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格上との対戦で得た“プラス”…「サッカーと本気で向き合う」刈谷、20回目の選手権出場に王手:愛知

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2点目を決めた刈谷高FW望月陽登(3年=14番)がスタンドの応援団と喜びを分かち合う

[11.4 選手権愛知県予選準決勝 刈谷高 2-0 岡崎城西高 CSアセット港サッカー場]

 第102回全国高校サッカー選手権愛知県予選準決勝が4日に行なわれた。刈谷高岡崎城西高の一戦は、前後半に1点ずつ奪った刈谷が2-0で勝利。11日の決勝では名古屋高と対戦する。

 トレードマークは、赤だすきのユニフォーム。二度の選手権準優勝を誇る伝統校の刈谷が四半世紀ぶり20回目の選手権出場に王手をかけた。「うちは攻撃より守備のチーム。良い守備から入っていこうと考えていた」と話すのは平松智宏監督。序盤は失点のリスクを避けるため互いに長いボールを多用し、落ち着かない展開が続いたが、岡崎城西のスタイルを見極め、奪いどころを定めていく。

 時間の経過と共に刈谷が前向きで奪う場面が増えると、相手エリアではFW野崎壮馬(3年)とFW望月陽登(3年)の2トップを起点にチャンスを伺う。前半13分には深い位置でのボール回しから、DF岡島陽(2年)が左前方にロングフィードを配球。野崎が持ち前のスピードを生かして背後を抜け出し、ゴール前に速いボールを入れたが、望月のシュートは相手DFに阻まれた。直後の15分にはロングボールを跳ね返された所を野崎が回収。高い位置でのタメから、MF三宅快生(3年)の追い越しを誘ったが、クロスは上げられない。

 岡崎城西のゴール前に迫りながら決定機には至らない場面が続いたが、27分にはDF原田賢吾(3年)が自陣から前線にロングボールを配球する。相手CBの間で受けた望月が上手くおさめるとPA左に流れた三宅にパス。三宅が切り返しから冷静にゴール右隅に決めて刈谷が1点リードで前半を終えた。

 後半5分には三宅のスルーパスから、望月がゴールネットを揺らしたが順調すぎる試合展開がその後の戦いを難しくする。平松監督はこう話す。「プリンスリーグ東海を戦っていると、今日みたいにリードする展開があまりない。2点リードで後半を迎える経験がこのチームにはなさ過ぎた。相手をよく見ればボールを運べる所でも簡単に裏へと出してロストしていた」。

 思い切って前に行けなくなった結果、押し込まれる時間が増えたが、今年は1年間格上とのゲームを続けてきた影響は大きい。「今日のように押し込まれるのは、プリンスリーグでよくある試合展開。先制できても、あまり自分たちでボールが持てない試合は多い。その度に我慢強く守備してきた」(岡島)。

 耐えきれずに打たれても最後尾には「このチームで一番能力が高い。走らせても速いし、ジャンプも高い」(平松監督)GK山下貴也(3年)がそびえている。「今日は県1部のチームが相手だったので、絶対にピンチが来ると思っていた。集中力を切らさないよう意識した」。そう振り返る守護神は右CKが岡崎城西MF片岡楓将(3年)に当たってゴールに向かった27分のシーンも好セーブ。試合終了間際に右CKから打たれたDF倉橋賢太(3年)のヘディングシュートも防ぎ、刈谷が2-0で勝利した。

 プリンスリーグの経験によるプラスの効果はプレーだけに留まらない。平松監督が挙げるのはメンタル面での変化だ。「サッカーに対して本気で向き合うようになってきた。全力で本気でプレーするというのを、プリンスリーグを経験して他県の選手に学ばせて貰った。戦術も大事ですが、結局は取られそうなボールを取られない必死さや、取れなくても追いかけるといった“勝つんだ”という本気さが大事」。

 選手たちが「凄かった」と声を揃える昨年の主力が卒業し、1からのチーム作りを余儀なくされた今年の新人戦は初戦敗退。インターハイも県の準々決勝で姿を消したが、今大会はこれまでの彼らとは違う。本気でサッカーと向き合い、勝利を目指した結果がファイナル行きに繋がった。チームが立ち上がった時から、平松監督は選手に「国立をかけた試合がしたい」と言い続けてきた。目標に近付くために次は重要なカギを握る一戦。スタートラインに立つためにも白星を狙う。

(取材・文 森田将義)
●第102回全国高校サッカー選手権特集
森田将義
Text by 森田将義

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