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[MOM3293]明徳義塾GK禿蒼生(3年)_“折れない”守護神、最少失点で勝利に貢献

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明徳義塾GK禿蒼生(3年)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[11.8 選手権高知県予選決勝 高知西高 1-3明徳義塾高 春野陸上競技場]

 4年ぶり8回目の選手権出場を掴んだ明徳義塾高の立役者になったのは、GK禿蒼生(3年)だ。俊敏性を活かしたシュートセーブが持ち味の守護神だが、この日は鋭いサイド攻撃や、背後への飛び出しを何度も拾う。小松晃監督が「失点しても折れなかった禿の貢献は大きい。前向きにチャレンジして、ギリギリな所でも飛び出して行ったりしてくれたのが大きい」と称える働きでチームを勝利に導いた。

 指揮官が称える折れない心は、試合の随所で感じられた。39分に許したFKからの失点も、見事なコースを突いたキッカーのMF岡本青龍(3年)を称えるべきで、禿は責められるものではない。しかし、責任感が強い禿は「前半を無失点で終わらせたいという気持ちがあったし、悔しい気持ちもあったので自分自身にイライラした」。チームも直後は沈んだ様子が見られたが、ハーフタイムに主将のMF松下総龍(3年)を中心に気持ちを切り替えた。前線が「悔いなく戦うために、前からプレスを仕掛けた」のに対し、守備陣は「自分たちのチームは絶対に1点は獲れると思っていたので、これ以上失点しないと決めた」。

 押し込み気味で試合を進めた後半に、注意すべきだったのはカウンターへの対応だ。自らの飛び出し以上に大事なのは、周りを活かしてシュートまで持ち込ませない守備対応で、禿は「キーパーは体力を使わないし、周りが一番見える立場なので周りに声をかけて集中を切らさないよう意識した」。3ゴールで逆転勝ちに持ち込んだ攻撃陣に目が行きがちだが、後ろでのリスクマネジメントを徹底し、最少失点に留めた彼の存在は大きかった。

 この日は、飛び出しと共に声が印象に残った禿だが、昨年まではコーチングが得意ではなかった。スタメンで試合に出始めた2年生の頃までは、「ボールを獲れたら良いじゃんという感じだった」と振り返る。しかし、高知中央との準決勝に挑んだ昨年の選手権予選では、コーチング不足から生まれたミスで失点し、0-1で敗戦。「チームの重要性に気付けた。サッカーは全員で守って、全員で攻撃するものなんだって。これ以上負けたくないので、もっと成長して安定したキーパーを目指そうと思えた」。

 今年に入ってからは頼れる守護神を目指したが、9月にアクシデントに見舞われた。県1部リーグの初戦で右足の甲を負傷し、選手権予選への出場が危ぶまれたが、懸命にリハビリに励み、準決勝の直前に復帰した。復帰初戦は、昨年の悔しい経験が頭を過ぎる準決勝で、「昨年は忘れ物をしたので、忘れ物を取りに帰る気持ちで挑んだ」。1失点したものの、集中力を保った守りで勝利に貢献した禿は、「緊張はあったけど、みんなが声掛けをしてくれたので、思い切ってプレーできた。予選に間に合わないかもという焦りもあったけど、勝ち進んでくれたり、チームメートに助けてもらった」と口にする。

 念願の全国大会でも、彼の活躍が勝敗に直結する。予選で毎試合、複数得点を奪った攻撃陣と共に、「恥をかかないキーパー、チームを勝たせられるキーパーになりたい」と意気込む禿が持ち味を発揮できれば、自ずと結果がついてくるはずだ。

(取材・文 森田将義)
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