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[MOM4160]前橋育英FW高足善(3年)_大事なゴールはこの10番が奪う。苦悩のストライカーが挙げたチームを救う貴重な同点弾

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前橋育英高の10番を託されたストライカー、FW高足善

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ supported by sfida]
[12.29 全国高校選手権1回戦 前橋育英高 2-1 日章学園高 NACK5スタジアム大宮]

 大事なゴールを決められる才能は特別だ。誰もが持ち合わせているものではないが、不思議と備わっている人には備わっている。この10番には、きっとそれがサッカーの神様から与えられているのだろう。

「前の自分だったらあそこから打つことは絶対になかったと思うんですけど、この大会に懸ける想いは強かったので、前半からずっと外していましたし、自分が決めるしかないと思って、足を振りました」。

 苦しむタイガー軍団を救う、執念の同点弾を叩き込んだストライカー。前橋育英高(群馬)が誇るナンバー10。FW高足善(3年=FC杉野ジュニアユース出身)はいつだってゴールで自分の価値を証明し続ける。

 今シーズンは決して順風満帆な1年を送ってきたわけではない。プレミアリーグでは開幕5試合で4ゴールとハイペースで得点を重ねたものの、以降は1点も奪うことができず、後半戦はスタメンを外れることもあった。インターハイも日本一を決めるファイナルでの決勝弾が印象深いが、大会を通した得点はその1点だけ。選手権予選も決勝で挙げたPKの1点にとどまっており、本人も「自分でも良い形を見失っていたところはあります」と正直な想いを明かしている。

 だが、高校生活最後の大会となる選手権への覚悟は、一味違ったようだ。キャプテンを務めるMF徳永涼(3年)がこの日の試合前のある一幕を教えてくれた。「今日は試合前の最後の円陣の時に、善が『オレにボールをくれれば絶対に決めるので、守備をよろしく』みたいに言っていたので、『ここはもう善に任せよう』と僕は思いましたし、みんなも任せようと感じていたと思います」。

 気持ちは入っていた。前線からハイプレスを掛け続け、スライディングで相手のフィードをカットしたシーンも一度や二度ではない。ただ、前半5分に掴み掛けた決定的なチャンスはフィニッシュまで持ち込めず、1点をリードされた後半14分にもMF青柳龍次郎(3年)のパスから決定機を迎えるも、シュートは枠の上へ。放ち続ける気合も得点には繋がらない。

 ストライカーの価値は一瞬で証明される。19分。徳永が縦パスを打ち込むと、高足は即座にゴールまでの道筋を察知する。MF小池直矢(3年)のフリックを足元で受け、ゴールを見据えると、すぐに腹は決まった。

「3年間自分はシュート練習ばかりやってきた中で、ああいう無理な体勢から打つというシュート練習はなかなかやってこなかったんですけど、あの場面は『自分が点を決めないとチームが勝てないな』と思ったので、本当に思い切って振りました。あの角度だったらニアサイドしかなくて、たぶんファーを狙ったらディフェンスに足を出されて、弾かれていたと思うので、ニアしか見えなかったです」。躊躇なく右足を振り抜くと、軌道はイメージ通りにニアサイドのゴールネットへ鋭く突き刺さる。

「アイツが自主練で残ってシュート練習をしていたり、悩みながらも真摯にサッカーに取り組んでいる姿勢を僕らは知っていますし、そこは信頼があるので、最後は善に託そうという想いでパスを供給しました」。徳永の言葉が印象深い。チームメイトの信頼に、結果で応えた魂の同点弾。これで勢いを得た前橋育英は、終盤の37分に途中出場のMF山田皓生(3年)が決勝ゴールをマークし、何とか逆転勝利を収める。まさに有言実行のストライカーが、苦しむ夏の全国王者を窮地から鮮やかに救ってみせた。

 背負った10番には、自分と“先輩”の姿を重ね合わせている。前橋育英が初めて選手権で日本一を勝ち獲った世代のエース、FW飯島陸(甲府)のプレー映像はこの高校に入学してから、とにかく見続けてきた。

「自分はもともと飯島陸選手に憧れて育英に入ってきましたし、飯島選手が10番を付けてたくさん点を獲ってきたところを見てきたので、ずっと『自分もああなれたらいいな』と思ってきたんです」。

 今から5大会前の96回大会(17年度)。10番の“先輩”は7ゴールを挙げて、選手権初制覇に大きく貢献するとともに、大会得点王にも輝いている。夏冬二冠を目指すタイガー軍団がここから勝ち上がっていくためには、今年の10番の爆発が必要不可欠であることは言うまでもないだろう。

 スタメンを外れていた頃、高足が語っていた言葉を思い出す。「悔しい想いはメチャメチャありますね。出られなかった試合の後は本当に悔しくて、ずっと1人でボールを蹴っていましたし、そういうところにぶつけるしかなかったので」。

 人知れず重ねた努力は、きっと裏切らない。前橋育英の10番は、いつだってゴールで自分の価値を証明し続ける。

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(取材・文 土屋雅史)


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