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[選手権予選]「守り倒した」常葉学園橘、全7試合無失点で静岡制す!!

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[11.25 全国高校選手権静岡県大会決勝 藤枝明誠0-0(PK3-4)常葉学園橘 エコパ]

 25日、第91回全国高校サッカー選手権静岡県大会決勝が静岡スタジアムエコパで行われ、ともに2回目の全国大会出場を狙う藤枝明誠と常葉学園橘が対戦。0-0で突入したPK戦を4-3で制した常葉橘が7年ぶり2回目の全国大会出場を決めた。出場48校が出揃った全国大会は12月30日に開幕。常葉橘は12月31日の全国大会1回戦で長崎県代表の長崎総合科学大附と対戦する。

「大会に入る前に自分たちの実力が伴っていないことは分かっていた。チーム全員が守ろうという意識がついた。失点を少なくしようと言ってきて、最終的に優勝した時に失点ゼロっていう結果にも表れて。自分たちが目指しているものが結果として表れてよかった」。県大会全7試合無失点で上り詰めた“王国”静岡の頂点。常葉橘のCB石川大輔主将(3年)の表情には、やり遂げた大仕事の充実感が満ち溢れていた。

 準々決勝で全国リーグのプレミアリーグEASTに所属する静岡学園を1-0で下し、準決勝でプリンスリーグ東海2位の浜松開誠館を0-0PK戦の末に下した堅守はこの日も崩れなかった。静岡学園戦決勝ゴールのFW山本一輝を出場停止で欠く常葉橘は、試合開始から延長を含めた100分間の勝負を想定した試合。新井裕二監督も「前半も後半の立ち上がりも(選手に)『いいところ見せてやろう』というところが見えたので、その時はちょっと制御しました。結局そういう時にピンチになっていたので『抑えなさい』『我慢してやることをしっかりやりなさい』と確認しました」と勢い良く前に出ることへブレーキをかけていたが、今大会の方針として自陣で人数をかけて守り倒すことを選択したチームは最後まで「勝つために守る」ことに集中していた。

 3年ぶりの全国進出を狙う藤枝明誠は前半4分、スペースを突いたMF嘉茂良悟(3年)のラストパスから10番MF小林舜典(3年)が決定的な左足シュート。9分には小林の左CKからCB大坪律己(3年)が放ったヘディングシュートがゴール右ポストを叩くなど押し込んでいく。一方、常葉橘はスピードを活かした突破を見せる左MF鈴木蒼太朗(2年)とキープ力に優れた右MF島田隼希(3年)が前線までボールを運ぶ場面はあったものの、相手に慌てさせるような場面をつくることができない。

 ただ藤枝明誠を徐々に自分たちのペースに巻き込むことに成功していた常葉橘はディフェンスラインでボールを回す藤枝明誠の攻撃に落ち着いて対応し、楔に入れてきたボールは石川とCB登崎雅貴(3年)の両CBがシャットアウト。藤枝明誠はダイレクトパスを数本つなぐ技術も見せていたが、大渋滞となっていた敵陣で決定的な崩しをすることができない。前半終了間際につくったビッグチャンスもシュートの精度を欠いて活かせず。一方、常葉橘はMF久保山純汰(2年)とMF石井光輝(3年)が中盤の底の位置で球際の強さと対応力の高さを発揮して相手の攻撃を封鎖。また島田が「(守りきれる)自信はありました。石川と登崎がリーダーシップを取れるんで。(あの2人は)驚異的ですね。(彼らが)いるから大丈夫。安心して攻められる」と評する2CB中心に押し込まれた時間帯もゴールを許さなかった。

 再び攻撃が停滞した藤枝明誠は不用意なミスパスや、精度を欠いたクロスからボールを奪われるとロングボールで押し返される場面の連続となってしまった。逆にブレずに守っていた常葉橘は後半19分、“切り札”のFW前田直輝を投入。ダイナミックなドリブルや縦パスへの鋭い反応を見せるFW投入で活気づき、相手を押し返す。そして33分には右サイドから押し込むと、クロスを前田がGKと競り合いながら頭で合わせる。ボールは藤枝明誠CB大坪のスーパークリアによってゴールにはつながらなかったが、一発があるところも見せて延長戦へと持ち込んだ。

 延長戦では藤枝明誠が縦パスから高須が決定的な左足シュートを放てば、「延長戦で勝負をかけた」常葉橘も前田の豪快な突破からMF池田誠(3年)が左足を振りぬくがスコアは動かず。0-0のまま全国切符の行方はPK戦決着に委ねられることとなった。ともに1人目のシュートが枠を外れる波乱のスタートとなったPK戦は先攻・藤枝明誠の2人目、SB川島弘(3年)のシュートを常葉橘GK北郷健太郎(3年)が左へ跳んでストップ。優位に立った常葉橘は2人目の島田から石井、登崎と成功すると、最後は5人目のSB筒井康太(3年)が右足でゴールへ突き刺して決着をつけた。

 中高一貫指導で力をつけた常葉橘はCB薗田淳(現町田)やMF杉本真(現栃木)らを擁した05年度に全国大会初出場を果たしたが、その後チームは7年間で監督が4人変わるなど低迷。今年も県総体で16強敗退し、プリンスリーグ東海では最下位に終わった。だがスタイルの変更が結果につながる。ボールを動かし、アグレッシブなサッカーに取り組んできた夏休み明けの初戦(対藤枝明誠)をシュート1本で落とすと「勝ちたければ守ろう」と方向転換。そこから堅守・橘はつくり上げられた。新井監督は「こうでなければ勝てないと思っていました。勝つならばこれしかない。この子たちが根性を見せてくれました。(苦しい時期を過ごしてきたが)今、表情見ていても逞しくなりましたよ」

 意地で勝ち取った静岡の頂点。石川は「静岡県の頂点に立ったプライド、自信をもって、全国でどこまでできるかすごく楽しみですね。プリンスリーグで落ちちゃったり後輩に何も残せていなかったですけど、全国大会で1勝すれば自分たちの歴史を変えることが出来る」。今冬、最後の全国大会代表校となった常葉橘。相手を圧倒するような攻撃力はない。それでも、激戦区・静岡を無失点で制したチームは結果を残したスタイルを全国でも変えずに、まずは全国初勝利に挑戦する。

(取材・文 吉田太郎)
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