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神村学園MF大迫塁「日本サッカーを引っ張っていかないといけない2人だと思う」福田師王との共演は新たな舞台で

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神村学園高MF大迫塁(3年=写真協力『高校サッカー年鑑』)

[1.7 全国高校選手権準決勝 神村学園高 3-3(PK1-4)岡山学芸館高 国立]

 神村学園高MF大迫塁(3年=神村学園中、C大阪内定)の高校サッカー生活は、すがすがしい表情で幕を閉じた。「このピッチでプレーするのが自分の夢だったので、ここでプレーできたことが楽しい時間でした」。国立競技場での準決勝敗戦後、取材エリアに姿を見せた背番号14は何度も「楽しかったです」と口にしていた。

 夏のインターハイは2回戦で履正社高に敗れ、涙ながらに「こんな思いは絶対にしたくない」と決意を語っていた大迫。「最後、絶対に勝ちます」と臨んだ最後の選手権も、悲願の日本一には手が届かなかった。それでも神村学園を16年ぶりのベスト4に導いたキャプテンの表情はどこか晴れやかだった。

「キツかった時のほうが多かったし、結果としても思い描いたようにはいかなかったけど、この代でプレミアに上げられて、国立にも16年ぶりに戻ってこられて、神村学園を全国でも強いチームにできたので誇りに思っている」

 中学時代から6年間を過ごしてきた神村学園。その場に関わった人々への感謝を込めて「最高の仲間と出会えたし、最高の先生方と出会えたし、周りにいた人が素晴らしい人ばかり。ここでできた6年間はすごく楽しかった」と笑顔で語った。

 昨年2月にセレッソ大阪加入が内定して以降、ひときわ大きな注目を浴びて臨んだラストイヤー。今回の選手権では厳しいマークに苦しんだプロ内定選手も多かった中、大迫が見せた存在感は絶大だった。

 大会初戦の山梨学院高戦(◯3-2)で2得点に絡み、さっそく全国にその存在感をアピールすると、準々決勝の青森山田高戦(◯2-1)では精密なロングフィードで同点ゴールを演出。直後にはスタンドを派手に煽って一気に会場のムードを持っていき、電光石火の勝ち越しゴールに陰で貢献した。

 また夢の国立で行われた準決勝・岡山学芸館高戦では結果に直結する働きも披露した。まずは1-1で迎えた後半14分、ゴール右斜め前からのFKで左足を一閃。「あそこは決めれる気しかしなかった」。鋭く蹴ったボールは相手の壁をかすめてゴールに吸い込まれ、鮮やかな勝ち越しゴールとなった。

 さらに同点に追いつかれた後半24分、今度は右コーナーキックをDF中江小次郎(3年)にピンポイントで合わせ、またしても勝ち越しゴールを演出。直後に再び追いつかれ、勝負はPK戦に持ち込まれたが、大迫は3回戦の日大藤沢高戦(◯1-1、PK5-3)に続き、緊張の1人目キッカーで見事なシュートを沈めた。

 最後は後続キッカーが相手GKの好手に阻まれ、史上初の決勝進出とはならなかった。それでも大迫は「楽しかった。1試合1試合強くなっている実感もあったし、1試合1試合濃い試合で、見ている人もすごい楽しくて感動するゲームだったと思う。高校サッカーらしい戦いができた」と話し、4試合連続の0-1ビハインドから激闘を続けてきたことに胸を張った。

 敗戦と同時に、中学時代から6年間を共にしてきたエースFW福田師王(3年=神村学園中/ボルシアMG内定)との日々も終わりを迎えた。大迫は「スルーパスを出した場面はちょっと決めてほしかった」と冗談めかしつつも、「本当にチームを引っ張ってきた二人。2人とも苦しい時期もあったし、楽しい時期もあったし、二人で乗り越えてきた6年間だった」と感慨深そうに振り返った。

 何よりここで福田とのサッカー人生が終わったわけではない。福田はブンデスリーガ、大迫はJリーグへと活躍の場を移すが、日本代表に入れば今後も同じチームでプレーするチャンスがある。大迫は「この2人は日本サッカーを引っ張っていかないといけない2人だと思うので、自信を持ってやっていきたい」と決意を語った。

 そんな二人が神村学園に残した日本一の夢は、後輩たちに受け継がれる。今季はプレミアリーグプレーオフを初めて制し、来季は高円宮杯プレミアリーグWEST参入。大迫は試合後、後輩たちに勝負の厳しさを伝えたという。その一方、大きなプレッシャーに襲われることもあるであろう選手たちへの配慮も欠かさず、期待を語った。

「自分たちはもう終わりだけど、彼らには神村での高校サッカーの未来がある。この試合をしょうがない、惜しかったねって思ってもらっちゃダメ。この結果で彼らが学んだことはすごく多くあると思うので、今回は負けてしまったけど、彼らが勝ってくれれば全然問題ない。そのためのゲームだと思ってもらえればそれでいい」

「今年注目されて彼ら自身、来年緊張することもあるかもしれないけど、すごくいい選手もいるし、チームとして完成度もある。(Bチームも)県リーグで城西相手にしっかり粘り強く最後までやってくれていた。プレミアという舞台で成長して選手権に帰ってきてくれると思うので、あまり重圧をかけすぎず楽しんで高校サッカーをやってもらえればと思う」

 そして自身は次なるステージで活躍を見せ、後輩たちに背中で自身の生き様を示していくつもりだ。「また見つめ直して次の舞台につなげるチャンス。自分には時間がない。あと1か月後にJリーグが開幕して、そこに入っていく気持ちでしかない。そこに向けてやるしかない」。目指すはJリーグのピッチ。「C大阪というクラブに行って、C大阪といえば大迫塁だよねという選手になりたい」と力強く覚悟を示した。

(取材・文 竹内達也)
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