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[選手権予選]目標は「王国復活」! 高い志持つ藤枝明誠が完勝で7年ぶりの全国へ前進:静岡

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前半20分、藤枝明誠高はFW藤本一輝が先制ゴール

[11.3 全国高校選手権静岡県予選決勝T1回戦 浜名高 0-4 藤枝明誠高 藤枝市民G]

 第95回全国高校サッカー選手権静岡県予選は3日、16チームによる決勝トーナメントへ突入。1回戦8試合が行われ、全国8強入りした09年度以来となる優勝を狙う藤枝明誠高が伝統校の浜名高に4-0で快勝した。藤枝明誠は5日の準々決勝で常葉学園橘高と戦う。

「王国復活」を自分たちが成し遂げる。現在、高円宮杯プリンスリーグ東海で3位につけている藤枝明誠は前半、元浦和FWの松本安司監督が「前半は100点、上げていい」と評するほぼ完璧な内容。立ち上がりこそショートパスを繋ぐ浜名が攻め込み、MF大澤知裕(3年)のスルーパスがFW守屋俊紀(3年)へ通るシーンやCKからゴールを狙うシーンがあった。だが、藤枝明誠はすぐに試合の主導権を握り返す。両ワイドが幅を取ってポジションを取り、空いた中央のスペースをゲーム主将の10番MF丹羽一陽(3年)や今夏のSBS杯でU-19日本代表からゴールを奪っているFW遠野大弥(3年)、MF山田晃平(3年)のドリブルやワンツーで一気に前進。そしてPA近くでは立ち上がりから存在感を示していたエースFW藤本一輝(3年)や、FW西澤伸(3年)が個人技を交えてシュートへ持ち込んだ。
 
 7分、11分と藤本が決定的なシュート。これは浜名守備陣が何とかブロックして凌いだが、20分には左中間から縦に仕掛けた藤本がDF2人を置き去りにして左足を振り抜く。「タッチしながら前へ行くスピードが速いと言われる」というエースの圧巻の一撃がゴールネットへグサリ。先制した藤枝明誠はその後も浜名とのボールの握り合いを完全に制して攻め続けた。

 浜名は奪ったボールを後方から繋いで攻めようとするが、中盤で藤枝明誠の鋭いプレスを受けてボールロストするシーンが多発。相手PAに近づくことができなかった。逆にDFラインからボールを左右、縦へと動かして相手の守りを広げる藤枝明誠は「前半から自分たちは相手陣地にどんどん入ってからリズム作ろうと思っていて、きょうはそれが上手く行って、立ち上がりからシュートもそうですし、チャンスもつくれていた」と振り返る丹羽らが長短のパスでシュートシーンを生み出す。藤枝明誠は33分にも「相手から嫌がられる選手になりたい。スピードあるので相手が嫌なところに入っていく」という遠野が獲得したFKを、左SB中道慶人(3年)が左足で鮮やかにゴールに沈めて2-0とした。

 藤枝明誠は、後半7分にもドリブルでPAへ切れ込んだ藤本が右足シュートをゴール左隅へ決めて3-0とする。そして23分に浜名が退場者を出したことで試合の大勢はほぼ決した。それでも浜名は諦めずにMF前野隼弥(3年)がボールを奪い、オープンスペースへ走り込むFW戸塚友斗(3年)やドリブル鋭いFW守屋がゴールを目指す。一方、藤枝明誠は松本監督が「きょうは西澤が良かった。良くやっていた」と右SB萩原槙人(3年)とともに評価していた西澤のゴールで4点目を奪ったものの、指揮官は退場者を出してからの20分間でゲームをコントロールすることも、組織で攻めることも、追加点を奪うこともできなかったチームを厳しく指摘していた。試合は4-0で快勝。だがチームは上を目指すだけに、判断やボールを大事に扱う部分を欠いた残り20分間を猛省していた。

 藤枝明誠は同校のグラウンドに「王国復活」という横断幕を掲げているという。静岡県代表は07年度に藤枝東高が準優勝しているが、選手権で優勝したのは95年度の静岡学園高が最後で00年度以降は全国ベスト4も前出の藤枝東の1回のみ。かつての“サッカー王国”は全国舞台で苦戦を強いられている。この日、周囲からの評価が高かったという浜名に公式記録のシュート数19-0で完勝した藤枝明誠はその現状を自分たちが打ち破る決意。名古屋U15出身の丹羽は「サッカー王国に来て、今なかなか静岡県から全国で活躍するチームが出てきていないので、自分たちがそれを復活させるためにこのメンバーで、何としても全国行って自分たちの名だったり、明誠のサッカーを広めていきたいです」と誓い、遠野は「最近静岡の成績は良くないので自分たちが『王国復活』を掲げて、自分たちが全国出場して、いいところまで行って名を上げらればいい。スタンドで応援してくれる仲間のためにも。ピッチで表現できるのは自分たちなんで(まずは県大会で)優勝して全国行きたいです」と力を込める。

 プリンスリーグ東海で藤枝明誠は開幕戦で前年覇者の静岡学園を破り、翌週にはJFAアカデミー福島U18に快勝するなど首位を快走し、後半戦では磐田U-18も破っている。丹羽は「自信がついている。アカデミーとか強いチームでも自分たちの主導権を握る時間が多い。そういう部分は他のチームにも見劣りしない」と口にした。藤本を中心とした攻撃力は全国でも上位と言えるもの。信念を持って取り組んでいるパススタイルのサッカー、攻撃力を静岡の厳しいトーナメント戦で発揮できるか。「やってきたことしかできない」と語る松本監督の下、自分たちのサッカーを表現することに集中して、静岡を制し、全国上位へと駆け上がる。

(取材・文 吉田太郎)
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