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インハイ8強の富山一、圧巻6発で全国再挑戦へあと一つ!! 指揮官バースデーを勝利と歌で祝福:富山

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チームの4点目を決めた富山一のエースFW小森飛絢(3年)

[11.3 高校選手権富山県準決勝 富山一高6-0富山中部高 小矢部市陸上競技場]

 第97回全国高校サッカー選手権富山県大会は3日、小矢部市陸上競技場で準決勝を行った。第1試合では、4年連続の県制覇を狙う富山一高と過去8回の全国出場を誇る富山中部高が対戦。後半のゴールラッシュで6-0の大勝をおさめた富山一が、ベスト8入りを果たした夏に続いての全国出場に王手をかけた。

「ハッピーバースデー、一朗〜♪ハッピーバースデー、一朗〜♪」。4年連続の決勝進出が決まった直後、富山一の応援席からは祝福の歌が鳴り響いた。この日は大塚一朗監督の54歳の誕生日。「僕がドーナツを買ってくるのが恒例なので、催促の『おめでとう』ですよ。しかも、呼び捨てにしやがってね(笑)」と冗談めかした指揮官だったが、大量6ゴールによる祝福には素直に頰を緩ませていた。

 試合は「前半は固さが目立った。不慣れなグラウンドもあって、試合を運べなかった」(大塚監督)との言葉どおり、ややピリッとしない立ち上がりを迎えた。コンパクトな4-4-2で激しく体を寄せてくる富山中部に対し、なかなか思うような攻撃を繰り出すことができず。インハイ得点王のFW小森飛絢(3年)にボールが入っても、なかなか次のパスが通らなかった。

 前半17分には決定的なピンチ。富山中部のFW砂子慧心(3年)の左CKにFW田原弘樹(2年)が左足ボレーで合わせると、そこから波状攻撃を繰り出された。同30分にようやく初めて決定機。だが、MF山田桂大(3年)のミドルシュートは190cmの守護神GK細岡玄に防がれ、こぼれ球に詰めたFW佐々木大翔(3年)の左足シュートも細岡のビッグセーブに阻まれた。

 それでも前半38分、決定機を逃したばかりの佐々木が試合を動かす。左サイドを駆け上がったDF真田滉大(2年)の折り返しにFW中崎拓未(3年)がニアサイドでつぶれると、逆サイドからこぼれ球に反応した佐々木が左足を一閃。今度は落ち着いてゴールに流し込み、「シュートが上手かったらもっと取れる」(大塚監督)と要求されてきた背番号8が存在価値を示す先制弾を記録した。

 1点のリードで楽になったのか、後半の富山一はゴールラッシュを披露した。まずは14分、真田の左CKは細岡にパンチングでクリアされたが、セカンドボールを拾ったMF加治駿佑(3年)がミドルシュートを叩き込んで2-0。さらに18分、左サイドを駆け上がった小森が鋭いクロスを送ると、全速力でニアに飛び込んだ佐々木がヘディングで流し込み、リードを3点に広げた。

 さらに攻勢を緩めない富山一は後半20分、中盤でパスを受けた中崎がPA右に斜めの持ち上がり、鋭い腰の回転で右足を振り抜き、ファーサイドに叩き込んで4点リード。そこから次々に選手を交代すると、同24分には途中出場MF寺尾陸(3年)を起点に真田が攻め上がりを見せ、グラウンダーでのクロスに小森が合わせて5点目が入った。

 富山一は後半29分、FW林拓真(3年)のミドルシュートは細岡の攻守に阻まれたが、直後の同30分にはゴール前での分厚い波状攻撃から林が流し込んで6点リード。対する富山中部は終盤、空中戦に強いDF六渡凱(3年)と細岡を前線に上げ、1点をもぎ取ろうとしたが、同アディショナルタイムの細岡のヘッドはGK近藤昭宏(3年)がセーブ。最後まで守り切った富山一が大差での完封勝利で決勝へと歩みを進めた。

 今大会はここまで4試合で44得点0失点。「リスクをかけないように相手陣地でボールを奪って攻めるイメージ」(大塚監督)という効率的なスタイルが圧倒的な戦績につながっている。全ては再び全国の舞台に立つため。「ノックアウト一発勝負なので、慎重にセーフティーに、失点確率をなるべく上げないようにプレーする。それをやり切ったつもり」と一定の手応えを得ているようだ。

 54歳の指揮官は世代継承にも取り組んでおり、この日の序盤はコーチ陣に指揮を任せていた。「なるべく出ないようにと思ってやっているけど、我慢できなくて前に出てしまって」と終盤はテクニカルエリアに張り付いていたが、「それじゃみんな成長できないからね」と苦笑い。「決勝は黙って見られるように、そして子どもたちの力になれるようサポートできれば」と落ち着いた表情で“頂上決戦”を見据えた。

(取材・文 竹内達也)
●【特設】高校選手権2018

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