秀でた選手の中にもいい選手がいて、強みが出せるんですけど、ゲームだと『パスの精度とか誰を使っても一緒じゃん』ってことがありがちでした。ただ、今回のプレイスタイルの追加で、例えばさっき話に出たスルーパスのプレースタイルや、あとは『ティキタカ」というパスのプレースタイルでも明確に違いが出やすい仕様になっているので、『このプレースタイルを持っているとパスを通るけど、持ってないと通せない』というパスも出てきます。また、このプレースタイルを持っているとこんなシュートが打てるけど、持っていないと打てないみたいな違いも非常に出やすくなっていて、強さのバランスがよくなっています。つまり、いわゆる『このタイプの選手は弱いね』みたいなのが少ない印象があって、だからお互いに強みを出しやすいというか、選択肢が広く、もう何を使っても強いみたいな現状です。どのプレースタイルにもいいところがあって、試合の中で活躍する要素がすごくあるので、今まで使えなかった選手とかも、非常に使える可能性が広まっていて、また研究する楽しみがあるのがいいところかなと思います」

——とても面白いです。エビさんいかがですか。
エビプール「本当にあつや選手の言う通り、本当に幅が広がりますよね。今までだったらアンリ選手をアイコンの枠(※大会ではフィールドプレーヤー1人に制限)で使うなんて絶対になかったと思うんですよ。偶然に当たったとか、ギリギリ買えるからとか、好きだからとかじゃないと使わない。強い人は基本的に『R9』と呼ばれるブラジルのロナウドを使ったり、ペレを使ったりしていたんですけど、アンリを使って優勝したあつや選手が結果で示してくれましたよね。今作のプレースタイルがどれだけ大事かと。他にはケミストリー(※)も違っていて、今までであれば中盤の選手であれば、誰にも『シャドー』を使ってペース(スピード)を上げて守備を強くするというのが定番で、とりあえず足を速くすればいいみたいな考えだったんですけど、自分は例えばデ・ブライネ選手に『ガーディアン』というのをつけています。これは守備とドリブルを上げるものですが、デ・ブライネ選手が重かったのでドリブルを上げたいなと。自分はあまり中盤にペースを求めていないので。また今作から『HyperMotion V』というテクノロジーが入ったんですが、それによって中盤の選手はペースよりも守備やパスが求められるようになって、そんなにペースいらないなというところもあるので、そういった違いがすごく面白いなと思っています。あと今までよりもプレスがかかりやすくなっているので、本当に実際のサッカーみたいに同サイド圧縮もすごいので、どうやってプレスを回避しようかとか、どうやってプレスをすればいいのかっていうところに研究の余地しかなくて、今後はそれを理解できるプレーヤーが強くなっていくんじゃないかなというのは思っていますね。女子選手が入ったこともそうですし、自分はFIFA 21からやってきたんですが、研究しがいしかなくて飽きがこなくてめちゃくちゃ楽しいです!」
(※ケミストリー…選手1人あたり1つ付与できる能力を上げられるアイテム)

▼世界大会に臨むにあたって
——ここまでの話はビギナーのプレーヤーにもとても参考になると思います。ありがとうございます。一方、お二方はこれから競技シーンの選手として世界大会に臨むわけですが、コロナ禍もあって近年なかなか世界大会がなかった中、ロンドンでのオフライン大会に参加できることをどう捉えていますか。
あつや「自分の場合はそもそも世界大会に出場するということが初めてで、一応5年ぐらい競技をやってきている中で、あんまりいわゆる大本命の海外プロと戦うという機会がなかったので、純粋に自分がどこまでできるのかなと。やっと試せる、いわゆる本場で戦えるというのが非常に楽しみです。もちろん自分の中で勝ちたいなというのはあるし、勝ちに向けてやっていくというのもあるんですけど、これまでコロナ禍があって出場権を取っていても行けなかった人もいた中で、自分が世界大会に行くということはいろいろと考えました。この大会まで突破できると思ってなかった節があるので、最近ちょっと考えてみて、北アジア地域の2枠しかない枠で行かせてもらうってことで、日本を代表するってのはちょっとおこがましいですけど、代表して行く立場になるのでその責任を背負っていきたいなと。アジアから行った選手から話を聞いていても、やっぱレベルが違うという話を聞いたりするんですが、北アジア地域代表として行くので、それに恥じない試合をしたいし、それに向けて準備しよう、恥ずかしくない試合をしたいというふうに思っております」

