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[選手権]吹き荒れる履正社旋風! 青森山田も飲み込む

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[1.3 全国高校選手権3回戦 青森山田 1-1 (PK4-5)履正社 ニッパ球]

 第92回全国高校サッカー選手権は3日、3回戦を各地で行い、ニッパツ三ツ沢球技場の第2試合では、青森山田(青森)と履正社(大阪)が対戦した。両チームがスローインから1点ずつを取り合った試合は、1-1のままPK戦に突入する。PK戦でも両者譲らずにサドンデスに突入したが、履正社が5-4でPK戦を制し、初出場で8強入りの快挙を成し遂げた。

 初出場校で唯一3回戦に進出していた履正社だが、その勢いは17回連続19回目の出場の青森山田も止められなかった。「青森山田さんという強豪なので、胸を借りるつもりで戦ったのですが、運も味方して良い結果が得られたなというところですね」と、平野直樹監督はニンマリ。前半から青森山田にボールを持たれる展開される苦しい展開となった履正社だったが、一人ひとりが粘り強く対応。ボールを回収してからは、FW瀧本高志(2年)にボールを預け、反撃のチャンスを窺った。そして、最初の決定機をモノにする。

 前半18分、左サイドでスローインを得ると、DF小川明(2年)が得意のロングスローをゴール前に放り込む。これをDFがクリアしたこぼれ球をMF川畑隼人(1年)が右足ボレーで合わせる。これがゴール右に飛び込み、先制点を記録した。このゴールで自信をつかんだ履正社は、同22分にも瀧本が遠い位置からミドルシュートを放ち、追加点を狙った。

 先制された青森山田は、その後も長短のパスで履正社の守備を崩そうとする。前半27分にはPA内でボールを受けたFW李相赫(3年)が、強烈なシュートを放つ。しかし、これはクロスバーに嫌われ、得点は決まらなかった。このまま前半を折り返す。

 後半に入っても、青森山田がボールを支配する展開は続くが、履正社もシュートを打たせない。逆に速攻から抜け出そうとする選手をファウルで止めたMF山田式典(3年)、MF石川玲(3年)が警告を受けるなど、不穏なムードが漂い始める。

 反撃の糸口を見つけたい青森山田は、後半9分にFW辛島昌幸(3年)を下げ、FW橋本峻弥(3年)を起用する。しかし、パス回しにミスが散見され、前線までボールをつなげない。一方、平野監督が「途中からは青森山田さんのスピードやパワーに、選手たちが対応できるようになってきた」という履正社は、低い位置から細かいパス回しを見せて青森山田のプレスをかいくぐる場面をつくるなど、決して守備一辺倒の戦いにはならなかった。

 だが、やれることが増えてくるときに、落とし穴はあるものだ。後半24分、最終ラインでクリアーミスを青森山田に奪われると、辛島にシュートを打たれる。これはクロスバーを叩き、タッチラインにクリアして難を逃れたかと思われた。しかし、このスローインをMF飯島諒(3年)にヘッドでつながれると、PA内の橋本にニアサイドから鋭いボレーシュートを決められ、試合を振り出しに戻された。

 同点に追いついた青森山田だが、ここから履正社をたたみ掛けることができない。高い位置でボールを奪い、セカンドボールも回収し、ボールを保持するが、フィニッシュに持ち込めない。結局、チャンスらしいチャンスは、後半37分に前線からプレスをかけた際に、DFのクリアボールが当たり、ゴール方向に飛んで行った場面と、後半ロスタイムに右サイドから李相赫が上げたクロスに、辛島が飛び込んだ場面くらい。このまま、試合はPK戦にもつれこんだ。

 先攻の履正社、高校の青森山田、ともに4人が決めて迎えた履正社5人目、MF角野光志朗(2年)のゴール左下隅を突いたシュートを、U-18日本代表候補GK田中雄大(3年)が完璧にはじき出す。しかし、続く青森山田5人目の李相赫の強烈なシュートは右ポストに嫌われて、得点できない。命拾いした履正社は、6人目の小川が中央に決めて成功。続く青森山田6人目・瀧本のシュートを履正社の誇るPKストッパーGK安川魁(2年)が右腕一本で弾き出し、勝負あり。

 優勝候補の一角にも挙げられた青森山田だが、初戦となった2回戦に続き、80分間で勝利を決めきれずに4大会連続となる3回戦での敗退。黒田剛監督は「ここまでのチームを1年間かけてつくってきた。このあと、これ以上行くとしたら、どういうチームをつくればいいのか、自分の中でもわからなくなってきています。でも、高校サッカーだから、挑戦をし続けるしかない」と、自分に言い聞かせた。

 履正社の平野監督は「運があったかな。次やったら、多分、勝てないでしょ?」と冗談を飛ばしつつ「わかんないかな。うちの子たちも、青森山田さんにこの試合を通じて成長させてもらったので。最後は順応して、対応して、やれていたので。この選手権で大きく成長している」と、チームの成長を喜ぶ。一戦ごとに成長している履正社。準々決勝で対戦するのは、監督の母校でもある四日市中央工(三重)だ。

(取材・文 河合拓)
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