beacon

[選手権]「夢は叶う」鵬翔・松崎監督、天国の息子に捧げる国立切符

このエントリーをはてなブックマークに追加

[1.5 全国高校選手権準々決勝 立正大淞南1-3鵬翔 フクアリ]

 天国の息子へ捧げる国立への切符だった。鵬翔(宮崎)の松崎博美監督(62)は「このチームはこんなに強かったかなと。そう言いたくなるぐらいに選手たちはたくましかった」と目を潤ませた。同校初、宮崎県勢としても初のベスト4。国立競技場で行われる準決勝への切符を手にした。

「夢の国立ですね」。83年のサッカー部創設とともに監督に就任した松崎監督にとって、今年は指揮を執ってちょうど30年目の節目の年だった。「5年目に初めて選手権に出場して、(開会式で)子供たちが国立で行進する姿を見て、鳥肌が立った。やっぱりこれだなと」。サッカーの聖地に対する長年の思いがあった。

「常に夢に思ってやってきたけど、まさか行けるとは思わなかった。夢は見れば叶うのかなと。宮崎の子供たちにも国立は夢じゃないんだと伝えることができた。歴史を変えてくれたのかなと思う」

 もう一つ、特別な感情があった。星稜(石川)との準決勝は12日。1週間空くということもあり、チームはこの日、いったん宮崎へ戻った。「明日、うちの子供の一年忌があるんです。帰って、法要もしないといけない」。松崎監督は静かに語った。

 昨年1月8日、長男の康博さんが34歳の若さで急逝した。康博さんも小学生のころからサッカーを始め、鵬翔に進学。「選手としてはそんなにうまくはなかったけど、特に海外サッカーが好きだった」という。松崎監督の夫人もスタンドで康博さんの遺影を持って、鵬翔の勝利を祈っていた。

 1回戦、2回戦と0-0からのPK戦で勝ち上がり、「神がかり的」と評した松崎監督。「神がかりという言葉を何回も使わせていただいたけど、そういう思いがずっとあった」。万感の思いがこみ上げてきた。

 選手たちには「お前らも行きたいだろうけど、俺はもう何年もないから、まずは俺を国立に連れていってくれ」と冗談めかして語っていたという。「30年、長かったですね。30年も指導させてもらえていることがありがたい」。夢は叶った。それでも、戦いはまだ終わらない。次は決勝、そして日本一へ、鵬翔の挑戦は続く。

(取材・文 西山紘平)

【特設】高校選手権2012

TOP