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[選手権予選]怒涛の前半40分間で八千代松陰を圧倒、流経大柏が千葉連覇へ前進

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[11.1 全国高校選手権千葉県予選準々決勝 流通経済大柏高 4-0 八千代松陰高 東総運動場]

 第94回全国高校サッカー選手権千葉県予選は1日に準々決勝を行い、昨年度全国4強の流通経済大柏高八千代松陰高と対戦。前半2分にMF宮坂昂輝(2年)が決めた先制ゴールなどによって4-0で勝ち、習志野高と戦う準決勝(11月8日)へ進出した。

 今季は高円宮杯プレミアリーグEASTで降格圏内の9位と苦しんできた流経大柏が、特に前半は復調を感じさせるようなハイパフォーマンス。本田裕一郎監督は「毎回こんな試合ができればいいけれど、こんな試合は2度とないよ。10試合で1回くらいだよ」と笑ったが、それでも前半は指揮官が「昨日、『見ている人が本当に勝ちてえな、と感じるような動きをしろ』と言ったんですよ」というように、気迫が周囲に伝わってくるような40分間で八千代松陰を圧倒した。

 まずは2分、流経大柏はFW織田敦暉(3年)の左ロングスローをニアサイドのFWジャーメインアレクサンダー正(3年)が頭で中央へ折り返す。これをゴールエリアに飛び込んできた宮坂が頭で押し込んであっという間に先制点を奪った。ジャーメインと織田の2トップを中心に、例え連動性を欠いても、エネルギッシュにボールを追い回す流経大柏の前に八千代松陰はセットプレーを献上。流経大柏は立ち上がりの10分間で敵陣でのロングスローとFK各2本とCK4本をPAへ放り込むなど完全に押し込むと17分、中盤でのインターセプトから左前方へドリブルした宮坂が絶妙なスルーパスを通す。これをジャーメインが右足でゴールへ流し込んで2-0とした。

 八千代松陰も10番CB茂呂駿佑(3年)を起点に攻撃を組み立てて反撃。流経大柏の圧力にもひるまずにかいぐってボールを前方へ進めようとする。19分には左MF岡郁樹(3年)がMF柳田直樹(3年)とのワンツーからさらにドリブルで深く切れ込むなど対抗するが、簡単に敵陣までボールを運ばせてもらえない。すると24分、流経大柏は右ショートコーナーからリターンを受けた1年生MF菊地泰智が左足でゴール方向へのクロスボール。混戦を抜けたボールがそのままゴールへ吸い込まれて3-0となった。

 流経大柏は28分にもMF富樫和樹(3年)の左足ミドルがクロスバーを叩き、36分にはカットインから右足を振りぬいた織田のシュートがゴールを襲う。そして39分にはカウンターから左の富樫がジャーメインに当てると、ジャーメイン、PAへ走りこんだ菊地がいずれも1タッチで繋いで宮坂が決定的なスライディングシュートを放った。これはゴールのわずか右へ外れたが、まさに怒涛と言える40分間。織田のロングスローや2列目で存在感放つ菊地、宮坂がPAを強襲するなどゴールを貪欲に狙い続けた流経大柏が3-0で前半を折り返した。

 流経大柏は後半7分にも富樫の展開から右SB黒澤丈(3年)がクロスボール。GKが弾いたボールをジャーメインが1タッチで押し込んで4-0とする。この後は前半途中から投入されていた八千代松陰GK内山貴博(3年)の好守の前に追加点を奪えず。また早い段階でCB本村武揚(3年)や織田らを交代させたチームは攻守の迫力が低下し、特に守備ではボールを正確に動かす八千代松陰からインターセプトすることができなくなった。それでもプレスをかけ続ける流経大柏は、本田監督の指示によって応援席の控え部員たちがボールを失ってから10秒以内に奪い返すための意図を込めたテンカウント。大きなリードもあってか、後半はペースが落ちたものの、流経大柏は最後まで走りきって4-0で快勝した。

 9月に本田監督が現地視察したというラルフ・ラングニック監督率いるライプツィヒ(ドイツ2部首位)の試合映像を八千代松陰戦前日に2回見て臨んでいた流経大柏。CB浜野駿吾(3年)が「勝ちたい気持ちが凄くて、それが全面に出ている試合を監督に見せられている」という映像によって高いテンションで試合に臨んでいた流経大柏はMF菅原俊平主将(3年)が「監督からも『言葉じゃなくて、行動、プレーで勝ちたいんだな、とみんなに分からせないけない』と言われていたんで。とにかく自分はボールにがっついて。(自分の理想は)ジョン・テリーなんで(セカンドボールも)オール、ヘッドで。上手いやつはいるので自分は土の役割をしなければいけない」とセカンドボールの攻防に頭から飛び込んでマイボールにしようとしていたほか、球際での攻守、声でも“挑戦者”の八千代松陰を上回った。

 加えて、流経大柏はライプツィヒ流で「鉛筆」をイメージしていると菅原が説明するサッカーを披露した。オールプレスでボールを奪うと、横パスをしたり、不要にボールをこねることなく、ゴール方向へ一直線の攻撃。2日前にBチームからいきなりトップチームのFWに抜擢されたというジャーメインへ向けてボールを放り込む。そしてサイドへ開いた際は間髪入れずにクロスを上げて、元帝京高監督の古沼貞雄氏から指導を受けている1タッチのシュート。途中ポゼッションする余裕もあったが、ロングボールに相手が苦戦していたこともあってその攻撃を継続し、前半で一気に試合の大勢を決した。菅原が「これの感覚を忘れないでやれればいい。これでみんなが満足しないで、いい準備してくれれば」と語ったようにイメージの共有ができていた試合をまた披露できるようにトレーニングに取り組む。

 現3年生が1年時には全国総体で準優勝し、高体連のチームとして初めてプレミアリーグEASTとチャンピオンシップを制した。そして昨年も選手権で全国4強。だが今年はここまで結果が出ていない。浜野は「自分らが1年の時とか勝って当たり前みたいな感じがあったので、自分らもそうだろうというのがあった。3年になって勝てなくなってきて、違うとなって。インハイは千葉1位が取れたけれど全国3回戦で負けて、プレミア再開して負けて。(プレミアリーグは残留争い中だが)でも去年みたいに(千葉で)選手権取れれば少なからずチャンスがあるとみんな考えている」。このままでは終われない。選手権予選を制し、プレミアリーグ残留、そして全国大会での躍進に繋げる。浜野は「(流経大柏は)2年連続行ったことないので。2年連続流経が全国出て、去年以上の成績を残せるようにリーダーシップ取ってやっていきたいです」と語り、本田監督も「今年は随分苦しんだから何とか勝たせたいよね」。まだ本物ではない。だが、苦戦を強いられてきた世代が、これから迎える厳しい戦いを勝ち抜くための刃を確実に研ぎ澄ましてきている。

[写真]前半2分、流経大柏は先制ゴールの宮坂をチームメートたちが讃える

(取材・文 吉田太郎)
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