エビプール「自分としては、ウイイレの時に一度、世界大会のような形で優勝はしたんですけど、コロナ禍だったので世界大会のオフライン大会がなくて、FIFAシリーズに移ってきた。去年はe日本代表としてあと1個勝てば世界大会に行けるというところで負けてしまって、1on1もアジアベスト5であと2回か3回勝てば世界に行けるというところで負けて行けませんでした。アビスパ福岡として出場したクラブ大会も、あと3つか4つ勝てばというところで出られず、世界大会に今まで一度も出てこなかったので、自分の中ですごくもどかしい部分がありました。自分の周りはみんな世界大会の話をしていたり、世界はすごいぞっていうところを話していた中で、自分は出られてなくて、本当に悔しい思いをしていたので、まず本当に出場できることがとても嬉しいです。また意気込みとしては、先ほど言ったように自分しか知らないことがこのゲームにはたくさんあって、海外の選手がやっていないプレーとかも自分はしているのでそこを出したいですね。まだ発売して約1か月半ぐらいですが、1か月半ぐらいでどれだけ自分が仕様を掴めているかをプレーに出していくこと、そうやって世界を驚かせるようなプレーをすることがとても楽しみです。あとは周りの選手が言っている『本当に世界はすごい』『プレスが速い』『世界は全然違うんだぞ』というところを体験できるのがとても楽しみですね。ただそこは正直、自信しかなくて、もう一つすごく楽しみな要素として、出場選手の中でも年齢が一番上だと思うんですよ。去年も出ている選手の最年長は26歳とか27歳とかで、今回はたぶん自分が最年長です。ヨーロッパの選手が基本的には本命で、南米の選手も含めてアジアの選手はそこまで(強くない)という見られ方を絶対にしていると思うし、アジアの選手で、31歳で、初出場で……っていう感じで見られていると思うので、その人たちをギャフンと言わせるのが超楽しみですね。自分としては、この大会に懸ける思いはめちゃくちゃ強いですし、本当に日本を代表して行くので、恥ずかしい試合はできないしというところで、本当に楽しみにしています。見ていてください、という感じです」

▼お互いの印象は…
エビプール「あとこれはちょっと追加で言いたいんですけど、あつや選手は強みがメンタルだと思っているんで、見てくださる方にはそこを見てほしいですね。逆転試合が去年からもすごく多いですし、僕自身もこの大会の決勝で4-1から逆転されたんですよ。ここぞというところのメンタルの強さがすごくて、そこをみんなに見てほしいなと。どんな劣勢の状況でも逆転するっていう力が本当にあって、負けているときこそものすごい決定力を発揮するんですよね。あつや選手は。(あつやのほうを見ながら)……いや、ちょっと照れないで(笑)」

あつや「突然ベタ褒めされたらめちゃくちゃびっくりしますよ(笑)」

エビプール「自分のことをずっと謙遜していたから、それだけじゃなく、良いところも見てほしいなと。やっぱメンタルの強さは本当にすごい。尊敬できるというか参考にしなきゃいけないところだと思っているので」

