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[Fリーグ]残り40秒の決勝点に見えた名古屋FPリカルジーニョの真価

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 このまま試合終了か――。多くの人が、そう思ったに違いない。Fリーグ第6節のバルドラール浦安名古屋オーシャンズの一戦は、1-1のまま残り1分を切った。浦安の守備は非常に固く、リーグ5連覇中の名古屋も攻めあぐねていた。

 しかし残り40秒、思わぬ形でゴールが決まる。左CKからの流れで、右サイドにいたFP森秀太にパスが入る。森が素早く折り返したボールは、PA内にいた浦安の選手に当たり、ゴールへと転がった。ピッチ上では、殊勲の森をFPリカルジーニョが高々と抱き上げていた。

 決勝点となったこのゴールには、伏線がある。その直前のCKを得たプレーで、同じような局面があった。左サイドでボールを持った森はドリブルで縦に仕掛けたが、体を寄せた浦安DFにクリアーされてしまいCKとなった。森はボールを奪われたわけではない。決して悪いプレーには見えなかった。しかし、その時、小柄なポルトガル人が烈火の如く怒り出した。この場面が、カギになったと森は言う。

「ポルトガル語だったので、ニュアンスしか分からなかったのですが『中に切り込んで打て!』か、『中に入れちまえ!』って言っていたのだと思います。結構、怒っていたので僕もビックリしました。そんなに怒るんだって。でも、あのときに、ああやって言われていたこともあったので、中に(北原)亘さんも見えたので、早いボールを入れようと思ったのが最後のゴールにつながりました」

 リカルジーニョの指示が、あの決勝点につながっていた。

 予測のつかない動き、華麗なテクニック、攻守における1対1の強さ。どうしてもプレー面に目を奪われがちだが、リカルジーニョは常に周囲の選手たちにプレー向上のヒントを与え、同時に自身のプレーしやすい環境もつくろうとしている。ベンチにいる時にも、最前線に入るピヴォの森岡薫と話し合い、ピッチ上にいるときも流れが切れれば、ベンチにいる選手たちに声を掛けて動きを確認していた。

 決勝点の前の場面、何を森に伝えていたのか。リカルジーニョに聞いた。

「もう少し判断を早くして、シュートまで持って行ってほしかったんです。チームとしてシュート数も少なかったし、残り時間も少なかったので。一瞬、パスコースが空いて、中に当てることができた。でも、次の瞬間には相手も守備を整えてしまった。そこで早く判断をしないといけない。それに彼がモチベーションを高くして、より集中するために言ったので、そんなに怒っていたわけではいないですよ」と温厚な7番は笑い、こう続けた。

「あれで(森が)もう少し早く打たなければいけないと切り替えてくれたのなら、嬉しいですし、良かったですね。伝えていなければ、またキープしていたかもしれません。今日の試合はこれまで試合に出ていない選手も多く出ていました。そこで得点できて、勝つことができたのは、チームワークが良くなるためにも大切なことだったと思います。今後につながる勝利になったと思います」

「まだ体を動かし始めて1か月も経っていないから、本調子からは遠い」とリカルジーニョは言う。それでも、1年ぶりにチームに戻って来たリカルジーニョは、確かな手ごたえを感じている。

「僕がいなかった1年の間も、みんな本当にレベルアップしたと思います。2年前はリードされてから、ひっくり返すことができずに負けた試合がありました。それが非常に悔しかった。今年は無敗でいきたい。そういう高い目標を持てば、チームのモチベーションも上がりますし、チームもさらに成長すると思います」

 世界一のフットサル選手と呼ばれるリカルジーニョは、決して現状に満足することはない。6試合を終えて5勝1分け。唯一無敗で早くも定位置の首位に立っている名古屋は、リカルジーニョとともに、どれだけの飛躍を見せるだろうか。

(取材・文 河合拓)

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