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[選手権予選]強風、相手GKの好守に苦戦も秋田商が自慢の走力と堅守で42回目の全国王手!:秋田

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後半36分、秋田商高はMF森外健太(左)が決勝ゴール

[10.20 全国高校選手権秋田県予選準決勝 秋田商高 1-0 秋田工高 八橋陸上競技場]

 第95回全国高校サッカー選手権秋田県予選準決勝が20日に行われ、第1試合では交代出場のMF森外健太(3年)の決勝ゴールによって秋田商高秋田工高に1-0で勝利。秋田商は2連覇を懸けて、22日の決勝で西目高と対戦する。

 強風によって車輪付きのベンチが試合中に動いてしまうほどの悪コンディションの中で行われた準決勝。我慢強く戦った秋田商が決勝への切符を掴んだ。秋田商は風上の前半、シュート19本を放つ猛攻。5分、この日20本ものロングスローを投じた強肩SB出口陽介(2年)のロングスローからMF山崎魁吏(3年)が決定機を迎えると、7分にもMF伊藤颯(2年)のグラウンダーのCKからMF伊藤岳歩(3年)が右足シュートを放つ。その後も速攻から大型FW加藤敬明(3年)が右足シュートを枠へ飛ばすなど攻め続けた。

 押し込んで攻めていたものの、強風の影響もあったか雑なクロスも目立って攻撃は淡白なものに。精度を欠いたクロスやセットプレーは秋田工のCB熊田慎吾(3年)やCB川口聖哉(2年)に跳ね返され、枠を捉えたシュートはことごとくGK渡辺空斗(2年)にはじき出されてしまっていた。唯一の3年生である熊田中心に奮戦する秋田工はMF伊藤大透(2年)やMF夏井秀人(2年)がボールを引き出し、そこからサイドのスペースを狙った攻撃。そしてMF石井俊輔(1年)やFW高橋佳希(2年)の仕掛けから1チャンスをものにしようとする。

 だが、俊足CB松野竜士(2年)が守備範囲広く守る秋田商は相手にシュートを打たせずに前半終了。加えて、秋田商は長期離脱を乗り越えてきた山崎が連係よく味方と絡むなど、前半半ばからはパス交換がスムーズに行くシーンが増えた。また、セカンドボールを拾ったMF東海林翔(3年)が推進力を持ってDF間に強引に割って入るなど秋田工に圧力をかけていく。だが、21分に右サイドを深くえぐったSB石川諒(3年)のラストパスはGKに阻まれ、33分にも出口の右ロングスローからCB奈良学(2年)が頭でそらして伊藤が抜け出したが、ヘディングシュートは再びGK渡辺のビッグセーブに阻まれてしまう。

 その秋田商は後半開始からMF森外を投入。だが、後半は風上に立った秋田工が勢いを持って攻め込み、夏井やMF小松遙(2年)が積極的にミドルシュートにチャレンジしていた。秋田商は15分にショートカウンターから加藤が抜け出したが、これもGK渡辺に止められてしまう。0-0で試合を進めた秋田工は19分にロングスローを武器とするSB稲垣颯(2年)を送り出し、ゴール前の混戦から1点をもぎ取ろうとする。秋田商は10番MF駒野谷海人主将(3年)が「後半風下に立った時に思った以上に相手の迫力を感じてしまって、ロングスローもあったので思うようにいかなかったです」と振り返ったように、我慢の時間帯に。それでも駒野谷が相手ボールを引っ掛け、また「今年は守備から、守備からで。ゼロだったら負けないのであとは前線の人を信じてやるだけです」という松野らDFラインが秋田工に1年生GK成田佳輝を脅かすようなシュートを打たせない。

 終盤、なかなかチャンスの数を増やせなかった秋田商だが、自慢の運動量は落ちない。小林克監督も「ウチの選手は他の学校の生徒が走れないくらい練習で走っているので、ボクは自信もって走れと。今まで走るスタイルがそうそう出てこなかった。でも、きょうは気持ちも乗って出て来たので良かった」と振り返っていたが、その自慢の走力が勝利をもたらす。36分、秋田商は左サイドから逆サイドへボールを動かすと、そこからのコンビネーションで「彼は走れる選手」(小林監督)という石川が抜け出してクロス。これを「2人で連係してクロスが上がってきた。あそこしかないと思って飛び込みました」という森外が滑り込むような体勢から右足ボレーでゴールヘ突き刺した。待ちに待ったゴールに名門の赤いユニフォームが歓喜に舞う。大応援に後押しされた秋田工もアディショナルタイムに左CKをSB菊地開陸(2年)が頭で合わせたが、ゴール右へ外れて試合終了を迎えた。
 
 秋田商の小林監督は「(最後に)走り切ったご褒美をもらったのかな」と微笑。それでも「これくらいの集中力をいつも出せというところ」と語ったように、彼らが最後まで集中力を切らさずに戦いきった試合を讃えていた。駒野谷も「1-0というのは自分たちらしくて、ゼロで守っていれば大きなチャンスが来ると言われてきたので、自分たちらしい戦いだったのかなと思います」と納得の表情。攻撃でイニシアチブを取っていた昨年とは違い、今年はまず守備から徹底してチームをつくってきた。走力のある選手が揃い、インターセプトした勢いで一気に相手ゴールへ押し寄せる攻撃は迫力がある。「今年は結構走ってきたので、走り続けることができました。学校だけじゃなくて、砂浜とか、動物園の広場とかも走ってきました」(駒野谷)という名門。昨年、荒天のために前半途中で中断、2日後に再開する異例の決勝を勝利している王者・秋田商が今回の決勝では守って、走って、42回目の選手権切符を掴む。

(取材・文 吉田太郎)
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