あつや「言われてみれば。確かに先制されてからの逆転が多かったですね。確かに言えばよかったなと思いました(笑)」

——それってどういう秘訣があるんですか?
あつや「去年から引き続きではあるんですが、自分は先制パンチを食らうことが課題でもあって、最初にポカっとやられてしまうことが多いので、そこから崩れないようにというのは考えてきました。FC24というゲームは時間の都合もあり、リアルのサッカーと違って10分〜20分程度で終わってしまうゲームなので、先制点というのが試合にかなりの影響が出るんですね。だから先制点を取ると非常に有利になり、相手がプレスに来なきゃいけない状態になります。そこで先制点を取った側が次の相手のプレスを簡単に剥がせると、もう簡単に次の点も入ってしまいます。だから逆転したい時、追いかけなきゃいけない時のプレーが大事になります。攻撃はもちろんですが、より失点を減らしながら、失点をなくしながら、後ろに気を遣いながら、前に出なきゃいけないというところで結構難しいんですね。特に相手のレベルが高くなってくると、なおさらプレス回避能力もみんな上がってくるので、なかなか難しいです。だから本当に勝負どころでミスらないようにというのが大事ですね。さっきの体調の話でもそうですけど、自分の判断力というか、どうやってゴールに結びつけるか、最後のシュートでどういうシュートを打つべきなのかとか、ここはパスにするべきなのかとか、そういう土壇場の判断力は結構長けてる方かなと思いますね。それをどういうところで身につけるかっていうと、ちょっと長くなっちゃうんですけど……」

——いえ、面白いのでぜひ教えてください。
あつや「一つ他のプレーヤーとは違うなっていうのが、『プロクラブ』モードの経験ですね」

エビプール「たしかに!」

あつや「プロクラブがどういうモードかっていうと、1人が1人の選手を操作して、最大11対11でリアルのサッカーっぽくプレーするモードです。自分はそのモードが大好きで、一緒にやるフレンドもいるので結構長くやってきました。11vs11のプロクラブが(通常の対戦モードの)1on1とどう違うかというと、全員が操作をするプレーヤーだというところです。なので守備とか攻撃もそうですけど、プロクラブではより相手に合わせられるので攻撃のスペースがないとか、ここを逃したらもうチャンスがないみたいな場面が頻繁に起こるんですね。一方、1on1ではコンピュータが操作していても最終的には操作している人が寄せざるを得ないので、基本的には1対1の連続なんです。1対1でかわしたらまた1対1みたいな。ただプロクラブはそうではなくて、1対2とか1対3、それ以上になる状況も最終場面では良くあって、1対1で勝てる選択をしてもなかなか難しくなります。ただそういうのをこじ開けるプレーもいくつかあって、それをやってきたことが1on1で活きています。たとえば相手が重心後ろめで守ってきた時、守備に人数をかけてはくるんですけど、守備の人数のかかり方、それに伴うプレッシャー、狭さはプロクラブよりは落ちるので、自分の中で余裕があると思います。寄せられているときとか、狭いスペースの中でも、ゴールの結び付け方みたいなのを多分落ち着いて考えられるのかなと。プロクラブではゴール前でより苦しい環境でプレーする機会が多いので、他の選手よりも冷静に局面を捉えて、場面場面で正解のプレーを見つける能力というのはプロクラブで積み上げたものが自分のオリジナルの部分として活きているんじゃないかなと思います。あとプロクラブでは自分でオフ・ザ・ボールの動きをしなきゃいけないので、そこも逆輸入できるところがあります。1on1でも『選手ロック』とか『ディレクテッド・ラン』という機能で自分が操作しない選手の走るコースを指定できたりするんですが、より細かいところで違いを見せるといいますか、他の人がやらないようなプレーで点を取ったりしているので、そこに注目してほしいなと思います」


——とても面白いです。プロクラブは1人の選手を操作すればいいのでビギナーでも入りやすいですし、一方で突き詰めるべき奥深さもあって良いモードですよね。ちなみにあつやさんはエビプールさんについてどのような印象がありますか。ある種、イーフトシリーズから黒船的な感じで入ってきたような印象もあると思うんですが。
あつや「自分の中ではFIFAプレイヤーとウイニングイレブンのプレーヤーは結構違いがあって、いわゆるリアル志向というよりかは、よりゲーム内の勝ちにこだわるプレーをするのをためらわない印象があるんですよね。FIFAから入った人はわりと綺麗なプレーを好むというか、もちろん勝ちには行きながらも、崩しだったりとかドリブルだったりとか、綺麗な形にこだわる印象があります。ただ、エビプールさんはその中も、とにかく対戦していて強いなというイメージがありますね。本当に『強い』という表現が正しいかなと。自分の中では強いプレーヤーと上手いプレーヤーという違いがあると思っていて、綺麗なプレーをひたすら極めたい人ももちろんいるんですけど、エビプールさんは隙がないというか、ちょっと甘えた部分が全くないみたいな印象です。淡々とひたすら強いプレーをし続ける継続力があります。だからこっちがミスったりとか、変なプレーをしたら絶対に勝てないなと思います。なのでエビプールさんと対戦するときは、こちらもまずは同じぐらい集中を切らさないように、ひたすら淡々と正解を選び続けるというのを意識して、エビさんと同じぐらい勝負に徹するっていう意識を持たないと絶対に勝てないプレーヤーかなと思います」

