[1.12 全国高校選手権決勝 前橋育英高 2-4(延長)星稜高 埼玉]

　引退試合を戦っていた。この試合を最後にサッカーを辞めると決断していた星稜高(石川)のDF高橋佳大(3年=左)は、試合終了のホイッスルが吹かれるまで鬼気迫るプレーを披露し続けた。

　序盤から1対1での強さを示すだけでなく、絶妙なカバーリングで危機の芽を未然に摘み取り続けた高橋。しかし、1点をリードして迎えた後半8分、「1失点目では体を寄せ切れずに悔しい思いをした」と振り返ったように、FW野口竜彦(2年)に競り合いを制されて同点ゴールを叩き込まれてしまう。さらに2分後にはMF渡邊凌磨(3年)に逆転ゴールを奪われ、星稜は逆転を許した。

　しかし、高橋には信頼できる心強い仲間がいた。「逆転ゴールを決められたときは焦りましたが、前線の選手が声を掛けてくれました。まだあきらめていないと伝わったので、ここで踏ん張らないといけないと思いました」。後半19分にDF原田亘(3年)が同点ゴールを奪い延長戦に持ち込むと、延長戦前には再び仲間から声を掛けられる。「森山(泰希)が『絶対に決めるから、踏ん張れ』と声を掛けてくれました。そうしたら、アイツが本当にやってくれて、マジで格好いいなと思いましたよ」と、延長前半5分に森山が有言実行の勝ち越しゴールを奪う姿を最終ラインから見つめた。

　悲願の日本一に輝いた。これからのサッカー人生に弾みがつくと思われるが、高橋は「自分はサッカーを辞めます。小学生のころからサッカーをしてきましたが、今日が僕の引退試合でした」と高校3年の初めに決断したという『引退』の二文字を口にした。

「サッカーをずっと続けてきたわけですから、生半可な決断ではありませんでした。でも、僕にはサッカー以外に真剣にやりたいことがあります」と詳細は話せないとしながらも決断の理由を明かすと、「だからこそ、絶対に選手権のメンバーに入って、日本一になって終われればと思いながらここまで続けてきました。自分なりに必死に努力してきて、それが日本一という結果に結び付いたので本当に良かったです」とサッカー人生のすべてを賭けた選手権で、目標としていた頂点まで辿り着いたことに晴れやかな表情を浮かべた。

「苦しかったこともありましたが、この優勝ですべてが報われました。最高のサッカー人生でした」。17歳の若者は一つの区切りをつけて、新たな人生に向かって歩き出す。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)

(取材・文　折戸岳彦)

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