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今年はキッカーも回った高川学園“トルメンタ”…会場騒然の奇策が不発に終わった理由「バレたなと」

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“キッカートルメンタ”後の高川学園高FW山本吟侍(2年)のシュートは不発に

[1.2 選手権3回戦 高川学園高 0-2 東山高 柏の葉]

 0-2で迎えた後半21分、高川学園高はゴール左斜め前でFKを獲得すると、キッカーの位置についた3選手が手をつないで輪になった。前回大会で大きな話題を呼んだ妙技「トルメンタ」だ。通常バージョンではセットプレーの受け手側がゴール前で輪になり、その場でクルクルと回る。それが今大会では、キッカー側が回るという奇策を準備していた。

 しかし、このトリックは失敗に終わった。手をつないで回っていたDF藤井蒼斗(2年)、DF中島颯太(3年)が蹴るふりをしながらボールを通過した後、3人目でモーションに入ったFW山本吟侍(2年)のシュートは力が入りすぎて枠外へ。ビハインドを取り戻す起死回生の一手となるはずだったセットプレーは、チャンスからはほど遠い形でふいになった。

 策に溺れたかのようにも思われる結末。しかし実は、そもそも予定どおりのトリックを繰り出せなかったのだという。

 “キッカートルメンタ”を思いついたのは、試合がなかった元日のチーム練習。当初は山本がシュートフェイントを仕掛け、そのタイミングで中島が壁の外を走り、藤井がそこにパスを出して相手をあざむくという流れだった。普段と同様にアイデアを出しながら、「その場の雰囲気でやってみたらうまくいった」と手応えを持って準備していた。

 ところが試合ではこれが「相手に読まれていた」。山本によると、狙いに気付いたのはC大阪内定の東山高MF阪田澪哉(3年)。あえて空けていたスペースを見切られたか、本来走るはずだった左側のスペースを指差し、味方にケアするよう指示していたのだという。

「バレたなと思った」(山本)

 アイデア豊富な高川学園側もその場でトリック変更を決断。相手の読みを逆手に取る形で、あえて藤井と中島を先に走らせ、壁が左に動いたところを山本がシュートで撃ち抜くという狙いを即興で繰り出した。しかし、このシュートが枠外へ。表には出ない駆け引きがあった結果、チャンスにつながらなかったという顛末だった。

「いきなり打つことになってあんな感じになってしまった」。自身のシュートをそう悔やんだ山本は「味方同士でセットプレーを練習することにはなるけど、もっと味方同士で分析しながら練習からやっていかなければならない」と課題を認識。勝負のラストイヤーへ「1年生から選手権に関わらせてもらって、責任がかかってくる。高川の伝統にも関わってくるので責任を持って頑張りたい」と力を込めた。

(取材・文 竹内達也)
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