エビプール「たしかに自分でも上手いよりは強い派だと思っていて、うまいプレーで1点取るより強いプレーで2点取ったほうが良くない?というのが根本の考えですね。人が嫌がるプレーをひたすら続けるみたいな。昔のストーク・シティとか、今のブレントフォードとか、なんかそういう感じで、勝ちに徹する強いプレーヤーって思われるのが自分の中で好きなので、本当にあつや選手が言っている通りだと思います」

あつや「そういう部分は尊敬です。勝負事、やっぱり勝ち負けがつくモードなので、そこに対してひたすらまっすぐっていうのはすごいなと思っていて。自分も真似しなきゃいけないなと。昨年のeJリーグで優勝されたあたりでもちょこちょこ対戦させていただいていて、わかってはいたんですけど、なかなかそれを自分取り入れることが難しい時期もあったので、自分にできないというか、やっぱり全然違うなと。大会に出ているプレーヤーとしての強さみたいなのが非常に目立つプレーヤーという印象で、強いとはこうあるべきという選手です」

——そこはエビプールさんがユニフォームを着て戦っているアビスパ福岡にも通ずるものがありますよね。ちょうどルヴァン杯の決勝も控えています。(※インタビュー収録は10月末)
エビプール「そうですね。ちょっとそれについても話をしたくて、アビスパ福岡は今度の11月4日にルヴァンカップの決勝戦があって、自分は11月10日からロンドンで大会があるというのも意味があるのかなと。僕自身も一度、eJリーグの優勝報告会でスタジアム行って、本当に温かいアビスパ福岡のサポーターの方の声援を受けているので、本当にルヴァンカップで優勝して、自分も世界大会で結果を残したいです。また11月にはFCS(FIFAコミュニティシリーズ)というオフラインの非公式大会があるんですけど、それで今回決勝進出すれば、決勝ラウンドはららぽーと福岡で行われます。ちなみに今回、世界大会の出場者は64人いるんですけど、もしベスト16に残れば今後1月末までずっとロンドンにいるのかもしれないというスケジュールになります。ただ、もし可能であれば、そこにロンドンから福岡に帰ってきて参加したいなと。実際に帰ることができるかどうかは現時点ではわからないですが、もし僕が実際のサッカー選手のように、FCS最終予選を戦って、ロンドンに行って、FCSのために福岡に戻ってきて、またロンドンに行くっていうスケジュールをこなすことができれば、まだeスポーツってただのゲームでしょって思われる印象があると思うんですけど、少しでもアスリートに近い見られ方をするのかなと思います。本当に自分が本当のサッカー選手のような長距離移動ができたら、本当にeスポーツの印象も変わると思いますし、アビスパ福岡の方にも会えて本当にいいことになると思うので、それを目標に頑張りたいと思っています」

——それはいいシナリオですね。またあつやさんが所属する東京ヴェルディもJ1リーグ昇格争いをしています。こちらもいい流れですよね。それを含めた意気込みをお願いします。
あつや「ヴェルディは現時点で4位にいて、3位とも勝ち点で並んでいて16年ぶりの昇格がかかっている状況です。盛り上がりがもう最高潮みたいな感じです。かつてFIFAシリーズでJクラブが搭載されていたことがあるんですが、J2のヴェルディはそこに入れないという悔しい思いをしたこともあるので、いっそう昇格してほしいという思いがあります。また自分がeスポーツ、ヴェルディの看板を背負わせていただいて、eスポーツの活動している中で、ヴェルディファミリーをもっと盛り上げる存在になれたらいいなとは思いますし、ヴェルディの看板に恥じないプレーをして一緒に昇格を祝えたらいいなと思います」

(インタビュー・文 竹内達也)
竹内達也
Text by 竹内達也

TOP