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[選手権予選]京都準々決勝で実現したプレミアリーグ勢対決!京都橘が雨中の熱戦制す!!

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[11.1 全国高校選手権京都府予選準々決勝 京都橘高 3-2 東山高 山城総合運動公園]

 第93回全国高校サッカー選手権京都府予選は1日、宇治市の山城総合運動公園で準々決勝が行われた。“ベスト8でぶつかるにはもったいない”という声も聞かれた京都橘高vs東山高の注目カード。両者は今季、プレミアリーグと高校総体予選で3回顔を合わせており、成績は1勝1敗1分。選手権予選という集大成の場での決着を見届けようと、会場には多くの観戦者が訪れた。

 試合は大一番という緊張感に、昨晩から降る雨でグランドがスリッピーという条件も重なって静かな立ち上がり。互いにロングボールから敵陣を狙う中、徐々にペースをつかみはじめたのは京都橘だった。14分にセットプレーの2次攻撃から左SB小川礼太(2年)が放ったヘッドは東山GK迫琢磨(3年)のセーブに阻まれるが、その後も中野克哉(3年)と岩崎悠人(1年)の2トップや右MF大野挙弥(3年)を中心にサイド攻撃を仕掛けていく。

 東山はなかなか前線で起点を作れずにいたが、22分に少ないチャンスを活かした。左サイドのMF守屋諒(2年)からのクロスを、ゴール前に走り込んだMF高木將圭(2年)が押し込んで先制点を奪う。2年生コンビによるゴールに沸き立つ東山ベンチと応援席。だが、3分後、今度は京都橘サイドにも歓喜の瞬間が訪れる。中野が蹴った右CKを、ニアサイドで大野が渾身のヘッドで叩きこんでスコアをイーブンに戻してみせた。中野が「前半のうちに追いつけたのは本当に大きかった」と語ったように、精神的にも大きな意味を持つゴールにより1-1でハーフタイムを迎えている。

 雨がやんで迎えた後半も、試合は京都橘ペース。6分に志知大輝(3年)がミドルシュートを放てば、12分には大野がクロスに飛び込んで相手ゴールを脅かす。そして14分、ついに逆転弾が生まれる。1点目と同じく中野が蹴った右CKはゴール前でGK迫が弾くが、こぼれ球を拾ったMF仙頭啓生(3年)は敵味方が入り乱れるゴール前に存在したシュートコースを射抜いてネットを揺らした。さらに27分には右SB倉本光太郎(3年)からパスを受けた中野が東山DFとの1対1をドリブルで抜き去り、左足で追加点を奪う。

 京都橘が流れをつかんで2点リード。これで勝敗の行方は大きく傾いたと思われたが、ライバル対決はそう簡単に終わらない。29分、ルーズボールに飛び出した東山GK迫と、スライディングを慣行した京都橘・大野が交錯。このプレーで主審は大野にレッドカードを出し、京都橘は10人となってしまう。残り時間は10分。すかさず東山・福重良一監督は交代カードを2枚切って、攻撃的布陣に変更する。敵陣へ押し込む回数が増えて行くが、自陣で守備を固める京都橘を崩せない。アディショナルタイムに突入した43分には左サイドの守屋からの折り返しをFW鎌田大地(3年)が押し込んで1点差に迫るが、時すでに遅し。3-2のスコアのまま、試合終了のホイッスルが会場に鳴り響いた。

 試合後、東山・福重監督はセットプレーからの2失点を悔やむと同時に「攻撃の形が作れない時間が長かった。鎌田にボールが入ってからの(周囲との)関わりも少なかった」と攻撃について振り返っている。前線にスピードのある選手が揃う京都橘のカウンターの鋭さはこれまでの対戦で嫌というほど経験しており、両SBは自陣のスペースが気になったのか、攻撃参加の回数は多くなかった。それでも鎌田が起点となって局面を打開できれば良かったが、相手の堅固な守備を前になかなかチャンスを作り出せず、数的優位となった試合終盤も思うような崩し方ができたのは僅かだった。

 一方、京都橘にとっては会心の勝利だ。試合の入り方が良く、先制点こそ奪われたが、すぐに同点に追い付くことに成功。コンパクトな陣形を保って、攻守両面で持ち味を発揮している。印象的だったのは後半18分のシーンだ。スコアは2-1、東山が攻勢に出ようとした状況で自陣に押し込まれたが、ボールを拾うと高速カウンターが発動。少ないタッチ数でハーフラインを超えて一気に敵陣へ入ると、前線の中野の動き出しを見てサイドから鋭いアーリークロスを送り込む。これはボールが早すぎて直接は合わなかったが、逆サイドに流れてボールに追いついた中野の回りには自陣から駆け上がってきた山村龍平(3年)らがおり、最終的にシュートまで持ち込むことで相手に傾きかけた流れを引き戻した。守備で耐えつつも、勝負どころと感じれば思い切って前に出て行く判断と活動量。米澤一成監督は「力のないチームがどうやって試合の流れを作るのか。1年間、プレミア(リーグ)でやってきたことをピッチで出せた」と話す。プレミアリーグでは苦しい戦いが続いているが、高いレベルの中で貴重な経験値を積み上げてきた。中野も「“ここぞ!”のスピードで相手を置き去りにするのは、僕ら(3年生)が1年生の頃から磨いてきたこと。それがチームの得点パターンになってきた」と自信を持っている。

 東山との大一番を制したが、京都大会はまだ終わっていない。応援席への挨拶を済ませてロッカールームに引き上げる際、喜びに沸く選手たちに向けて川上耕平コーチは「まだベスト8が終わっただけだぞ!」と声を掛けて、手綱を締めていた。ベスト4に勝ち進んだ久御山高、立命館宇治高、福知山成美高はいずれも全国大会出場の経験を持つ強敵ばかり。3年連続出場を目指して、京都橘は8日の福知山成美との準決勝に挑む。

[写真]同点弾を決めて、喜びを爆発させる京都橘MF大野

(取材・文 雨堤俊祐)
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