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[選手権]感謝の気持ちを忘れずに…入学前に被災、避難区域に位置する富岡高が頂点を目指す

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 5年ぶりに全国の舞台に駒を進めた福島県代表富岡高の初戦は松山商(愛媛)に決まった。「情報がない相手なので、準備期間がとても大事になってくる」と高瀬凌平(3年)主将は力を込めた。

 高瀬らが入学直前の2011年3月11日、東北地方を震源とした東日本大震災が発生した。福島県も甚大な被害を受け、中でも福島第一原発で起こった事故は深刻で、半径10キロ圏内の地域に立ち入り禁止命令が下った。富岡高校のあった双葉郡富岡町も禁止区域に位置していたため、避難を余儀なくされた。

 高瀬らは3年間、福島市にある福島北高校のグラウンドを借りて練習を行ってきた。「感謝の気持ち、恩返しという意味でも全国大会に絶対出場しないといけないという思いがあった」。強い気持ちを持ったイレブンは高校生活最後の大会で全国への切符を勝ち取った。「凄かったね」「誇りに思うよ」。同じく避難を余儀なくされた地元住民からは温かい言葉が高瀬らイレブンに届けられた。

 選手の中には今でも避難生活を続けるメンバーもいるという。そんなイレブンが入学してから一度たりとも諦めなかったという最初で最後の全国の舞台。「最高ですね。国立の最後の舞台で自分たちが福島県の代表として出場できるのは誇りです」。被災地の思いを乗せて――。富岡高の挑戦が始まる。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)
[写真]握手で健闘を誓い合う富岡高高瀬凌平(3年=左)主将と松山商木田航矢主将(3年)

(取材・文 児玉幸洋)
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