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青森山田で過ごした6年間の集大成へ。“3度目の正直”を狙う絶対的キャプテンは「今日もいつもの松木玖生」

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MF松木玖生は負傷欠場のDF大戸太陽のユニフォームを見せながら“2番”をアピール!

[11.7 選手権青森県予選決勝 青森山田高 5-1 八戸学院野辺地西高 カクヒログループアスレチックスタジアム]

 スタンドの子供たちから掛けられた「松木選手~」という声に、手を振って応える。ボールボーイたちから写真撮影を求められても、笑顔でフレームに収まる。そこに『松木玖生だから』というような気負いや奢りは微塵も感じられない。

「3年生の選手権ということで、自分としても最後の大会になるので、そこは笑って終われるようにしたいですし、練習でやっていることがすべてだと思うので、そこを試合で出せるようにやっていきたいと思います」。

 青森山田高のキャプテンにして、高校年代きっての注目選手。MF松木玖生(3年=青森山田中出身)は、この日も最初から最後まで、いつも通りの松木玖生だった。

 青森県のチームと戦う最後の公式戦は、失点から始まった。前半13分。ショートコーナーから完璧に陣形を崩され、八戸学院野辺地西に鮮やかなゴールを献上。苦戦の末に何とか延長で勝利を収め、日本一に輝いたこの夏のインターハイ決勝と同じような展開を強いられてしまう。

 ただ、焦らない。「予想外のショートコーナーをしてきたので、そこはもうちょっとうまく対処できたかなと思います。たぶん今年に入って初めてセットプレーでやられたので、そこはもっともっと改善していかないといけないですけど、たとえ点数を入れられても、自分たちらしいサッカーをすれば勝てるということはみんなが思っていたことなので、焦らなかったですね」と話す松木を中心に、常勝軍団に焦りの色は見られない。

 わずか2分で追い付くと、前半のうちに逆転。そして後半9分には、積み重ねてきたコンビネーションをピッチ上で表現してみせる。MF田澤夢積(3年)のパスをFW名須川真光(3年)がきっちり落とし、MF藤森颯太(3年)は綺麗なスルーパス。抜け出したMF小原由敬(3年)が飛び出したGKの鼻先で右へ送ったボールを、松木が無人のゴールへ流し込む。

「あの流れは練習でも作っている流れだったので、そこは上手く練習通りにできたと思いますし、全員が関わってのゴールだったので、そこは評価できるかなと思います」。複数人が絡みながら、流れるようなパスワークで陥れたゴールを挙げると、スコアラーの松木は、報道陣のカメラに向かって、自らのユニフォームをめくり、下に着込んでいた“2番”のユニフォームを披露する。本来の“2番”の持ち主はDF大戸太陽(3年)。不動の右サイドバックとして代えの利かない存在だった大戸は、3日前のトレーニングで膝を負傷して長期離脱が決定。この日のピッチに立つことが叶わなかった。

「太陽自身もこの時期のケガで凄く難しい部分はあっても、落ち込むことなく自分たちのためにいろいろ準備してくれたり、良い声掛けをしてくれたので、自分だけではなくて、他の選手もかなり痛いと思っているところではありますけど、太陽のためにも今後の試合も全部勝っていきたいと思います」と松木。大戸の悔しさは、一緒に戦ってきた選手たちが一番よく分かっている。「太陽のために日本一を」。絶対に叶えたい目標が加わり、チームはさらなる絆を深めている。

 結果、見事に青森25連覇を達成。「先輩たちが築いてくれた連勝を止める訳にはいかないと思っていましたし、そこは25連覇だからこそとかじゃなくて、まずは自分たちの代で優勝したいという想いがありました」(松木)。まず、全国への出場権は獲得した。過去2年はともに準優勝。頂点への想いが小さいはずはない。

 以前、松木が語っていた言葉を思い出す。「選手権は中学1年生の時から凄く憧れていた場でもありますし、それもしっかり経験した集大成として、恩返しということで、今まで関わってきてくれた人たちに対して、自分のプレーで優勝という形で終われたらなと思います」。

 中学時代から考えれば、青森山田で過ごした6年間の集大成。“3度目の正直”を狙う松木の頭の中には、新・国立競技場で最高の仲間たちと優勝カップを掲げる姿が、もう十分にイメージできているはずだ。

(取材・文 土屋雅史)

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