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[選手権予選]「初戦敗退からの逆襲」「奪還」期す名門、前橋育英が延長戦制して群馬決勝へ

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延長前半6分、前橋育英高はMF長澤昂輝が決勝ゴール

[10.30 全国高校選手権群馬県予選準決勝 前橋育英高 2-1(延長)高崎経済大附高 敷島公園サッカー・ラグビー場]

 第95回全国高校サッカー選手権群馬県予選準決勝が30日に行われ、14年度全国準優勝校の前橋育英高高崎経済大附高との一戦は延長前半6分にMF長澤昂輝(3年)が決めた決勝ゴールによって前橋育英が2-1で勝利。前橋育英は11月6日の決勝で3年連続となる全国大会出場を懸けて前橋商高と戦う。

 決勝トーナメントへ進出した16校が大会パンフレットに寄せていた選手権への抱負。そこには「『初戦敗退から逆襲』この言葉を胸に選手権は、頑張りたいと思います」と記されていた。群馬を代表する名門・前橋育英は今年、新人戦こそ優勝したものの、総体予選は常磐高との初戦(4回戦)でPK戦の末に敗れてまさかの初戦敗退。チームはそこからの逆襲、そして「奪還」という目標を掲げて選手権に臨んでいる。昨年度の全国8強メンバーであるMF大塚諒主将(3年)は「まずは県優勝して。県優勝してから次の目標は昨年の3年生を越えて、果たせなかった埼スタに行きたいですね」と力を込めた。

 その目標を実現するための県予選は、苦しい戦いの連続となっている。健大高崎高との決勝トーナメント初戦は延長戦の末に1-0勝利。続く伊勢崎商戦は2-0で制したが、この日も再び延長戦へと持ち込まれた。昨年度の全国大会で2試合連続ゴールを決めているFW馬場拓哉(3年)が腰を痛めて長期離脱中で、この日は主軸FW高沢颯(3年)も怪我で先発を外れたことで前橋育英は先発7人が2年生という若いメンバー構成。それでも大塚が「2年生もやってくれるので。そこは心配していないです」と語るように、個々の力で上回る前橋育英は序盤から相手を押し込んで攻め続けた。

 展開力秀でた大塚を中心に縦、横へとボールを動かし、左の強力SB渡邊泰基(2年)の攻撃参加や10番FW飯島陸(2年)、レフティーMF田部井涼(2年)の仕掛けなど圧倒的に攻め続けたが、1点が遠い。15分に飯島の絶妙なスルーパスからFW吾妻怜(3年)が放った左足シュートは枠外。24分にはこの日好キックを連発していたCB角田涼太朗(2年)の左アーリークロスがPAの飯島に通るが、SB川野史暉主将(3年)にブロックされた。26分にもドリブルでPAへ切れ込んだ飯島をサポートした長澤がラストパスを入れたが、MF塩澤隼人(2年)にはわずかに合わず、先制することできない。

 一方、DF陣が我慢強く守った高崎経済大附は少ないチャンスをものにしようとする。29分には中盤でのインターセプトからFW間山涼也(3年)がスルーパスを出してFW飯塚大海(3年)が左足シュート。32分にはMF猿渡壮磨(3年)がミドルシュートにチャレンジする。ヘディングで観衆を沸かせていた前橋育英CB松田陸(2年)や角田に跳ね返されるシーンも多かったが、前線で良くボールを収めていた飯塚がスピードを活かして相手の背後を突き、猿渡がロングスローを入れるなど一刺しする力があることを示していた。

 チャンスを活かしきれなかった前橋育英だが、後半開始からの出場した高沢が投入直後に結果を残す。2分、左サイドから中央へ持ち込んだ高沢が右足シュートをゴール左隅へねじ込んで1-0。ついにリードを奪った前橋育英だったが、7分に追いつかれてしまう。高崎経済大附は間山の右CKを猿渡が頭で繋ぎ、最後はゴール前のMF中嶋佳生(3年)が頭でゴールへ押し込んだ。名門からの同点劇に興奮の高崎経済大附イレブン。わずか5分間で同点に追いつかれた前橋育英は12分に投入されたFW人見大地(3年)がSB後藤田亘輝(2年)の右クロスを頭で合わせるなど勝ち越しを狙うが、山田耕介監督が「高経に行けるという雰囲気を作らせてしまった」と振り返ったように、チャンスを活かせなかったことで相手を勢いづかせてしまう。高崎経済大附は23分、10番MF相模純平(3年)のスルーパスで交代出場FW坂本海京(3年)が抜け出す。絶好の勝ち越しチャンスだったが、「ファーストタッチするなと思って、そこである程度距離詰めようと思ったのでそこがポイントだったと思います」と振り返る前橋育英GK月田啓(3年)が1対1のピンチを身体で防いで決定機阻止。前橋育英は直後に大黒柱の大塚が足首を負傷して交代するアクシデントに見舞われ、チームが不安に包まれた。この後攻撃が単調になっていたが、「自分たちの攻撃を最後まで貫き通せばいつか点は入ると思っていた」と長澤が説明したようにブレずに攻め続けていく。

 高崎経済大附は終盤、相手の波状攻撃をクリアするのが精一杯だったが、それでも勝利への執念を燃やすチームは2点目を与えず、延長戦に持ち込んだ。だが、延長戦に入って本来のパスワークを取り戻していた前橋育英は前半7分、中盤中央でボールを拾った長澤がドリブルで右前方のスペースへボールを運んでから思い切り良く右足ミドル。これが素晴らしい軌道を描いてゴール左隅へと突き刺さった。最後、押し切った前橋育英が2-1で勝利。山田監督が「僕らは逆襲です。勢い付けて本番(全国)に行けるように頑張ります」というタイガー軍団が決勝へ駒を進めた。

 夏の初戦敗退から選手たちは自分たちを見つめ直して取り組んできた。長澤は「夏の時は自分たちの形っていうのがサッカーでも、私生活でも見えていなくて、そこからコーチ、スタッフ、選手全員で話し合いをして少しずつ変わってきたと思います。今まで自分たちがちょっと後輩に任せてやっていたところを先輩が率先してやろうと細かなところから変えていったことで雰囲気も変わってきた」。総体予選後のプリンスリーグ関東では4連勝を記録するなど上位争いに食い込んでいる。私生活の部分から変えて、結果にも結びついてきているタイガー軍団。悩み、苦しい戦いを経験しながら成長してきた名門が逆襲、奪還を目指してきた選手権予選を優勝という形で終える。

(取材・文 吉田太郎)
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